第486話 ティティ、デルコと再会す
私はそう息巻いて、カレドニア邸を出発した。
服装は私とノアは動きやすいリュッシュの古着屋で買った動きやすい服、ノアリュックにはワイスがインしている。ニーネはまたお留守番だ。隣国に言ったら、自由に動き回れないかもしれないので、カレドニアの庭を堪能して欲しい。
ライも古着ではないが冒険者と見える服で、その上にフードを目深にかぶっている。
ブライトは腰に剣をつけているが、商人寄りの服装だ。自分は商人として行動するという意思表示か。
うん。好きにするといいよ。
そしてのっけから、2人について来てもらってよかったと思うことになった。
そう、貴族街から下町への道、私は大丈夫であったが、4才のノアにはまだちょっと無理な距離だった。そうだ。以前同じ道を私が背負って移動したのだった。
あれから体力がついたとはいえ、まだ長距離の徒歩での移動はすぐに疲れが出てしまう為、抱き上げて移動してくれる大人がいるのはありがたかったのである。
最初のうちは、一生懸命歩いていたノアだったが、疲れが見え始めたところで、ブライトにだっこしてもらった。ライは周囲の警戒をしてもらう。何もないとは思うけどもね。
「歩きたい」とノアはぷっと膨れたが、下町についたら、色々な店を見て回るから、体力温存しとこうねと説得した。
そうして最初にやってきたのは、もちろん、ドリムル武器屋である。
私は扉を開けて叫んだ。
「デルおじ!いるー!!」
そしてためらいなく、ずんずんと店の中へと進む。
すると、カウンターの奥から、大人にしては小さめ、だが、横幅はがっしりなドワーフが出てきた。
「その声は! ティか!」
「そうだよ! 私だよ! 久しぶり! 元気してた?」
「当たり前じゃ! 見てみよ! この力こぶを!」
デルコがカウンターから出てきて、右腕をむきっと曲げて見せる。
「あはは! 相変わらず顔が岩みたいにごっつい。こわー!!」
「な、なにを!味のある顔と言え!」
「うん! 安心するよ!! とう!」
私はかけ声とともに、デルおじに抱きついた。
「あー。会いたかったよ。デルおじ」
デルおじはあぶなげなく、受けとめる。
「ふん。よく帰ってきたな。しばらくは街にいるのか?」
「ううん。ちょっとの間だけ。冬になる前に、隣の国に行きたいから」
「隣国に行くのか! またなんでだ?」
「あー、ちょっと用事が出来ちゃって」
「隣国に用事か。ティはまだ7才と小さいのに、スケールだけは大きいの」
デルおじ。もっと詳しく聞きたいだろうに、それだけにとどめてくれる。ありがたいな。
「それで、後ろにいる2人は、新しい仲間か? お、それに坊主も元気そうじゃな」
「デルおじちゃ! ノアげんき! ねえねといっしょだから!」
ブライトにおろしてもらったノアは、てててっ近づいてきて、挨拶をする。
「そうか。ねえちゃんの言うことをちゃんと聞いてるか?」
「うん!」
「そうかそうか!」
デルおじはノアの頭をぐりぐりと撫でた。
ノアうれしそうだ。
「はじめまして。ブライトと言います。よろしくお願いします」
ブライトが軽く挨拶。
「ライだ」
ライがフードから少し顔を出して、挨拶する。
「デルコだ! ティと坊主をしっかり守ってくれよ!」
デルコは2人と握手をする。
「ティ、2人、強そうだな」
「うん。強いよう。私は助けてもらってばかりだもん」
「そうか。この2人がいるなら、隣の国に行っても安心だな」
どうやら、2人はデルコのお眼鏡にかなったらしい。
よかった。
「それで? ここには挨拶に来ただけか? それとも武器を買いにきたのか?」
「あ、そうだよ! そう! 私、デルおじに作ってもらいたいものが、あって。個人的になんだけど。武器じゃなくて申し訳ないんだけど」
そこで私は後ろを向いて、2人に言った。
「少し長くなるから、2人は店内を見てて。デルおじはすごくいい武器職人だから、きっと色々欲しくなると思うよ」
と、私の言に、ライは素直に頷いた。
「わかりました。何かあれば、声をかけてください」
「ノアも、ついてく」
と言って、ノアはライの後を追って言ってしまった。
この頃、妙にライに懐いていると思うのは気のせいか。
ねえねは、少し寂しい。
まあ、でも私の横で黙って話を聞いているだけってのも、退屈だものね。
ライと店を見てまわるのもよい。
「ブライトも好きに見て回って」
再度そう促すが、ブライトは首を振る。
「いいえ。私は早速の垂れ流しをきちんとせき止めなければなりませんから、しっかり横で話をきかせてもらいます」
「垂れ流しって。商品化なんてないから。個人的に欲しいものを作ってもらうだけだから」
「はいはい」
ブライトが取り合ってくれない。なんだよ!
「うむ。ブライトとやら、きちんとティを、把握しているようじゃな」
「ええ。最初からきちんと見ておかないと、利益が逃げていってしまいますから」
「そうしてやってくれ。ティはあまり金に頓着せぬからな」
「はい」
なに、2人でわかり合ってるの!?
それに私、お金は大好きだよ!
<2人の見解は正しい>
なにそれ! スヴァまで結託して!
大いに抗議する!!
デルコにもお世話になりましたね。
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