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第52話 検証担当は俺かよ

長めです。

「ふう。やっぱ、風呂はいいよなあ」

 タリ湖に潜り終えたティティは真っすぐに宿に帰って来た。

 焚火で温まったとはいえ、風邪を引いたら大変なので、部屋の風呂にすぐに入った。

 身体を手早く洗い、今はのんびりと湯船につかっている。

「はあ。きっもちいいなあ、おい」

「うむ」

 タリ湖では、風呂抜きといじわるを言ったものの、それを実行するほどティティはいじわるではない。

 やはり気持ちいいことは共有しないといけない。

 という訳で、スヴァも湯船に浮かび、リラックスしている。

「はあ、ちっと高いけど、石鹸買うかな」

 湖の水はきれいだったが、やはり、きっちり洗っておきたい。

「うむ。女子は清潔にしておいたほうがよいからな」

「お前も石鹸で洗ってやるよ」

「我はいい」

「いや、たまには洗わないとな。もふもふ感が損なわれる」

「むう。ではたまにだぞ」

 お湯につかるのはよくて、石鹸で洗うのはいやなのか。タオルでこするよりも気持ちがいい筈なのに。複雑な奴だ。

「さて、湯も冷めてきたし、そろそろあがろうぜ」

「ああ、昼間のことを再検討しないとな」

「その前に飯だ」

 名残惜しさを振り切りつつ、ティティは立ち上がった。


「やっぱ、野菜がたりないよな」

 肉巻きおにぎりと、串焼きを頬張りながら、ティティは呟く。

 一応、野菜も混じった串焼きを買ってきているが、それだけでは足りない。

 温野菜、もしくは野菜スープが欲しい。

「スープは保温ポット待ちだけど、温野菜は自分で茹でて、亜空間に保存しておくか」

 となると、それ用の容器がいくつか欲しい。

「雑貨屋さんで、大きめの深皿を見てみるか」

 むう。そうすると、先立つものが必要だ。

 デルコにも色々頼んでしまってる。これは依頼をこなしていかないと、貯金もできない。

 蓄えがないのは、大いに不安である。

 明日は、朝一で、冒険者ギルドに行こう。

 受けた依頼のものは、すでに亜空間にあるもので事足りる。

「依頼もいいのが、出ているといいなあ」

「植物スライムの情報を冒険者ギルドに渡せば、まとまった金が入るのではないか?」

「あ、そうだな! それがあった! どんくらい、くれんだろうな?」

「街の存亡にかかわる事だ、それに見合う額だろう」

「そっか! じゃあ、結構もらえるかもな! そしたら、テント買おうぜ! 今後野宿する機会もあるだろうからな。野宿するのにテントがあるのとないとじゃ、かなり違うからな!」

「テントを買えるように、では、これから植物スライムについての話し合いだ」

「えー。もう疲れたよ。話し合いって必要か? 昼間にお前に話した事がすべてだぞ。それでよくない?」

「ダメだ。大きさ、姿は、おそらく植物スライムの変種だろうとは思う。だが、我が知っていた性質から変化がないか不明だろう」

「それは明日他の湖で検証するって話だろ? ほら、魔力をぶつけてさ」

「うむ。それももちろんやるぞ。本当は生体エネルギーを吸い取ることができるのかまで検証したいが、それは冒険者ギルドに任せよう。残念だがな。そのほかにも疑念があるのだ。おそらく、いや明らかな害意を持った者が、湖に植物スライムを沈めた。ならば、見つけられた場合、攻撃を仕掛けられるように植物スライムに攻撃性を植え付けてはいないかどうか」

「うえ?! あの饅頭みたいなもんが、攻撃してくるのか? 目も口もなんもないし、大人しそうだったぞ」

「それは、お主が何もしなかっただけだからかもしれん」

「なら、攻撃を加えた場合、何か起こるっていうのかよ!」

「それを踏まえたうえで、明日検証してみよ」

「誰が?」

「お主が」

「また俺かよ!」

「元々明日お主がやると言っていたではないか」

「俺はかよわい、七歳のガキなんだぞ!」

「すまぬな、我は潜水はできぬ」

 確かに獣姿なスヴァは難しいかもしれない。

「ぐぬう」

 これは昼間と同じ問答になりそうだ。

 人化を厭うのを無理にさせるのも忍びないしな。

「わかったよ。で、どうすればいい?」

 半ばやけになって聞く。

「昼間言ったように、魔力をぶつけてみればいい。軽くでよいぞ。それで反応をみてみろ」

「大丈夫かよ」

「軽い刺激くらいなら、激しい反撃はないだろう」

「本当かよ」

「おそらく。だが、少し離れて攻撃してみろ。いつでも逃げられるようにな。まあ、それだけの巨体だ、機敏に動くとは考えにくいな。元々が植物の性質だ」

「わかった」

「次に、近づいて、少しナイフで、奴の身体を切り取ってみてくれ」

「おい! 大丈夫かよそれ! かなりな攻撃だろう!」

「植物スライムは身体を切り取られたところで、特に反撃はしない。木が葉をとられても何もしないようにな」

「性質が変わってなければだろう!」

「だから、先に魔力をぶつけてみて、様子をみるのだ。それで反応がなければ、大丈夫だろう」

「本当かよ」

「うむ。それにある程度植物スライムが大きくなったら、身体の一部を回収しないと、問題がでるからな」

「だれが」

「植物スライムを湖に放った奴がだ」

「なんで」

「あまりに巨大化すれば、見つかる可能性が高くなるだろう」

「あ、そうか」

「この地を弱らせるだけなら、見つかってもいいだろうが、完全に枯渇させるなら、ジュキピエルの身体を切り取って、海にでも捨てて、処分しないとだめだろう」

「なるほど」

「ならば、攻撃性はない可能性は高いが、検証は大事だ」

「そうだな」

「まあ、肥えた植物スライムを持ち去って処分する手もあるが、植物スライムを大量に作るのは難しいからな。その可能性は低いだろう」

「材料が希少で手に入りにくいからだな」

「そうだ。それに、植物スライムを作ったのが、我の知っている者だとしたら、攻撃性を加えている可能性は極めて低い」

「随分と信頼してるんだな」

「長い付き合いだったからな」

「なら、検証なんていらねえんじゃねえ?」

 危険は避けたい。

「いや、検証は必要だ。それで対価をもらうんだからな」

 くそ、真面目な奴め。いや、研究者の一面があるのかもしれない。

「わかったよ。今の話で、危険は、まあ、少ないというのはわかったよ。明日がんばってみるよ」

 考えるのはスヴァ、動くのは俺ってか。

 危険手当分褒賞金を上乗せしてくれるように、冒険者ギルドに相談したいよ。

お読みいただきありがとうございます。

毎日お越し頂けて、とても嬉しいです(*^^*)

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