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第460話 ティティ、ひたすらに祈る

「ティティさん?!」

「ねえね?」

 いきなり泣き出したティティに、2人が声を上げる。

 どうして? どうして、そんな悲しい役割の生物がいるの!?

 どうして! どうして!

 しかし、あの子たちに助けられている人間に、文句を言う資格なんてない。

 ティティはのろのろと巨大な魔物に近づく。

「ティティさん!?」

 ライが慌ててとめようとするが、それを手で制す。

「大丈夫。この子たちは、私になでてほしいだけだから」

 スヴァが言うように、それがこのこたちの最後の望みなら、かなえてあげたい。

「ノアもおいで」

「ん!」

 そしてノアに、手袋を渡す。

「ワイス。手だけ、だせる?」

「うむ。長くはだめだぞ。濃い魔素に当てられてしまうからな」

 ノアの肩にのったワイスが許可を出してくれる。

「わかった。ノア、ちょっとだけだからな」

「わかった」

 ティティたちの意図が伝わったのか、魔物がそっとティティたちの手の届く範囲に、顔を寄せてくる。

「っ!」

 背後にいるライの緊張が、伝わってくる。

 ごめんね。心配させて。でも大丈夫。

 スヴァが保証してくれてるし。

「いい子だね」

 そっと手で触れた魔物の皮膚は少し硬い。

 そして荒い。顔なのに。

 素手でなでたら、手が傷ついてしまいそうだ。

 手袋があって本当よかった。思う存分なでてあげられる。

 魔物は気持ちよさそうに、目を細めた。

 しばらくすると、場所をあけるように、先頭の子が横にずれた。

 そして2匹目が前に出てくる。次は3匹目。

 ノアは最初の子だけなでて。後は見てるだけだ。

 ノア、悔しそうな顔してるなあ。

 にしてもなぜ、この子たちは、私になでてほしいのか。

 だまって見ていたスヴァが、口を開いた。

<おぬしの中にホープトーチと同じものを感じたのであろうよ。おぬしは御使いの愛し子だからな>

 自らを消滅させるかもしれない存在なのに?それに私にも神気混じってるの!?

<あるかどうかもわかぬほどだ。それにおぬしくらいの微量な気では、こやつらを消滅などさせられぬよ。だからこそ、そやつらに触れてやってほしかったのだ>

 自らを消滅させる光、けれども焦がれ、安堵をくれる光。

<ホープトーチの光は、こやつらに安らぎを与えてもくれるもの>

 それは消滅と引き換えに。

 と、そのとき、3匹の魔物は首を大きく上へと伸ばした。

 そして見つめる先は、ホープトーチがある方向。

「あっ!」

 と、次の瞬間。

 上空を横切る、聖なる光。

 その光があたった瞬間。

 大型の魔物は黒い粒となって、その場から消えた。


「わあああああん!」

 いきなり目の前にいる魔物たちが消えたことで、ノアが泣き出した。

「ノア!」

 簡易結界に入っているため、触れることができない。

 言葉で慰めるしかない。

「大丈夫! 大丈夫だよ! あの子たちは安らかになれるとこに、行っただけだから!」

「ひっく。ほんとう?」

 ノアが大粒の涙をたたえながら、こちらを見上げる。

「本当だよ!」

 本当だと思いたい。

 そうしている間も、黒い粒は聖なる光が包み込むように吸収していく。

<魔素回収完了だな。魔素は大いなる深源たる河に取り込まれ、浄化される>

 あの子たちの魂は?

 魂も一緒に、河につれていってもらえたんだよね?!

<さて、あやつらに魂があったかどうか>

 あったよ! あるに決まってる!

 ティティは、膝をついて祈る。

 あの子たちが安らかに河で過ごせるようにと。

 どうか、どうか! 神さま! 国守さま! 

 あの子たちは立派に役目を果たしました!

 どうか、深源たる河に、安らかに抱かれんことを!

 せつに、切に願います!

 ああ、人間ていうのは罪深い。

 彼らの犠牲の上に、我々は生かされている。

 神の寵愛を受けながら。

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