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第66話 ついにでたっ

「こんにちは~っと」

 冒険者ギルドに入るのになぜか小声で挨拶してしまう。

 いや、なんか、朝と雰囲気違うよね。

 夕方に近い時間だからか。大人の時間っていうのか。

 こうもうお酒飲んじゃうよってな雰囲気である。

 日没まで後少しって時間帯ならではの雰囲気である。

 この時間なら、依頼ボードの前は空いてるだろうと目を向けてみると、意外に混みあっていた。

 なぜに?この時間でも人気が高い依頼でも出たのだろうか。

 首を傾げていると、受付からカミオが手招きをしていた。

 それに誘われてカウンターに近づいて行く。

「こんにちは、カミオさん」

「はい、こんにちは。こんばんはかな? こんな時間にいらっしゃるなんて珍しいですね」

「はい、朝私が受けられるような依頼がなかったから、来てみたのです」

「ふふ。それはラッキーでしたね」

 そう言って、口の傍に片手を添えて、こちらに身をよせてくる。

 それに合わせて、ティティも片耳を差し出す。

「ほら、私が予告していたでしょう? あれが今日公表されたのですよ」

「!」

 あれとはもちろん、街の異変である不作に関する情報提供であろう。

 カミオの顔をみる。

 すると大きく頷いた。

「情報の内容に寄りますが、有力な情報であるとギルドが判断した場合、ご領主さまから最低金貨5枚はでます」

「ふお! 金貨5枚! 太っ腹ですね!」

「ええ。それだけ、事は深刻だということです。それに最低ですから、場合によってはそれ以上出るってことです」

「だから、依頼ボードがこの時間なのに、混んでいるですね」

「そうです。でも、依頼内容は短いですから、入れ代わり立ち代わりです」

 ボードの方を眺めつつ、カミオが呟く。

「最初に張り出した時には、押し合いへし合いで、ティティちゃんが近づいたら、踏みつぶされる勢いでしたが、今ならティティちゃんが近づいても大丈夫ですよ」

「そうですね、今も人が空いてきてますしね。では、ちょっと見てきます。情報ありがとうございます」

「いいえ。可愛い子にはお姉さん、優しくしたくなるの。ほら、癒しになるでしょ?」

 確かに。むさい男を相手にするよりはいいよな。

 ジオル時代、自分もそう思われていたのだろうかと、複雑な思いになりつつ、依頼ボードに近づく。

「まずは、採集の依頼が新しいものがないかなっと」

 依頼ボードをざっと見る。

 すると、朝になかったものが、あった。

「やった。ツキミノ草の依頼がある!」

 これはラッキーだった。スヴァのいう事を聞いてよかった。

 残念ながら、その他にはなかった。

 依頼は朝に上がる事が多い。これはたまたま遅くにでたのかもしれない。

 すかさず、依頼の紙をとる。

「さて、次はれいの依頼を確認と」

 それは依頼ボードの上部の中央に貼ってあった。

 内容としては、カミオに聞いていた通りだ。


 この辺境地域の田畑や薬草の不作の原因について有力な情報を求む。

 褒賞金 金貨五枚 


 限定的な書き方であるが、これは何も田畑や薬草に限った事ではない。

 山岳部を除く平地での植物の減少は、それを糧とする草食動物、その草食動物を食べる肉食の動物の減少にもつながっている。また魔物の狂化を引き起こす原因にもなるそれをすべて含めての依頼だろう。そう考えると、金貨5枚が最低ラインというのも頷ける。

 ツキミノ草の依頼の用紙を持って、再びカミオのところへと戻る。

 この時間なので、カウンターにはカミオのみだ。

「これお願いします」

「ああ、ツキミノ草の依頼ですね。これ、少し遅い時間にでたのですよ。残っていたんですね」

「よかったです。ちょうど、今日ツキミノ草を採って来たところなので」

「あ、じゃあ、依頼完了の手続きしちゃいましょう! 早速ですが、ツキミノ草を出していただけますか?」

「わかりました。少し、多めに採れたので、それも買い取りしてもらえますか?」

 植物スライムの効果覿面(てきめん)で、結構数が採れたのである。

「もちろんです! 助かります! この手の採集で、森まで足を伸ばすのは、嫌がるんですよね、皆さん」

 それはそうだろう。ランク上げのためと割り切ってやらないと、割に合わない。

「依頼は10本で、30本あるので、20本買い上げですね。では合計で、銀貨3枚と大銅貨1枚と銅貨5枚ですね」

「ありがとうございます」

「ふふ。こちらこそ。それで、あれの依頼は見ましたか?」

「はい、金貨5枚。すごいですね」

「うん。あれが張り出された時は皆の目の色が変わったわ。情報だけで、それだけ出るんだものね」

「そうですよね」

 これは競争相手が多そうだ。

「ふふ。ティティちゃんも、何か情報があれば、持って来てね」

 そう言ってウインクするカミオ、きっと子供には無理だと思っている節がありありである。

 ところが、こちらは有力な情報をがっちりと掴んでいる。

 けれど、今日出されたばかりで、すぐに情報を出すのも、色々危ない気がする。

<なあ>

 足元にいたスヴァに心話で話しかける。

<なんだ?>

<いつ情報を出すか、どうやって出すか、宿でじっくり相談だ>

<了解した>

「カミオさん、私もご期待に沿えるようにがんばりますね」

「期待してますね」

 笑顔で手を振ってるカミオに、こちらも笑顔で手を振り、踵を返す。

 先を越されないよう、でもできるだけ目立たぬタイミングで。

 なかなか難しいやり取りが必要だと、今実感した。

 でも、がっつり褒賞金はもらうぞっと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

面白いぞっと少しでも思っていただけましたら、評価、ブクマをよろしくお願いします。

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