第63話 お金を稼ぐのは楽じゃない
「ほらよ! 植物スライムだ!」
ティティは湖岸に着くと、少し乱暴にスヴァに投げつけた。
スヴァは驚いた風もなく、平然と前足で地面に叩き落とすと、予めだしてあった皿にそれをのせた。
くそ、腹いせにならなかった。
むっとしながらも、水からあがって、タオルで身体を拭く。
「うー! さむさむ!」
それから手早く服を着ると、焚火に手を当てる。うう~。寒気で身体がぶるぶるだ。
タオルは髪にまいて、水分をとる。
「ご苦労だったな。それで、どうであった?」
「ああ、魔力をぶつけても、反撃はないし、ぶつけた魔力も、吸い込まれちまったよ」
「そうか」
「ナイフで刺しても大丈夫だった」
「ふむ。では、奴の性質は変わってなさそうだな」
スヴァは満足そうに頷いている。
「ああ、聞いてた通りなんじゃね? ナイフで身体をえぐってやっても、なんの反応もなかったぜ。えぐったところもすぐに修復されて、つるりとなっちまった」
「うむうむ」
「で、欲しがってたそれ、どうすんだ」
それと言うのは、植物スライムのかけらだ。
「これか。これは使い道があるのだ。後で見せてやる」
「わかった。それより、腹がすげえへった」
「魔力を放出したからだろう。湖に潜る前も大分練習したからな。体力が消耗したのだろう。食べたほうがよい」
「うん。そうする。むすびとスープを飲むぞ。スヴァもむすび食べとけよ」
ティティは、亜空間から自分とスヴァの分のむすびを出す。
「スープは悪いが、今日は俺だけな。中から温ためないと、風邪ひいちまうから」
「構わん。我は水でいい」
「わかった」
ティティは亜空間から水筒を取り出すと、深皿についでやった。
そして自分もむすびを一口食べてから椀に入ったスープをごくりと飲む。
「うー! あっったかー! うめー!」
今日のスープはトメイトという真っ赤な野菜のスープである。少し酸味があってそれがまたいいのだ。
ぐびーっと勢いのまま、全部飲んでしまった。
しまった。もっと味わえばよかった。そう思うがもう遅い。
しかたなく、お茶に切り替える。
あっついお茶も最高である。
むすびを食べ終わると、串焼きも食べる。
これで元気が出た。
やっぱ、肉はいいな。
焚火で身体もあったまって来た。
「これで、この植物スライムの身体の検証が終われば、報告できるだろう」
「おお! 本当か」
「ああ、駆除は、ギルドなり、ここの領主なりに任せればいい」
「だな! そこまでは、俺たちしなくてもいいよな」
「ああ」
「じゃあさ、もう検証はいいな! 後の2つの湖は、植物スライムの確認だけでいいだろ?」
期待をこめて尋ねる。
「だめだ。1つじゃ、弱い」
「ええ! じゃあ後1つだけでいいな」
「だめだ。こちら側すべてやったほうがよい。なんなら、明日タリ湖もやるか?」
「やだよ! わかった! タリ湖もなんて勘弁してくれよ!」
ティティはがっくりと肩を落とした。
くそ~!なるべく潜る時間を短くしたかったのに~。本当に寒いんだからな!
金を稼ぐのは楽じゃないよ。
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これからもがんばります~!




