第480話、ティティ、下町広場を堪能する
下町広場で一休みです。
ノアは冒険者ではないので、私の従魔としてワイスを登録する。
これで一安心と!
ノアのリュックから出したワイス。寝てて、甲羅しか見えなかったけど、登録できてよかったよ。本当寝てばかりだな。早く回復するといいね。
「これからどうするのかな? イリオーネさんに宣言したとおり、カレドニア家に行くのかい?」
ブライトがギルドのドアを押し開けつつ、私に尋ねる。
くうっ。またもブライト、楽々と私の成長の試練を潰してくれた。
<何度も言うが、こやつは親切で扉を開けてくれただけであろうに>
足下でスヴァが呆れたように心話で呟く。
そうなんだけど! それでも、私はこの扉を自らの手で開けたかったのさ。
まあ、いい。機会はまだある。
私はそう自分を納得させて、ブライトの問いに答えた。
「うん。その前に冒険者ギルドへの挨拶が予想外にヘビーになってしまったから、少し休憩したい。小腹も空いてきたし。下町広場に行って少し早めの昼ご飯にしよう!」
そこでライに抱っこされていたノアがむずかる。
「ノア、ひろばまであゆく」
うん。まあ、いそぐ用事もないし、あまりだっこばかりでもね。
「じゃ、ねえねと手をつないでね。はぐれないように」
「あい!」
ライに下ろしてもらうとノアが飛びついて来た。
うーん。我が弟は癒やしだね!
そうしてやってきたのは、下町広場。屋台が多く並ぶ楽しい場所だ。
「何を食べます? 端から見て回りますか?」
ブライトが尋ねてくる。
「ううん! もう食べたいものは決まってるんだ! ついて来て!」
私はノアの手を引いて、ある場所へ向かう。
ここはリーダー権限で、私の今食べたいものを皆にも食べてもらうのだ!
きっと気に入るぞ!
ティティが連れて行った先、そこは色々なおむすびを売る屋台である。
以前も大変お世話になったお店。
「ニコさん、タリアさん! お久しぶりです!」
「お? おお!! ティティちゃんじゃねえか! ひさしぶりだ!」
「あらあ、本当に久しぶりねえ! 元気だった?」
「はい! ちょっと前に戻って来たので、ここのバンブールの炊き込みご飯を食べないと!と、思って来ました!」
「おお! 嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!」
「バンブールの炊き込みご飯ありますか?」
「もちろんだ! 魚醤を使ったものと、トメイト風味と、塩と芋が入ったもの、それに肉入りのもあるぞ!」
「おお! 新作もあるんだ! じゃあ、私は肉入りのものを! みんなはどうする?」
私は振り返って尋ねる。
「そうですね。僕は魚醤を使ったものを」
「私はトメイト風味のものを」
「ノアは、ノアはえっと、ねえねとおなじやつ!」
「という注文です! ニコさんよろしくお願いします!」
「おうよ!」
<あるじ~。ニーネもごはん~?>
腕からニーネがにょろりと舌を出す。
「ごめん。ニーネはもう少し待ってね。ヒースの家に行ったら、お庭を散策していいかきいてみるから」
<わかった~>
うん。ごめんね。私たちだけ先に食べて。食生活が違うから、許して欲しい。
私はニーネの頭を撫でてから、バンブールの炊き込みご飯を待つ間に、皆に指示をだす。
「みな、バンブールの皿はすごい熱いからね。直接触れないから、皮の手袋を出しておいてね。ノアはお皿を持って待機してね」
私はノアに皿を渡す。
「「わかりました」」
「あい!」
そうして待つことしばし。
「おまちどう!」
その声とともに、ニコがでかいトングでバンブールを皿にした炊き込みご飯を渡してくれる。
「ありがとう! これお代! 足りるかな? 確か1皿大銅貨7枚で売ってたよね?」
「おお! そうだよ! うん、ぴったりだ! 毎度!」
そうして受けとった炊き込みご飯。
食べても邪魔にならなそうな場所に行く。
まずはノアとスヴァの分。2人の専用の皿に、分けてやる。
ほかほかあつあつである。
「おいち!」
<うむ、美味である>
「よかった! 私も食べよう!」
私の分も持ってもらっていたライから、自分の分を受け取り、あむりとスプーンで頬張る。
「おいしー!」
肉のタレがご飯に染みこんで絶妙にうまい!
なんの肉か聞かなかったけど、うまければ、問題なしなのである。
「ブライト、ライもどう?」
「ええ。おいしいですね。バンブールの香りがご飯の味を引き出してます」
ブライト、コメントがうまいなあ。流石商人である。
「ライは?」
「おいしいです。お腹にたまります」
コメントが微妙。お腹にたまるのが重要なのか? まだ騎士体質が抜けてないな。
まあ、おいしいって言ってるし。いいか!
私たちはあっという間にバンブールの炊き込みご飯を平らげた。
食べた後は、ニコにバンブールの皿を返しに行く。
皿を返すと、一皿で3銅貨返却になるのだ。
これはきっちり返しに行かないと!
「ニコさん、タリアさん、ご馳走さまでした! とてもおいしかったです!」
「おうよ!」
「また食べにきてね!」
ニコさんとタリアさんがニカリと笑う。
うん。顔付きは全然違うのに、笑い方が一緒だ。
夫婦は似てくるのかもしれないなあ。
「はい! また来ます!」
私は軽く手を振って、屋台を後にした。
7才だから、これでお腹いっぱいになったと思ったら大間違いである。
私の身体はまだ食べ物を欲しているのだ!
「次は肉の串焼きを買おう」
ブライトとライを振り返り、宣言する。
2人も大きく頷いた。
そうだよね! 2人は元騎士である。これではまだまだ足りないよね!
「ノアも!」
隣で手を挙げて主張する弟、うんうん、わかってるよ。おいしいものいっぱい食べようね!
そうして私たちは下町広場の屋台を十分に堪能した後に、ようやくカレドニア家に足を向けた。
いつもお読みいただきありがとうございます!
少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。
励みになります~。




