第450話 ティティ、目標確認!
「いないよ! ニーネがいない! どこに行った?!」
腕が寂しいことに気がつかないなんて! 真っ先に気づいてもおかしくないのに!
<あるじさま~。ニーネはここよ~>
「わっ!」
その声に振り向くと、巨大なニーネの顔がこちらをにょりんと見つめていた。
<ここにきたら、おおきくなっちゃったあ>
私、この存在感になぜに気づかないか?
やはり鈍感なのか?
<いや、テルミニーネの存在がお主には空気のようになじんでいるからだろう>
そっか。そうだよね。そういうことにしておこう!
気を取り直してっと、まずは体調確認だよね。
「ニーネ。身体は大丈夫なの?」
<うん。もんだいないよー。なんかぱーんって、ちからがでちゃったカンジー>
<久々の濃い魔素に当てられたのだろう。問題ない>
スヴァがニーネの状況を解説してくれた。
そっか。身体がびっくりしちゃっただけか。
スヴァは通常運転だね。
<我がこの程度の魔素に中てられる筈がなかろう>
はい、すいません。元魔王さまですもんね。失言でした。
とりあえず、みんな問題ないね。
国守さまはというと、私たちをここに送ってくれたけど、気配はまったくない。
後はよしなにってことかな。
まあ、ここまで連れてきてくれたんだから、大サービスかな。
「にしても、昼間なのに、薄暗いねえ。さすが魔王領」
ホープトーチがあるであろう方向、魔王領を眺めるが、先があまり見えない。
「魔素が光を遮断してるんでしょう」
ライが解説してくれる。
「そっか。にしても、そのホープトーチっていうの? ここから見えないんだけど。本当に近くにあるの?」
国守さまが間違える筈ないから、近くにあるんだろうけどさ。
<ホープトーチはもっと奥にある。ここは魔王領と人間の領との境目だ>
「ああ、さすがにホープトーチのすぐそばには転移させてくれなかったか」
そこまでは国守さま甘くないか。
<御使いは、これを見せてどうする気なのか>
何? よく聞こえなかったよ。
ぼそりとした小さなスヴァのつぶやきを、ティティは珍しく聞き逃した。
<たいしたことではない。気にするな>
そう。ならいいけど。
「にしても、肝心のホープトーチ見えないと、どこに進めばいいかわからないなあ。まあ、魔王領に入るしかないんだけどさ。やっぱ、目指すものが見えたほうがよいよね」
ブライトは、結構遠くからでもわかるって言ってたけど。
<逆に近いから見えぬのだ>
そうなの? 確かにそうかも。ここらへん、背の高い木が、ぎっちりみったし、生えてるもんね。
<テルミニーネの頭にのせてもらえ>
なるほど! それはいいかんがえかも!
「ニーネ! 私を頭にのせて、背伸びをしてくれる?」
<あーい>
よいこのお返事をしたニーネは、私を頭にのせると、ずもうっと鎌首をもたげた。
「うおおおおお! たけー!!」
<言葉使い、注意せよ>
いつのまにか、脇にちゃっかり乗っていたスヴァが、顔をしかめている。
なんだよー。今それどころじゃないだろう~。
しっかりとニーネの頭にへばりついて、森の奥を見つめる。
「ん~、見えるかな。あ、あれか?!」
森の先の先。かすかに光が見える。
白くて小さな光だ。ただ、どこかこの薄暗い曇天の空の下、清らかに力強く光る。
決して消える事ない。希望の灯火。
「へえ。あれかあ。建物はうっするらとしか見えないなあ」
<おぬしは、目が悪いの>
魔物と一緒にするなよ! いや、元魔王様と一緒にするなよ!
まあいい、私は大人だ。スルーしてやるよ。
「しかし、結構距離あるなあ。歩いて行くと時間かかりそうだな」
<歩いて行くことはあるまい>
「へ?」
どういうこと?
ここには馬車も馬さえもないよ。ほかに手段があるのか?
あ、ライの馬、おいてきちゃったよ。人魚さんたち、ちゃんとお世話してくれるかしら?
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