第78話 食後には重いっす
「ティティ、先程話そうとしていたことを話しても構わないか?」
「ああ、うん」
スヴァの椀も空になっている。
もしかして、ティティが食べ終わるのを待っていてくれたのか。律義だ。
きっちり前置きをしてくるところを見ると、重要な話なのか?
ティティは気持ち身体をスヴァの方に向けて、背筋を伸ばした。
「お主にはあまり魔法や魔力の話をしていなかったので、これから少しずつ話していくことにする」
「お、ありがたいね」
「とはいっても、魔族と人間とではおそらく使い方など違いが相当あると思う。だから、我はお主を観察しながら、後は過去の経験からわかった事、わかっている事をつど伝えて行こうと思う。それでいいか?」
「ああ、そっか。そうだよな。人間と魔族って違うもんな」
魔力を扱う人間はまれであり、魔族は基本魔素を取り込む様に出来ている。
これだけでも随分違う。
「魔族は呼吸と同じように魔素を体内に取り込み、魔力を練り、自らの滅びを引き延ばす為、魔力を放出する。その為、魔素を取り込みすぎると不調になるが、基本体力はあまり消耗しない。むしろ体外に放出すれば、不調が回復する」
「はあ、そうなんだあ」
「うむ。人間はおそらく元々は、魔素を体内に取り込み、魔力を練り、魔法を使うようには出来ていなかったと推測する。それがいつしか魔族と同じように魔素を取り込み、魔力を練り、魔法を使える人間が現れた」
「ほえ~。そうなのか」
「おそらくだ。だからなのか、魔素を取り込み、魔力を練る。それだけでも、魔族とは違って、体力を消耗するのではないかと思う。昨日今日、魔力を使ってみて、思わなかったか? いつもより腹が減ると」
「思った! 思ったよ! 風呂の中でもお腹がなったもんよ」
「走ったり、仕事をしたりしてエネルギーを消費して、腹が減ると同じことだ」
「そっか。なるほどな」
「ただ、日常の行動よりも消耗は激しいだろう。それにお主の場合、かなりな頻度で気を失ったりする可能性がある」
「ええっ! マジか。なんで?」
「理由は、魔法はある種エネルギーの放出でもあるからが1つ」
「慣れてくれば、大丈夫なんじゃないか?」
「多少は改善するだろう。だが、2つ目の理由が大きい」
「それってなに?」
「お主の魂がかけているからだ」
「は?」
「今日まで観察してきての我の推測だ。ティティが、このティティとはお主ではないぞ、今は魂の底に眠ってしまった本来のティティが表面に出ていた時、我の魂の半分とティティ、ここではややこしいので、ジオルの魂半分が1つに融合していた為に、普通の食事量、あるいは少し少なくてもティティは普通に暮らせていた。だが、ティティの意識が底に沈み、我とジオルの意識が表面化した時に、元々の魂に分離してしまった。半分ずつの魂にな。それがいかに不安定な状態かわかるであろう」
「そういわれると不安定かもな。私たちの魂の半分ってどこに行ったんだ?」
「おそらく、我らの肉体とともに、大いなる意思の流れに取り込まれたであろうな」
「あ、やっぱり?」
「半分ずつでも魂が転現できただけでも奇跡なのだ。我ら2人すべて取り込まれても不思議ではなかったのだからな」
「ふああ。そっか。ラッキーだったんだなあ」
「‥‥‥お主は本当に」
スヴァは頭痛がするのか前足を頭に当てた。
「それについてはおいておく。話を進めるぞ。普通半分だけになったら、もっと弱くなってしかるべきだが、腹の減りは早いが、普通に生活ができる。それは我の魂の質量は高く、お主の魂も質もいいからだろう。だからどうにか生活できる。それでも魂としては弱くなってしまっている。だから、それを補う為に、外部からエネルギーを取り込むことが必要になっているのだと思う。普通の人間以上にな」
「だから、俺、いつもすげえ腹が減ってるのか?」
「そうだ。子供だからというのもあるだろう。成長にも栄養が必要だからな」
なるほど。そうだったのか。ティティの体質だとばかり思ってたが、納得である。
でも考えてみれば、こんな腹減らしだったら、もっと前に親に捨てられてたかもしれないよな。 役立たずの大飯ぐらいだと、あの親だったらすぱっと切っていただろう。
「そのような状態で魔法を使えば、魔力を放出する以上にエネルギーが必要なる。昨日今日の様子をずっと見ていたが、ぎりぎりだ。この上で、魔法を使えば」
「倒れるであろうな。下手をすれば、死ぬ」
ええええええ! 俺また死んじゃうのか!?
元魔王様は研究者タイプかもしれません。




