第44話 スヴァとの部屋でのやり取りは癒し
短めです
「ふう。今日も頑張ったねえ」
ティティは宿の自室に入るとリュックを机の脇に置いて、部屋に一つしかない椅子に腰かける。
本当はベッドにダイブしたいが、スヴァがうるさいので、我慢している。
ハンクのおっさんに教えてもらったピースの屋台は、道行く冒険者風のお姉さんに聞いて、すぐに見つかった。
意外と味がいいと評判の店だった。
場所は少し奥まったところにあり行った時には、それほど混みあっていなかった。
早速ハンクの名を出して、一角兎の肉を焼いてもらう交渉を開始。
ピースはぴょろりとしたジャガイモ顔の20代の男で、二つ返事で引き受けてくれた。肉を焼くのを待つ間に、ピースが売っているものも見せてもらった。
今日ピースの屋台に売ってたものは、タヌークと、ピーリクの肉の串焼きだ。タヌークは一角兎の二回りほど大きい中型の間抜けな顔つきをしている魔物だ。ピーリクはリスに似ていて、すばしっこい魔物である。
どちらも美味しいそうだったので、20本ずつ購入。殺菌作用のある大きな葉っぱに包んでくれた。大量に買ったからか、兎の焼き代はおまけしてくれた。買いすぎかとも思うが、ティティには亜空間があるので、そこに入れておけば腐らないので、大量に買っても大丈夫なのだ。
「それにしても、牛系の魔物肉はなかったな」
ピースにきいたところ、このところ街の周辺では、姿を見せなくなったということ。
「雑草もすくなかったからなあ」
餌をもとめて、ゴルデバから離れたのかもしれない。
ピースの屋台でたくさんの食料も買い込めたので、辺りも暗くなって来たし、宿へと直帰した。やれやれと今やっと一息ついたところである。
「さて、まずは風呂に入ってから、夕食を食べて、今日採って来たものを分類するかな」
供えつけられる明かりは部屋代に含まれているので、燃料が無くなるまでは、作業ができる。
採集したものを入れる袋も作れそうだ。
「よーし! 少しゆっくりと風呂に入って、疲れをとって、スヴァの初獲物をお祝いだ!」
ティティは気合を入れて、立ち上がった。
「スヴァ、ほらこい」
「1人で入りたい」
スヴァとのいつものやり取りである。どうも一緒に風呂に入るのがご不満らしい。
「無理だろって。それに、お湯がもったいないだろうが」
「む、わかった」
まったく風呂に入れるだけでも贅沢なのに、困った魔王さまである。
そのくせ、身体を洗ってやると気持ちよさそうな顔をするんだから、たまらない。
その顔がティティの癒しになっているのはスヴァには内緒である。




