第452話 ティティ、ライの可能性を知る
「ニーネ! ドンドン進んでちょーだーい!」
前方へと大きく手を振り、ティティは、テルミニーネに指示を出す。
<あーい>
かわいらしい声で返事をしたニーネが、ゆったりと進む。
ゆったりと言っても、ニーネのゆったりだから、十分な早さはある。
「思ったよりも、ゆれないね~」
<それは後ろの小僧が、しっかりおぬしの身体を固定してくれているからであろう>
そっか。私の前、一番先頭にちょこりとスヴァが乗り、次に私、すぐ後ろにライがニーネにまたがっている。
後ろを振り返れば、ノアとワイスは一番後ろで、簡易結界の丸い球体に入ったまま、外を興味深げにきょろりと見ている。
「あの結界って、とりもちがついてるのかなあ」
私のつぶやきに、ライが律儀に答える。
「そうかもしれませんね。ニーネさんの背中に、ぴったりくっついていますから」
そうなのだ。どういう仕組みかは知らないが、危なげもなく、ニーネの背中に丸い結界がくっついていて、一番安全に運ばれている。
「ティティさん、気分は悪くないですか?」
「うん。大丈夫。ライは?」
「問題ないです」
今進んでいるのは、魔王領の結構デープな場所だ。
生半可な人間であれば、気分が悪くなるだけではすまないほどの、濃厚な魔素が空気中に含まれているそうだ。
そうだっていうのは、私は自覚がないからだ。なんかねっとりするかなあぐらいだ。
<魔素だって、今のおぬしであれば、視られるだろう>
まあね。でも、いいよ。視たくないよ。
視てよいことなんてないよ?
逆に目で視たことで、気持ち悪くなっちゃうかもだよ?
<大丈夫だろう。感覚の鈍さが、プラスに働くだろうよ>
なんだよ! もし気持ち悪くならなくてもだよ? それはきっと、国守さまの愛し子としての加護だよ?
<そういうことにしておいてやろう>
うっ。これ以上はやぶ蛇になりそうなので、スルーだ。
ちらりと見上げたライも、平気そうだ。
すげえな。
<騎士として鍛えていたのもあるが、やはり王家の血を引いているのもある。それに>
なに?
<確かこやつは、魔法は使えなかったな>
うん。そうだけど。なにか関係があるの。
<魔法は使えぬが、我を殺すことができる剣を扱えた。すなわちこやつはおぬしと同じで、 聖素を扱うことができる可能性がある>
「ええ! まじ!」
「ティティさん、どうかしましたか?」
「ううん! なんでもないよ、ライ!、えっと、そう、スヴァがおならしただけ」
口を押さえて、ごまかす。
<おい! 我は放屁などしておらぬぞ!>
ごめんごめん。とっさに口からでちゃった。
<まったく>
スヴァ、すっげえ不機嫌。
本当、ごめんて。だって、スヴァが、爆弾落とすからさ。
しっかし、もしそうなら、ライには朗報かもな。魔法が使えないことに落胆していたからな。
<人間とはおかしなものよ。魔法を使えば命を縮めるというのに、使いたいと願うのだな>
う、確かに。でも、魔法ってなんかすげえから、損得ぬきで、使いたいって思っちまうもんなんじゃないかなあ。
実際、ヒースやブリアが使ってるとこみると、格好いいもんな。
<格好なぞ、どうでもよい>
はい、元魔王さまは、ばっさりだ。
まあ、魔素や魔力、その大本となる人間の欲の処理で、魔王や魔族は大迷惑だもんな。
いかん、いかん。思考が暗くなってしまう。
考えてもしょうがないものは、頭からポーンと追い出す。
にしても、ライにとって、すごいいい情報じゃね?
すぐにライに教えてやったほうが、いいんじゃね?
<となると、 聖素のことも話す必要があるな。それに聖女、いや男とは聖人になりえる可能性がある。癒やしの力だったか使えるようになれば、危険度は増す。まあ、騎士だったこやつなら、問題なかろうが。だが、多勢でこられたら、どうか>
なんか、めんどい感じになりそうだね。
今は必要なさそうだし、もう少し後でいっか。
ティティ、面倒はお断りって感じですね。
いつもお読みいただき、ありがとうございますv
もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!




