第79話 なるほどな ならばたんと食うぞ!
「俺、死んじゃうのかよ!」
「無理をすればだ」
「なんだ、わかった。俺、無理しないぞ!」
また若くして死にたくないからな。
「うむ。我も気にかけておく。お主が死ねば、我ももろともだからな」
そうか。俺はスヴァの命もあずかってるのか。これは心せねば。
「そんなに気負う事もないぞ。気にかけて置いては欲しいがな。もっと食べて運動して身体がしっかりし、体力をつければ、少しの魔法なら使えるだろう」
「マジで!? やった!」
やっぱ。魔法って使ってみたいよな。亜空間以外で。
「幸いなのは、亜空間は気にせず使えるってことだな」
「それは、元々我の能力の1つであるからかもしれぬな。我とお主は繋がっているゆえ」
「繋がってるか。なら、スヴァと私ってエネルギーも共有してんのかな」
「‥‥‥ありうるな。お主にしてはひらめいたな」
「だろ?!」
んん? なんか馬鹿にされた? まいっか。
「じゃもっとじゃんじゃん食べて、動かないとな。それと常に食べ物を持っとかないとか。倒れる前に食べれるように」
「そうだな。我も意識して大目にとろう」
「おお。そうだ。でも考えようによってはいいことじゃないか? 太るの気にせずに食べられるんだからさ」
「お主は本当ポジティブでよいな」
「へへ」
んん。なんかニュアンスが違っているような。
「とにかくも意識して、多めに食事をとることだ」
「ご飯を沢山食べられるのはいいけど、金が続かなかったら、行き倒れるのは困るな」
「それは大小有れど、皆同じだろう」
「そっか、そうだな! そうならないよう、バリバリ働けばいいか!」
「もう一つ方法があるぞ」
スヴァが沈んだ声で告げる。
「あ?」
「我が其方の中へ還れば、安定する」
「それってどういうことだよ」
「我という自我を捨てて、お主の中に溶け込み、1つの魂になるという事だだ」
「それって、お前がいなくなるってことか?」
「そうなる」
「ならば、却下だ」
「即答か?」
「当たり前だろ? お前と俺とは別だぞ。俺が楽する為に、お前がいなくなるなんてだめに決まってんだろ」
「しかし、そうすれば、倒れる事も少なくなるぞ」
「ばっか。そんなんは気を付けてればいいだよ。お前がな」
「私がか!?」
「私がそんなセーブできる筈ないだろ?」
もちろん、自分でも気を付けるつもりだ。
「確かに。ならば、なおの事、我がお主の魂に融合したほうがよいだろう」
「ばっか。そんな事するくらいなら、7年前に、お前の魂を助けてねえだろーが!」
「!」
「あの時、お前は討たれて、深遠の河に取り込まれると諦めていた。流れに取り込まれることはつまりは自我の消滅だったよな」
「ああ」
「それを俺がやだったから、2人で、輪廻にのる為に、一か八かで俺たちの身体と魂の半分を犠牲にしたんだろうが。それなのに、ここでお前を犠牲にするって選択肢を俺がとると思ってんのか? ああ?!」
なんか、言ってて、腹立ってきたわ。
「要は、俺がエネルギーを多く補給し続けていればいいってことだろ! まかせろ! 食べるのは大好きだ! お前もな、変な事考えてる暇があったら、金を稼ぐのに力をかせ!」
スヴァは勢いをつけて立ち上がったティティをしばし、見つめてぽつりと零した。
「お主はそういう奴だったな」
「改めてわかったか!」
「ああ、承知した」
「じゃ、俺たちの目標は変わらないな」
「目標なんてあったか?」
「あるだろう! 旨いものを沢山、食って、楽しんで、長生きするだ!」
「随分と大雑把な目標だな」
「なんだと! 人生単純でいいんだよ」
「お主を見てるとそう思えるな」
「お前が、難しく考えすぎなんだよ」
「そうか」
「あーあ。難しい話したら、小腹がすいたな。串焼き食べるかな。スヴァも一本どうだ?」
椅子に座りながら、亜空間から串焼きを取り出す。
「もらおう」
「あ、今の話で思ったけどさ、俺だけじゃなくて、お前も飯を一杯食べなきゃならんよな」
「我は魔法を使わぬゆえ、お主よりはましだ」
「だけど、魂半分っつーのは、一緒だろ。いいか、約束だぞ。腹が減ったら、すぐに言え! 変な遠慮すんなよ。ひもじいのはしんどいからな」
「わかった」
「ん! じゃあ、食え食え!」
そう言いつつ、ティティは串焼きを頬張った。
「うめえ!」
全く元魔王様はたまに後ろ向きになるからな気を付けないとな。
まだ人生始まったばかりなんだからよ!
PVが14000超えました!
皆さま、本当にありがとうございます!
がんばります~!




