第477話 ティティ、ゴルデバに入る
そしてやってきました私たちの番。
そこで待ち構えていた門番は、なんと無精ひげのおっさんのハンクであった。
北門を守ってた筈なのに、今日はここを守ってるのか。
日によって、もしくは週、月ごとに配置が転換されるのかもしれない。
私たちはラーセラの町経由でゴルデバに向かって来たので、今いるのは南門である。
それにしても何という偶然! そして何という幸運か!
「こんにちは! お久しぶりです! ハンクさん!」
「お! ティティだったか? 確か街を離れていたんだったよな? 帰って来たのか! 元気そうで何よりだ!」
「はい! 少しの間、またゴルデバの街にいます!」
「そうか。少しだけか。まあ、ティティも冒険者だからな。一カ所に留まるってのはないか。それでも、この街に居る間は楽しくやってくれ」
「はい! 私と大人1人は冒険者、弟のノアと残りの大人1人は商人です。」
「このちんまいのも商業ギルドに登録しているのか?」
「ノア、ちんまくない!」
ノアがぷっと膨れている。
「はは。悪いな、ボウス。馬鹿にしてる訳じゃねえぞ」
ハンクは謝りながら、ノアの頭をぐりぐりする。
「うん」
ノアは頭を撫でられて、怒って居たはずなのに、嬉しそうな顔をしている。
大人に撫でられ慣れてないからなあ。嬉しいんだろう。
「んじゃ、ギルドカードをそれぞれ見せてくれ」
「了解です!」
私たちはそれぞれカードを差し出す。
思えば、このおっちゃん、ハンクがお金を持ってない私に、面倒がらず、そして私のことを信頼して、仮入門証を出してくれたからこそ、今、私はこうして生きていられるのだ。あの時、金がないなら街に入れてやらんと、門前払いされていたら、私は死んでいただろう。
ハンクには感謝しかない。
「ハンク、改めて、あの時、仮入門証を作って、私を街に入れてくれてありがとう」
私は手続きをするハンクの背中に向かって礼を言う。
「なんだよ、改まって。お礼はもうもらったから気にするな!」
ハンクはコップを握って酒を飲むふりをする。
「そうだけど」
「初めて会った時は、鶏ガラみたいにガリガリだったが、今は肉がついて、安心だな!」
「ハンク、それ女の子に言う?」
「ちびっこくても体重の話は御法度か!ははは!」
まったく気のいいおっさんである。
「礼はいいからさっさと街に入れ! 俺も仕事に戻らなきゃ、おまんまが食えなくなっちまう」
ハンクはわざと手で、ティティたちを追い払うマネをする。
「うん。ありがとう」
「もう礼はいいって! 次! 次の者前へ!」
照れたように頭をかいて、ハンクは次の入門希望者を呼ぶ。
「行きましょう」
ブライトに促され、私はノアの手を引いて、ゴルデバの街に入った。
「どうしますか? 最初に宿をとりますか?」
ブライトが私たち一行を導いてくれる。
思えば、最初にここについた時には、スヴァと2人だったのに、いつの間にか大所帯になったものだ。
<大所帯とは大げさな物言いだな。3人増えただけであろう>
スヴァこそ、何を言う! 倍以上の人数になったのだぞ! でもそうか、スヴァの言も入れ、小集団あたりになったと言っておこうか。
「ティティちゃん?」
ブライトが返事を促すように私の名を呼ぶ。
どうも、スヴァと心話で話していると、返事が遅れてしまう。ブライト、ごめんね。
「最初に、冒険者ギルドに行こう」
帰って来た報告もしたいし、街で事件が起きていないかなど確認したい。それに何か耳寄りな情報がないか聞きたい。
「わかりました」
少し歩くからノアは馬に乗せてもらったほうがいいな。
と、思ったら、ライがもう乗せていた。いつ私の手を離れた!?
<手を繋いでいる意味がないではないか>
だって、それほど、自然だったんだよ。
それにしても。
ライって、寡黙だけど、よく気がつくな。
「ノア、しっかりつかまって落ちないようにね」
「あい!」
とてもよいお返事である。
「では行こうか」
そうして私たちはゴルデバの冒険者ギルドに向かった。
ティティ、まずはハンクと会えました。
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