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第69話 やべっ バレた

 ティティが連れて行かれたのは、長方形のテーブルが真ん中に一つとその両脇に椅子が一つづつしかない、狭い部屋だった。

 けれども窮屈な感じはしない。こじんまりっていう感じだ。

「まずは座ってちょうだい」

「はい」

 促されるまま、イリオーネの向かい側の席に座る。スヴァは足元にちょこりと倣う。

「さて、ここなら安心して、レアな素材を出してもらって構わないわよ」

 にっこり笑ったイリオーネさんの顔が少し怖い。

 ここまでさせて、たいしたことなかったら、お姉さん怒るからって顔に書いてあるような。気のせいかな。

<ティティよ、よかったではないか。ここでレアな素材を沢山売りつけて置けば、情報を売る時にも、このような個室で話を聞いてくれるかもしれぬぞ>

 スヴァが、心話で助言をくれる。

 そっか。そうだな。

 ほかの街の冒険者ギルドでも、察しのいい受付のお姉さんがいるとも限らないしな。

 あ、でもあれは一応聞いておくかな。ジオル時代と変わってないとは思うけど。

「あの、その前に一つ確認なんですが、ギルドで作った口座のお金の入金出金って、他の街の冒険者ギルドでもできるんですか?」

 出来なければ、素材は小出しにしないと。大金なんて持って、他の街には行けない。

「もちろんよ。この国だけでなく、他の国の冒険者ギルドでも可能よ」

 すぐにイリオーネは応えてくれる。

「ええっ! そうなんですか?!」

 すげえ。前はそうじゃなかったよな。7年で何があったんだ。

 まあ、便利になったのはいいことだな。

 ならば、在庫を全部出してしまうかな。あ、ゴールデンシープの角は、やめておこう。あれはやばいからな。よっぽどの時にしよう。

「わかりました。では、出しますね」。

 リュックを背中からおろすと、机の上に次々と出した。

 ランチェスの3種類すべて緑・黄色・赤、赤は特に希少だ。ジギーネ、つっつききのこ、ごまきのこ、極めつけは一夜限りしか咲かない、プチメアの花の束、根っこも出した。

「これは‥」

 イリオーネが目を見張る。

「そのリュックに、これ全部入れていたの?」

「あっ!」

 そうだった。どうせなら全部売ってしまえとばかりに沢山出してしまったが、どうみてもこのリュックに入る量ではない。とくにプチメアの花の量が半端ないし。

 それに鞄に押し込んでいたのに、状態がかなりいいのも変である。

 しくった。やっちまったか。汗がだらだらである。

<スヴァ~。どうしよう>

<仕方あるまい。他言無用で、アイテムボックス持ちである事を告げろ>

<やばいって! そうすると、それは魔法が使えるってばれちまうじゃんか>

 収納スキルは魔法士しか使えない。

<収納能力だけだと押し通せ!>

<苦しいがわかった!>

「あの、誰にも言わないで欲しいんですけど、私、収納の能力があるんです」

「そうよね。そうじゃないと、おかしいもの」

 イリオーネが真顔で頷く。

 顔が恐いぜ。

「だまっていて、ごめんなさい」

「いえ。わかるわ。隠すのは当たり前。でも、これからは気を付けなさいね。うっかりし過ぎよ」

「はい。気を付けます」

「とはいえ、まだ7歳だものね。うっかりは仕方ないわ。7歳でいいのよね?」

「はい」

 実はジオルの年齢を合わせれば、二十歳越えだけどな。

「ということは、ティティちゃんは、魔法士なのね?」

「私は収納能力があるだけです。魔法士ってなんですか?」

「でも」

「後は、わかりません」

 苦しい、苦しいぜ。でも、ガキであれば魔法を使える魔法士自体知らないってありうる筈。

「ふう。わかったわ。魔法士自体知らないのね。そういうことにしておきましょう」

 イリオーネは何とか飲み込んでくれたようだ。

「‥‥‥買い取りを続けましょう。これで全部でいいのかしら?」

「はい」

 どうやらこれ以上の追及は諦めてくれたようだ。

 冒険者が自分の能力を隠すのはままあるからな。

 実はまだプチオネの花、根っこはたんとある。

 けど、ここでこれ以上出すとすごい容量があるアイテムボックス持ちだとバレてしまう。

 だからここでやめておく。

 これ以上墓穴を掘ったりしないぞ。

 ティティが内心で脂汗を流している間に、素早く査定をしてくれるイリオーネ。

「本当、目利きよね。ティティは。すべて状態もいいし。どこでその知識を身に着けたのかしらね?」

 あ、ちゃんがぬけた、ちゃんが。イリオーネ恐っ。恐いよ。

「あはは。どこだったかなあ」

 もう笑ってごまかすしかない。

「本当に気を付けなさいね。油断して、能力がばれたら、あっという間に攫われて売られるわよ」

「はい!」

「じゃあ、査定額だけど、金貨30枚に大銀貨5枚ね」

「ひえ! そんなにですか?」

「ええ。ランチェスの赤とプチオネの花はとても希少だもの」

「ありがとうございます!」

「どうする? 全部持ち帰る?」

「金貨5枚と、大銀貨5枚だけ持ち帰ります。後は口座に入れておいてください」

「わかったわ」

 うおー。すっげえ金持ちになったぞ。

 これで好きなものを買えるな。

 思わずにんまりしたティティに、ぎろりとイリオーネが釘をさす。

「本当に気をつけなさいね! 買い取りは私に必ず言う事! カウンターにいない時は、呼び出してくれていいから!」

「わかりました!」

 なんかわからんが、すごい心配してくれてるらしい。しかし話には聞いてたけど、魔法士ってだけで、やっぱかなりやばいみたいだな。気を付けんと。

 しかしこれで、情報を売る目処がついたんじゃないか?

 色々焦ったけど、最後は丸く収まったってことでいいんじゃないか?

<おぬしは単純でいいな>

 と、スヴァが大きくため息をついた。

 なんだよ! イリオーネがいい人だってわかってよかったじゃないかよ!

久しぶりのイリオーネさんでした。

そして、PV12000超えました!沢山の皆様にお読みいただいて、とても嬉しいです!

励みになります!ありがとうございます!!

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