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第67話 だましうちかよっ

 冒険者ギルドを出ると、ティティは真っすぐに宿に帰って来た。

「手元のお金も心もとなくなって来たところだし、ナイスタイミングだな」

 貯金には手をつけたくない。

 植物スライムの事を冒険者ギルドに上手いこと報告できたら、褒賞金が入る。

 それはとても嬉しいが、領主直々の依頼とあっては、褒賞金を貰った者の面が割れてしまう可能性大である。情報とはどこから洩れるもので、金を持ってるチビと思われたら危険である。

「褒賞金貰ったら、やっぱこの街から離れたほうがいいかもなあ」

 街のみんなは優しいが、危険を回避するにはやむを得ないかもしれない。

 そんな事を考えつつ、宿の階段を上がった。

 部屋に戻って速攻で風呂に入った。スヴァも一緒に入れてやる。

 しっかりとあったまらないと風邪を引いたらたまらない。

 後、やっぱり、清潔にせんと、女の子だし。

 風呂上りに、ぐびっと果実水をのむ。

「ぷはあ!!」

 さいっこーである。

 スヴァの専用椀にも入れてやる。

 喉が渇いていたのか。スヴァもぐびぐび飲んでいる。

「さてと、話し合いの前にご飯を食べよう」

 夕食に買ってきたものを、亜空間から取り出す。

 今日は冒険者ギルドで初めて食べて感激した肉巻きむすびだ。

 これをスヴァと2つづつ皿に盛り、自分には机に、スヴァには床の椀の横に置いてやる。

「いただきます! うっめえ! やっぱ、最高にうまい!」

 塩が効いた肉汁がほどよく白飯に染みこんでいてなんともいえない。

 何個でも行ける。

「おっと野菜も食わなきゃな」

 そう気づいて、芋とニンジンのサラダを取り出す。

 これも自分とスヴァの皿に山盛りに盛る。しめはお茶ですっきり。

「ああ、至福」

 ほっこりこのままベッドの住人になれたらどんなに幸せか。

 が、そうもいかない。

 頭を切り替えである。

 冒険者ギルドの依頼ボードの前の人だかりを見ると、色々考えないとやばい。

「さて、冒険者ギルドに報告するタイミングだな」

 そう言って、椅子のすぐそばにいるスヴァに視線を落とすと、前足で顔を洗っていた。

 可愛いなおい。

 思わず、ぐにぐにとしたくなるのを堪える。

「うむ。我らはまだ、弱小。下手に目立てば、襲われて、金をとられ、最悪殺されてしまうか」

「その通り。今世では、楽しく長生きしようという、俺らの目標が、一月もせぬまま消えてしまう危険性があるわけだ」

「まずいな。それは避けねばなるまい」

「おうよ。その為、報告するタイミングと、誰に言うか、それとどこで言うかだ」

「どこで言うかは、冒険者ギルドであろう?」

「それはそうだが、受付のカウンターで話すのはちっと避けたいだろ? 何とか個室で話をできれば、目立たないんじゃないかと」

「なるほどな。だが、個室に入る時にも気を付けねばならんだろうな」

「そうだな。それも問題だが、個室に入れるほどの情報を持っているって思ってもらわなければならなんだよな。話し始めてからだと、やっぱ、目立つだろうし」

「まず、誰に話を通すかによるな」

「うん。カミオはとってもいい子だけど、興奮しやすそうだ。感激屋さんだからなあ。マージは元より元気がよすぎるんだよな。何より」

「二人とも声が少し大きいな」

「そうなんだよなー」

 目立ちたくないこちらとしては、出来るだけ静かに事を進めたい。

 あの二人だと、驚いた途端に大声を出して、注目を浴びかねない。

「二人とも、しっかりした職員だとは思うから、びっくりして大声を出すという失態を犯すとも思えないけど、思えないけれども」

 万に一つがどうもぬぐい切れない。

「となると、お主が知っている職員は、残る1人」

「イリオーネさんだよな」

 年齢不詳のエルフである。

 彼女なら万に一つもない。

「うむ。彼女なら間違いないだろう」

「だな。後は、俺が目立ちたくないのと、本当によい情報を持ってるのを信じてくれるようにアピールするしかないか」

「そうだな。しかし彼女、毎日受付にいるとは限らないぞ」

「そうなんだよな。ここんとこ見てないしなあ。もともと受付の仕事ではないのかもな。もう少し偉い人なのかな」

「彼女がカウンターにいれば、話す。いなければ、少し待つぐらいでちょうどいいかもしれん。すぐに情報を渡すよりも、少し経ってからの方が紛れていいかもしれん」

「でも締め切られたら、困る」

「何、すぐには締め切らんだろ。そうであれば、そもそも依頼などでぬ」

「そっか。となると、明日はコマルナ湖に検証に行くし、次の日はやっぱ、タリオス湖にも行ったほうがいいってことかあ」

「何を言っている。その2つの湖の検証は必須と言っただろうが」

「だってよ、タリオス湖は超遠いじゃんか。馬車に乗せてもらわないといけないんだぞ。だから、その検証は、お上に任せてもいっかもなあなんて、考えたり」

「ばかもの。情報はより正確性があったほうがいいと言っただろうが、これはやはりタリ湖も検証するか?」

「ええ!? やだよやだよ! ごめんて! 勘弁してくれよ」

「2つも3つも変わらぬだろうが」

「変わる! すっげえ変わるから!」

「なら、こうしよう。タリオス湖の検証が終わった時点で、イリオーネ殿に報告するタイミングが掴めなければ、タリ湖にももぐると」

「わかった! それでいいよ!」

「よし、ではそのようにしよう」

「あれ? なんか、話が違うような、ああ!?」

 なんか勢いで、タリ湖にもう一度もぐるって言ってしまった。

「男が一度、承諾したことを否と言うなかれ」

 慌てて、否定しようとするも、スヴァに先回りされてしまう。

「俺は今、女の子だよおおおお!」

 その叫びは、スヴァには通じなかった。

 なんだよ。ひでえよ。だまし討ちだよ。スヴァめ。

 その日、枕を涙で濡らしたティティであった。

ティティ操られてます(笑)

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