第491話 ティティ、商業ギルドに再訪問す
更に翌日。朝食を食べて、カレドニア家を出発。
メンバーはいつものメンバー。私、ノア、ブライト、ライそして、ノアのリュックの中にはワイスがインしている。ニーネはお留守番。庭の散策にいそしんでいる。
まっすぐにドリムル武器屋に向かう。
「デルおじ! おはよう! シャベルできてる~?」
私はドアを開けつつ、元気よく挨拶だ。
挨拶は重要だからな。笑顔も忘れてはならない。ノープライスなものは惜しみなく振り撒くべし。
「おう、ティ! 朝から元気だな!」
「デルおじも!って言いたいけど、ちょっと寝不足?」
デルおじのごつい顔の中で、ウエイトの高い眼力強めの目の下には、うっすらクマが出現していた。
「おお! 少しな。ティの要望のものはできとるぞ!」
「もしかして、シャベルのせいで? もう! そんなに無理しなくていいのに!」
デルおじが作ったものであれば、十分満足いくものになるとわかっているから。
「なにを! わしが納得したものでなけりゃ、ティに見せられんからな!」
「ふう。デルおじはやっぱ、職人なんだね~。すごいわ」
「がはは。褒めても何もでんぞ。それより、ほれ、見てみろ」
「おお!」
デルコに差し出されたのは、細長いシャベルだ。
「そうそう! これこれ! イメージ通り! さすがデルおじだね!」
デルおじすげー!客の要望の品を一日で作ってしまうなんてよ。
「もっと奥へ来い! 他にも作ったものをカウンターの上に並べてあるぞ! 見てくれ!」
「うん!」
そうしてついて行った先、いつもお金の支払いなどをするカウンターの上には、柄の長いシャベル。あと採取用の筒状の金属もあった。
「いいね! 私が望んでいた通りのものだよ!」
「すごいですね。ティティちゃんの絵を見ただけで、作ってしまえるとは」
ブライトも感心したように頷いている。ライも同様だ。
「しゅごい!しゅごい!」
ノアも手をたたいて、デルコを褒め称えている。
デルコの鼻も、いや腹もずいっと前に出る。
「まあな!とは言っても、まだ改良の余地はあるだろうて。使ってみて、問題点があれば改良するぞ」
そうだね。そうして商品は、よりいいものへと仕上がって行くんだもんね。でも。
「残念。使い心地は、伝えられないかも。ほら、私また旅に出てしまうから」
「なんの!商業ギルド経由で、わしに手紙をよこせばよい! そうすれば、改良する」
「そっか」
でも新しくなった商品を、私が使うことができるのはいつになるか。
うんでも、それを楽しみにまたここに帰ってくると思えば、楽しいかも。
ん? つい載せられて考えてしまったが。
「やっぱり、これら、商業ギルドに登録するの?」
「当たり前じゃ! 新しいものができたら、とりあえず申請! これが基本じゃ! そうでなくては金はたまらんぞ!」
デルおじの金のがめつさ顕在か。
「金はいくらあってもいいからな! いい酒を買うには金がいるんじゃ!」
デルおじ、安定のドワーフ魂だった。
そうして。やって来たのは、貴族街寄りにある商業ギルド。
茶色のレンガ造りの3階建ての建物である。
扉を開けて、まっすぐに歩くと、受付カウンターだ。
私たちは、そこへとぞろぞろと向かう。
うん。冒険者ギルドとは違うな。雑多な感じがしない。
そしてラッキーなことに、知ってるお姉さんがいた。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用でしょうか?」
20代位の茶色の髪のお姉さん。少しきゅっと目尻が上がっていて、仕事できる系。
「マルティナさん! お久しぶりです! ティティです! 今日もお世話になります!」
挨拶大事! そしてにっこりスマイル! プライスレス!
「はい。丁寧なご挨拶ありがとうございます。お久しぶりです」
「弟のノアです! こんにちは!」
私と手をつないでいるノアも、元気に挨拶だ!
私の薫陶が染みついているな! 笑顔も満点だ! よしよし!
「はい。ノア君も、こんにちは」
うんうん。マルティナさんの目尻が気持ち下がった!
ノア! よい仕事したね!
「今日は商品の登録申請に来たんじゃ! あやつを呼んでくれ!」
私たちの横からデルコが、ずいっと前に出る。
「これはデルコさん、わかりました。5番の部屋でお待ちください。ただいま呼んで参ります」
マルティナさんがきりっとした顔に戻って返事をする。
ちょ! デルおじ! まさかの担当指名!
まさかあの人じゃないよね!? やめて! 私苦手なんだから!
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