第476話 ティティ、懐かしさを感じる
かくて私たちは、ラーセラの町を通りぬけて、一路、ゴルデバの街へと向かったのである。
ブライトは確かに約束を守ってくれた。
早朝に宿を出て、ラーセラの町で昼食。
けれど! けれどだ! いかな私でも、昼食だけでも新鮮な海鮮食べられてラッキー!とは頭の切り替えが出来なかった。ラーセラで食べた海鮮丼はおいしかったけどね!
私は思う!
なぜに私は、ぽくぽくとのんびりした旅を楽しめる機会が得られないのかと!
国守さまの課題がないんだよ? 少しぐらいのんびりしてもいいではないか。
ティティの嘆きも知らぬとばかりに、ブライトとライはまっすぐに急げるだけ急ぎで、ゴルデバへと馬を走らせる。
ティティがそんなに急いだところで、たいして違いはないよ? だからのんびり行こう? との提案も、ライの真摯な眼差しをうけ、諭され、尻つぼみになってしまった。
折角行きとは違う道を通ったのに、台無しだよ!という嘆きは誰にも届かなかった。
そしてやってきたのは懐かしき街、ゴルデバである。
ここを離れたのは数ヶ月だというのに、なぜか懐かしさを感じる。
<ジジイ、いや、ババアか>
と、スヴァに鼻で笑われた。
ちょっと、スヴァさんや、現世に顕現した時からみると、明らかに口が悪くなってるよ?
<お主に感化されたのやもしれぬな。気をつけねば>
何気に私のせいになっている!ひどい!
「ねえね! おっきなもん!」
ブライトの馬に乗せられているノアが前方の門を指さして、きゃっきゃとはしゃぐ。
「こらこら、ノア君。あまり乗り出すとおっこちてしまいますよ?」
ブライトが後ろからノアの身体を押さえて、軽く注意している。
「あい。ごめんちゃい」
むふー。我が弟は安定の可愛さである。
<汚れを知らぬ子の可愛さか。お主には出せぬオーラよ>
スヴァ、本当お口が悪くなったよね。
街の門に近づいて来たので、私たちは馬を下りて歩くことにした。
間違って、馬で人を引っかけたりするといけないからね。
そうして街に入る為に、順番待ちの列に並ぶ。
ライの本来の身分を提示すれば、待ち時間ゼロで街に入れるだろうが、そんなことはしない。英雄が来たと大騒ぎになること必至である。ライには冒険者のライとして街に入ってもらうから、と、予め話してある。
ライは大きく頷いて、「私はただのライですから」との返事をもらった。
まだこのフレーズが気に入っているらしい。
そうして、徐々に前に進み、私たちの番になった。
ティティゴルデバに戻ってきました。




