第457話 ティティ、壁を見る
カリアからもらった手袋をはめて、さあ採取だって時に、また一つの問題が。
「ノアもやりたい!」
「だーめ。ノアは結界の中にいないと、具合が悪くなっちゃうでしょー?」
「うー」
それでも、いやいやと首を振る、ノア。
かわいいけども。許可する訳にはいかない。
ワイスを見ても、さすがに薬草採取できるようにはできないというように、首を振る。
だよね。そんなに便利な簡易結界なんてないよね。
「結界を移動できるだけでもすごいことなんだよ? ワイスに無理を言ってはだめだよ?」
「うー」
ノアが、しょんぼりする。
「だろう! 我が輩は、結構すごいのだよ!」
反対に、ノアの肩でえっへんと胸を張るワイス。褒め言葉には即座に反応するね、この亀は。
でもな、あまりのけぞると、ころりと後ろに落ちるぞ。
ただでさえ、甲羅が重いだろうに。
<甲羅は 聖力の塊だからな。重さは感じないだろう>
なにそれ。そうなの?
じゃあ、精霊魔法使いすぎたら、甲羅なくなっちゃうの?!
てか、またよく知ってるな、スヴァは。
なにげに胸を張る、スヴァ。おまえもか。
しかしこの頃、感情を表に出すようになったよね。
よきよき。
「ねえね~」
あ~、ほかをかまってたら、ノアの目が、洪水になってきてしまったね。
「ごめんごめん。そうだ。今はできないけども、次の機会にうまく採れるように、ねえねのそばで、よく見ておくってのはどう?」
「ん~。ん!」
少し考えたのち、ノアは納得してくれた。
はあ、やれやれだね。
「じゃあ、ライ。カリアからもらった手袋と袋を使って、採取をお願い」
「わかりました。しかし、私には、どれが貴重な薬草や魔草かは判断つきかねます」
「だよね」
私もだよ!
そうなのだ。魔王領の奥の奥。
知らない薬草や魔草がわんさかとある。
<重魔素の影響で、変形して亜種になってるものあるだろうしな>
スヴァが、ざっとあたりを見回しながら呟く。
そうなんだあ。
雑草でさえ、売れそうなほどの魔草になってるらしい。
魔草になった雑草って、何かに使えるのかな?
後で、スヴァに聞いてみるか。
にしても、スヴァすっげえ知識だな。
一つ一つ、スヴァに聞きながらってのもありだけど、採取してたら時間がかかってしまう。
私たちは、薬草や魔草を取りにきたのではないのだ。
あくまで目的はホープトーチにある天の溶光なのだ。
だから。
「うん。ライ、その袋に片っ端から詰めるだけ、詰めちゃってくれる? 後で仕分けをしよう」
「わかりました」
うん。それしかないよね。
採らないで、前に進むのも一つ?
私の中ではその選択肢はない!
「では、はじめ!」
そうして、私とノアとワイスが一組、スヴァは周りを一応警戒、ライは1人行動で警戒しつつ、採取に精を出した。
そうして、あーそろそろ袋も満杯だし、腰も痛くなってきたかなあって、思った頃。
「いっぱい、採れた採れた♪」
夢中になって薬草や魔草をとっていたティティがふっと顔をあげると、なぜか前に壁ができていた。
「へ? なぜに? なぜに壁?」
そして、そのまま壁がどこまであるのかと確かめるつもりはなかったが、首をあげていくと、大きな2つの目と目が合った。
「ぎゃあああああああああ!」
すっげええ、壁の正体! でけえ魔物だよ!!
夢中になってると、周りが見えなくなることってありますよね。
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