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第70話 依頼も受けたぞっと

 冷や汗をかいた買い取りがすんで、こそっとカウンターの外に出たティティは依頼ボードに視線をやった。

「よかった。さっきより空いてる」

 これは依頼を見に行くべきだろう。

 お金はいくらあってもいいのである。

 それに早くランクを上げたいのもある。

「イリオーネさん、ありがとうございました」

 振り返って、イリオーネにお礼を言ったが、なんか苦笑いだ。

 はて、ティティとしては色々すれすれだったかもしれないが、取引としては、双方よい取引をしたと思うが、なぜにそんな顔を。

 首を傾げるティティを置いて、イリオーネはカウンターにクローズの札立て、奥へと引っ込んでしまった。

 むーん。気になる。

<スヴァ、俺なんかしたか?>

 スヴァに尋ねると、またも大きなため息が。

<お主は本当、お気楽でよいな>

<なんだよ!>

<いい。過ぎてしまった事を悔やんでも仕方がないからな>

<それはそうだ。じゃ、気にしないぞ。それより依頼を見に行こうぜ>

 わからんもんはわからん。ならば、考えない。ストレスの元だからな。

<我がしっかりせねばならぬな>

 ぼそりとスヴァが何か呟いたが、ティティの意識は、依頼ボードへと向いていた。

 小さい身体を生かして、するりと前へと出る。

 ざっと上から見て行くが、ほとんど今のティティにはできないものばかりだ。

 最下段になってやっとできる採集の仕事を2つ見つけた。

 もう最下段だけみればいいとも思うが、万が一でも受けられるよい依頼がある可能性もないとは言えないのである。

「よし、この2つを受けよう」

 コル草とデル草の採集依頼だ。

 タリオス湖まで足を伸ばすのだ。きっとある筈。日にちにも余裕があるし大丈夫だろう。

 依頼書をボードから取ると、受付カウンターに向かった。

「マージさん、これお願いします」

 今日も朝からモフ耳がキュートである。

「はい。採集の依頼2つですね。頑張ってくださいね」

「はい」

 マージの耳がぴくりと動いて、ティティをじっと見つめる。

 あー! もふりたい!

「先程、イリオーネさんと奥へと行っていたみたいですが、何かありましたか?」

「はは。まあ少し」

 そこは突っ込まないで欲しい。また口を滑らせてスヴァにだめだしされそうだ。

「そうですか」

 濁したことで察してくれたのか、マージはそれ以上突っ込んでこなかった。

 詮索はなし。鉄則が徹底しているようである。

 それでも尋ねてしまったのは、ティティが子供であるとの気安さかもしれない。

「昨日も見たんですけど、すごいですね。ご領主さまからの依頼なんて」

 こういう時は話題を変えるに限る。

「内容が内容ですからね! やはり街で一番偉い人から依頼を出さなきゃな訳ですよ! 街全体にかかわることですし」

「ギルド長がギオーネさんという人だと知りました」

 そう、この依頼の担当はギルド長と書いてあった。

 昨日はそこまで見てなかったよ。

「あはは。そこですか! ティティちゃんの気になるところは」

「だって、あまり知る機会もないでしょうから。覚えておきます」

「わかりませんよ。近いうち会うことになるかもしれませんよ。ほら、ティティちゃんが、すごい情報を持ってきたら」

 いや、ない。俺が話をするのはイリオーネ一択だ。

「あはは」

 笑って誤魔化しておこう。

「でも、全部が全部最初からギルド長が話を聞くって訳ではないですよ? ギルド長は忙しい方ですから」

「そうですよねー」

 当然だろう。やはりギルド職員が情報を聞いてある程度振り分けるんだろう。

 そうであってくれないと目立ってしまう。ティティとしてはイリオーネにそっと告げて終わりにしたいんだから。

「では、今日も頑張って行ってきますね!」

「はい! お気をつけて」

 うーむ。イリオーネよりマージに買い取り頼んだ方がよかったかな。

 あまり細かい事は気にしないでスムーズにすんだかもしれない。

 マージにかなり失礼なことを考えながら、笑顔で手を振り、ティティは冒険者ギルドを後にした。

 さて、今日はコマルナ湖へ出発だ! 

 あ、その前にドリムル武器屋に行かなきゃか。

70話まで来ました~。

皆さまが読んでくれてるお陰です。ありがとうございますv

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