第474話 ティティ、気分を台無しにされる
ティティにとって、怪しい雲行きです(笑)
「さて、一息ついたところで、明日からの予定を話し合いましょうか」
ブライトから、至福な時間を壊す、無粋な提案がなされる。
「部屋に帰ってからでもよくない?」
私はもう少し、食事のおいしさの余韻に浸りたい。
「だめです。部屋に帰ったら、すぐに眠ってしまうでしょう。ティティちゃんの隣に座っている弟君のように」
そう言われて、隣を見ると、ノアが満足そうな顔をしながら、うとうとと船をこいでいる。
私はそっとノアの頭を自分に寄りかからせた。
ノアは安心したように、すうっと眠りに落ちてしまった。
うん。今日も一杯移動したからね。ノアもお疲れ様でした。
私は弟に心の中で、労いの言葉をかける。
「ティティちゃんだって、今はちゃんとしてるけど、部屋に行けば、眠くなるでしょ?」
「あーそうだね」
それはしかたない。ベッドは魔道具でないかと思うくらい、その姿を見ると、引き寄せられ、たちまち横になりたくなってしまうものなのだから。
「わかったよ」
私は渋々ブライトの言に頷き、話し合いに応じることにする。
とはいえ、早く休みたいから先回りして話を進める。
「話し合いといっても、行き先は決まっているでしょ? 次の目的地は港町のラーセラへゴー!」
私は天井に向けて、私はんノリノリで拳を突き上げる。
なのに。
「ラーセラでの目的は、海鮮を堪能する為。数日滞在でしたね?」
ブライトが私の大いなる目的を冷静に確認してくる。ノリ悪いぞ!
「そう! この宿で食べた魚料理も絶品だったけど、更に海に近いラーセラであれば、もっと新鮮で色々な海鮮が食べられるに違いないからね! 海鮮を極めないと!」
ここの宿の魚料理はおいしかったけれど、少し海から離れている為、生の魚は出なかった。客に腹を壊されてはと、念の為、魚を炙って出しているのだそうだ。
となると、港町のラーセラにつけば、より新鮮な魚介類を食べられる筈!
私がそれらを想像して顔が緩むのをとめられない。
それを楽しみにホープトーチで頑張ったと言っても過言ではない!
「そのことなんですが」
ライが珍しく口を開いた。
いつもこういった話し合いでは、あまり口を出さないライ。
ライは基本、私が行くところにはついて行くというスタンスなのだ。
それもちょっと困るのだが、スヴァ曰く、まだ心が不安定なので、安定するまでは好きにさせたほうがいいだろうとのことである。
私よりも100倍以上長生きしているスヴァの言である。私はそれに従うのみだ。
そんなライが意見があるようである。
「なに?」
ラーセラの町で自由時間が欲しいとかかな? もちろん、してもらってよい!
町の散策はかかせない、旅の楽しみだからね!
「御使いアマノリアさまの導きは、ラーセラの町では特に出ていないとのことで、間違いないですか?」
国守さまの導き? ああ、課題のことか。導きってなんかすごく貴く感じる。
<お主はあやつを敬っている割に、言葉ではそれが感じられぬな>
私の足下で、スヴァが心話で突いてくる。
悪かったな。学がなくて。
「ティティさん?」
はっ! スヴァを相手にしてる場合じゃない。
「うん、そう。ホープトーチでの啓示も私の為であったしね。おそらく、この国での国守様の導きは終了だと思う」
ほら、私だって、国守さまをちゃんと敬ってるぞ!
こほん。国守さまは神の御使い様であり、本来は人間との接触はほとんどない。
それなのに、今回は大盤振る舞いで、私にバンバン接触して来た。前世でもこんなには、お会いできなかったと記憶している。
「グロシルバ王国を出てしまえば、管轄外になるだろうから、きっと接触もないと思う」
隣国には隣国の、御使い様が存在するのだ。
そして私はその御使い様になんとかお願いして、天の溶光を分けてもらわなくてはならない。
その為には!港町のラーセラで、英気を養う必要があるのだ!
<英気ならば、この宿で十分できたのではないか?>
スヴァが余計な突っ込みを入れてくる。
何をいう! 全然十分じゃないから! まだまだ足りないから!
<やれやれ。お主は自覚が足りぬ。子どもの身体の成長は早い。況してやお主とノアは、実家に居たよりも栄養があるものをたくさん摂取しているから、余計だ。つまりは身体と魂のバランスがますます崩れていくことになろう。ならば、天の溶光を集める為、寄り道することなく、隣国に抜ける事の出来るゴルデバの町に向かうべきではないのか?>
あ!スヴァがいやなフラグを立てやがった!
<お主、口が悪いぞ!>
うるさいよ!
いつもお読みいただきありがとうございます!
少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。
励みになります~。




