第62話 検証っ さむっ!
魔力の行使に不安を覚えたティティは、スムーズに魔力が出し入れできるまで練習をした。
ゆっくりではあるが、なんとかできるようになったので、いよいよテフラ湖に潜る事にした。
「水の中でできるか試してからのほうがいいのではないか?」
スヴァがそうアドバイスをくれたが、それに対してティティはぶんぶんと首を振る。
「やだよ! 冷たい思いをするのは、短いほうがいい!」
できなきゃできないで、次の湖でやればいいだろう。最終的には、どれか一つの湖で試せればいいのである。何も今日できなくても問題ない! 今日出来なかったら、明日があるさ!
「行ってくる!」
ティティはスヴァに反論する時間を与えずに、昨日と同じようにぱぱぱっと服を脱ぎ捨てると、テフラ湖に飛び込んだ。
「だから、恥じらいを持てというに」
とのスヴァの苦言が耳を掠めたが、聞かなかった事にする。
まだ7歳だ。
そんなの気にしてられないっての。
うわあ。つめてーよー。早く終わらせて、焚火にあたりたい。
ティティはその思いでぐんぐんと潜っていく。
タリ湖同様、水は澄み切っている。けれど、タリ湖と違って若干小さい魚がいる。
これは、スヴァの予測ははずれか?
そう思いつつも、潜っていくと、底にやっぱりいた。
植物スライムである。卵を横にしたようなぷるんとした平たい球状。
魚がいたのは、タリ湖よりもこちらの湖のほうが大きいからだろうか。
さて、昨日は確認したら、すぐに引き返したが今日はそうもいかない。
これが、魔力などのエネルギーを吸う奴なのか、それと同時に攻撃性はどうなのか、試さなくてはならない。
ティティは先程と同じ要領で、魔力を右の手のひらに出す。
腹から、力の道を使って、手のひらまで魔力を持ってくるっと。
すると、ぽわんと水の中でも魔力が出た。
練習通りっと。後は、この魔力の塊を掴むようにして、植物スライムへと押し出した。
すると、それは、ぽわぽわと水の抵抗を受けながらも進んで行き、植物スライムにぽよんとあたった。
刹那、植物スライムの身体に魔力が当たった部分が、一瞬光を放ったかと思うと、すっと吸い込まれた。
これは魔力を吸収したってことかな。
念の為、もう一度繰り返してみる。
今度は少し勢いをつけてみた。
やはり、植物スライムに当たった瞬間、ぽわっと光って、吸い込まれてしまった。
反撃は特にない。
これは攻撃をしても反撃はしないと見做していいものか。
攻撃と言っても、ぽわぽわと魔力を当てただけだ。
と、そこで息が苦しくなってきた。
ティティは水を蹴ると、水面に向かった。
「ぷはっ!」
空気、空気だあ。
楽になったけど、頭が風に吹かれて寒い。
くそっ。スヴァめ。いたいけな私に何をやらすんじゃ。
悪態をつきながらも、足に括っておいた解体用のナイフを取り出す。
「はああ!」
そして、大きく息を吸い込んで、再び潜る。
ティティの身体じゃ体力もないからな、ぐずぐずしていられない。
ざくっとやってやるぜ。
植物スライムの身体を少し切り取るのだ。
魔力を当てて大丈夫であれば、身体の一部を持ち帰れとのスヴァからの指令だ。
スヴァの言によれば、それで無抵抗であれば、体質はスヴァの知っているものと大差ないだろうという事。
ティティは先程よりも更に深く潜って、植物スライムに思い切って触れる。
弾力がある。これは少し勢いを付けないと、刃が通らないかもしれない。
ティティは覚悟を決めてさくっとナイフを突き立てた。
そしてぐりっと回して、植物スライムの身体の一部をえぐり取った。
すぐに水を蹴って、奴から離れる。
えぐり取ったところにちらりと視線をやると、周りから身体が寄って、すぐにつるりとした表面になった。えぐりとったところはもうわからない。何もなかったかのようだ。
そして反撃はない。
ふう。任務終了だな。
ティティは心の中で頷くと、湖面に向かって浮上した。
結果は上々! 焚火が私を待っている!
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