第71話 デルコが2人?
今日は朝から投稿します。
「うーなんか、気が乗らないなあ。やっぱ行かなきゃダメかな?」
スヴァにユースラの実を投げてやりつつ、自分も頬張る。
ユースラの実は直径2センチほどの赤い実だ。市場で日持ちしないからと安く売っていたのを買ったのだ。甘酸っぱくて、おやつ代わりにちょうどよい。
さっき朝ごはんを食べたばかりだが、少し動くだけでも腹が減る。
こまめに補給だ。
<だめだろう。保温筒も追加で頼んでいるのだ>
「だってよ。商業ギルドに登録なんて、俺した事ないし」
<デルコに任せておけば、間違いあるまい>
「そうなんだけどさ。俺は自分が欲しいだけだし」
<彼が折角しっかりしたものを作ってくれたのだ、それに報いる為にも、ちゃんとするべきだろう>
「なんだよ。やけに熱心だな」
<定期的に収入があるのはいいことだろう>
「なんだよ。お前お金のありがたみに目覚めたのか」
<この体になって、食べ物が上手いのだ。もっとたくさん、美味なるものを食べたい>
スヴァが素直に白状する。
「そっか!」
それを聞いて、ティティはテンションが上がった。
まさに自分も同意見だからだ。
やっぱ生きてるっていい。食はその代表格だ。
「うん! スヴァの言う通りかもな! 約束したし、デルんとこに行くか! そんで、ぱぱっとすましちまおう! コマルナ湖にも行かないとだしな」
そうだ。デルコもいるし、きっと商品登録なんて、ぱぱっと済んでしまうに違いない。
面倒なのは最初だけ。それで、定期的な収入が得られるなら、少しの我慢だ。
「よっしゃ! そうと決まれば、急ごうぜ!」
ティティは気合をいれて駆け出した。
<単純で助かるな>
スヴァの呟きは、ティティの耳には届かなかった。
「おはよう! デルおじ! 少し早いけどいいかな!?」
ドリムル武器屋の扉を、勢いよく開ける。
「こら! もっと静かに入ってこんか! 扉が壊れるじゃろうが!」
「ごめん、ごめん。つい」
勢いって大事だから、そのままに入ってしまった。
「何がついじゃ! 全く!」
「元気があっていいじゃないか、兄者」
「ふお?」
デルコの後ろからもう一人デルコが出て来た。
「わしはデルコの弟で、マルコというよろしくな」
「マルコさんですね。初めまして、ティティルナです。ティティと呼んでください」
「じゃあ、わしの事もマルでいいぞ」
デルより若干ではあるが優しめの顔しているが、ごついことには変わりない。
マルおじのほうが性格は穏やかなようである。マルおじって感じじゃないな。
「それで、どうしてマルさんがいるんですか?」
「それは、商業ギルドに、商品登録するために決まっとろうが!」
「わしは、木工職人じゃから、ほれ、お前さんの保温筒の外側を作ったのさ」
「ああ、そっか」
「それにバンブールの皿もな、ほれ」
「うわあ」
それはつるりとバンブールを節と節で切った皿。大人の手のひらを横に広げたくらいの長さ。横に切られたそれの上をぱかりと開くと、中が真っ白な白い皿だ。蓋の部分は、小さな杭できっちりと閉まるようになっている。
「これに米と具材をしこんで、蒸し器で蒸せば、いっぱしの売り物になるじゃろ。もう知り合いの屋台には話を付けてある」
「うわあ。すごいね。デルおじ! 早いよ!」
「兄者は儲かるとなれば、やる事が早いんじゃよ」
「がはは! 商機は逃さんぞ! さて、雑談はこのくらいにしていくぞ! 時間がもったいないからな!」
「了解! デルおじ頼りにしてるよ!」
どうやら、すべてデルコ、マルコ兄弟に任せておけば、大丈夫そうだ。
端にちょこっといれば、十分だろう。
少しホッとしつつ、ティティは2人の後ろをついて行った。




