第494話 ティティ、隣国へと旅立つ
「お世話になりました!」
「なりましゅた!」
私たちはヒースやブリア、そしてカレドニアファミリーに別れを告げると、早々にゴルデバの街を後にした。
湿っぽい挨拶は苦手なのだ。なので挨拶は簡単にすませた。また絶対会えると信じてるからね。
ヒースは大げさに嘆いていたが。
ブリアとヒースには聖力循環の研究を続けて、長生きして欲しいの気持ちを込めて、握手をしてきた。
それだけで十分だった。
私たちは馬に乗り、一路隣国への出国ができるゴルデバの第五の湖、国境にあるキシュミール湖に向かった。ここから、船に乗って、隣国へと渡るのである。
「わあ。建物が一杯だな」
キシュミール湖のグロシルバ王国側。砦もあり、色々な店もある。そして何より騎士の姿も多い。それはそうだ。隣国からの玄関はここだけである。
守りは固いのは当然だ。
そして、隣国に渡るには船しかない。グロシルバ王国の平和が保たれている所以である。
私たちは一日一回、隣国へと向かう船の運賃を支払い、馬2頭とともに乗り込む。
この大型船は人も乗せるが、主に貨物船の役割が多い。
平和で豊かなグロシルバ王国を出る者は少ないのだとか。
「私もできれば、のほほんとグロシルバ王国に居たかったかも」
<仕方なかろう。長生きしたくばな>
スヴァが諭すように言う。
うん。仕方ないよね。長生きして、おもしろおかしく生きるんだから。
私たちは手続きを終え、船に乗り込む。
ティティは、船のへりにつかまりながら思う。
短い期間でグロシルバ王国の東へ西へと旅をした。
辛いこともあったけれども、楽しいこともあった。
「昔の仲間とも再会できたしね」
腕に絡まるニーネの頭を撫でる。
<あるじー。どこにいくのー>
「楽しいところだよ」
<そーかー。あるじといっしょなら、どこでもいー>
ニーネは頭をすりと、私にこすりつける。
「そうだね。みんな一緒であれば、何事も楽しい! 世界は楽しいことがあふれてるんだ!」
ティティは胸に手を当てて、呟く。
本当のティティルナ。世界は広い。あのくそ家族がすべてじゃない。辛いことばかりじゃない。楽しいこともたくさんある。そこで見ていて感じていただろう? いつでも戻ってきていいのだ。この身体はティティルナのものなのだから。
なあ。ティティルナ?
その呼びかけに答える声はない。
ティティは決意する。
本当のティティルナの為に、少しでも長生きして、面白おかしく過ごせるように、努力して見せよう。 もちろん自身も楽しく生きる。同じ魂の底に眠る少女にそれを感じてもらうために。
ティティはグロシルバ王国に背を向け、歩く。
そしてノアが、ライが、ブライトがいる船の先頭に立つ。
「行こうか!」
新たな国を目指して。
<FIN>
完結です。ティティは隣国へと期待と不安を胸に旅立ちました。
伏線を回収しきれていないのが、悔やまれますが、今の私ではここまで書くのが精一杯でありました。
それでもここまで書けてよかったとも思います。
皆様、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!!
感謝感謝です!!




