第74話 バンブールの蒸しご飯っ
「あら、いっらしゃい、デルコ」
「おう。バンブールの皿の使い勝手はどうだ?」
デルコに連れて行かれたのは、屋台がたくさん軒を並べるいつもの下町広場である。
その中で、色々なおむすびを扱っている店だった。
「あ、この店だったんだ」
ティティも結構お世話になってる屋台であった。
シンプルなおむすびがとても、美味しい。
米の炊き方が上手いのだろう。
「おや、このところ、良く買ってくれてる嬢ちゃんじゃないか?」
「初めまして、ティティルナです。ティティって呼んでください」
「こりゃ、どうもご丁寧に! 俺はニコってんだ。こっちはタリアだ」
「こっちってなんだい! 失礼しちゃうね。タリアだよ、よろしくね」
気のいいおじさんおばさんと言った感じの2人だ。
「自己紹介はすんだようだな。で、このティが、今回バンブールの皿のアイデアを出したんだ。んで、その成果を見に来たってわけだ」
デルコの説明に慌てて、弁解する。
なんか上から目線すぎる。
「いえ、バンブールで蒸したご飯て、美味しそうだったから、ぜひ食べてみたくて、デルおじにつれてきてもらったんです」
「おや、この子がねえ!」
「がはは! こんな小さい子が、すっげえアイデアを出したもんだなあ! こっちは大助かりだ」
よかった、2人とも、怒ってないみたいだ。
「んで、どうなんだ?」
「昨日も言った通り、いい感じだよ。まあ、まずは食べてみてくれ!」
そう言われて、網の上で焼かれていたバンブールの皿をデカいトングで掴んで、火からおろす。
そして、蓋をぱかりと開ければ、美味しそうな湯気を立てた炊き込みご飯が出て来た。
「わあ、美味しそう」
「そうだろう!」
ニコが自慢げに叫ぶ。
「味は、魚醤を使ったものと、トメイト風味と、塩と芋を入れたものと今のところ3種類作ってみたよ。どれにする?」
「魚醤のやつで!」
まずはあっさり風味から試してみたい。
「じゃ、俺はトメイトで」
これはデルコ。
「僕は芋が入ったもので」
これはマルコだ。
「あいよ! 皮の手袋か、何か布はあるか」
そうか。直火で焼いていたから、皿自体が熱いのか。
ティティは採集用の手袋をつけて、皿を受け取る。
そして、スヴァ用の皿に、半分分けて、彼の前に置く。
それから、自分用のスプーンを取り出して、食べる。
「うわあ、香りがすごいいい! これ! バンブールの匂いかな?」
「ああ、匂いが飯にアクセントをつけて、余計にうまくなってんだよ!」
「本当だな!」
「うまいな!」
ニコの言葉にデルコもマルコも大きく頷いてる。
<スヴァはどう?>
<ああ、バンブールの匂いが風味をよくしているな>
どうやら気に入ったらしい。
「値段はどのくらいにするつもりだ?」
「そうだな、大銅貨6枚くらいか。皿を返却すれば、銅貨3枚返却って感じかな」
「バンブールは火に強いから、数回は使いまわせるだろ」
「あ、本当だ。網の上に直に乗せたのに、全然燃えてない」
「だから、処分に困るんだよ。伐採した後、しばらく放置して完全に枯れないと燃えないんだ」
「ほええ。そうなんですね。不思議だね」
「うちは大助かりだよ。一回こっきりでダメになっちまったら、元が取れないからね」
タリアが笑顔で頷く。
「むすび2つ分くらい入るから、それくらいだろうな。もう少し高くてもいけるんじゃないか?」
「手間がかかるからな。うん、強気で大銅貨7枚にするか!」
「いいんじゃないか? ぎっちりと米と具を入れてやれば、文句ねえだろ」
「そうか? そうだよな! よしそうしてみるか! 手ごたえがあれば、むすびとともに、メインで売りまくってやるぜ!」
「そうすると、人で足りなくなるかもな」
「その辺は大丈夫だ。助っ人はいくらでもいるからな!」
「私も、買いに来ます!」
全種類制覇したい。
「待ってるよ!」
「マル、この皿、出来るだけ多く作ってくれ! ためしに作ってもらった20個だけじゃたりねえ!」
「わかった。これから帰って作るよ。バンブールも取ってきてもらわなくちゃな」
何やら、商談が始まってしまった。こうなると、私の出番はないだろう。
「デルおじ、私、午後から採集に行かないといけないから、ここで、解散でいい?」
スヴァの皿をリュックに入れながら、尋ねる。
「おう。かまわんぞ。三節棍もあと3日もすれば試作品が出来上がると思う。時間ある時に顔をだせ」
「わかった。デルおじ今日はありがとう! 商業ギルドなんて、まったくわからないから、とても助かったよ!」
「なんじゃ、藪から棒に。気にするな」
「ふふ。マルさんにもお礼を言っておいてね」
今はニコとあれこれと話して忙しそうである。
「おう! 気を付けていけよ!」
「うん!」
と、歩きかけて、踵を返す。うん、折角来たんだから、おむすび買わないとね! それと、試作品のバンブールの混ぜご飯も売ってもらおう。
「タリアおばさん! むすびはおすすめ10個と、バンブールの混ぜご飯売れる分、ください!できれば全種類!」
いや、楽しみが増えたね。美味しいは正義だ!
蒸しご飯、炊き込みご飯、大好きです。




