第447話 ティティ、飛ばされる
少し長めです。
ううっ。
いくら諭されても、心配が一段落しないよう。
諦めきれずに、ノアにそろっとブライトと一緒に行ってくれないかと、打診してみたところ。
「やっ!!!!」
バッサリと、拒否られてしまった。
絶対一緒に行くからっていうオーラが出しまくりである。
そのうえ。
ワイスが。
「我が輩が一緒なのだ。それほど心配せずともよい」
との後押しもあって、ノアはやっぱり一緒に行くことになってしまった。
ワイス、なにその自信は。
「ワイスって精霊でしょ?! そんな魔素の濃いとこ行って大丈夫なの?!」
「確かに魔素に中てられ、弱るものもいるが、我が輩は大丈夫じゃ。この堅い殻があるからな。いざとなれば、身体を引っ込めればよいだけよ」
「その殻がみそみたいだけど、いや、いざとなって自分だけ殻にこもられても! ノアはどうするのよ!」
「大丈夫じゃ! ノアと一緒にこもれるからの」
「えっ。その殻にノアも入れるの?! 無理っしょ!」
「面倒なやつじゃの。魔王領に行ったら、わかるから我が輩を信用せよ! 我が輩は御使いさまに選ばれし者ぞ!」
「うっ! そうだよね」
それを言われてしまうと、黙るしかない。
かくてホープトーチに向かうメンバーは、ブライトを除くすべての者で確定してしまった。
<最初から決まっておる。ぐずぐず言ってるのはお主だけぞ>
スヴァ、厳しい!
皆に言われても、心配は尽きないけど、割り切らなきゃね。
そんながっくりと肩を落としたティティの耳に、くすくすと笑う声が届いた。
目を向けると、カリアが口に手を当てていた。
ブライトとの打ち合わせは、終わったらしい。
「貴方は自分のことには頓着しないのに、弟のことになると心を砕くのね」
「姉弟ってそういうものじゃないですか?」
「さあ。私たちは貴方たちの言う、一人っ子が多いから」
そっか。卵はきっと多く産み落とされるんだろうけど、そこから人魚として孵化するのは1人、多くて2人くらいなのかもしれない。
となると、姉妹の情ってのは、わからないのも頷けるかな?
「でもまあ、私たちも人数が少ないから、仲間を大切にする気持ちはわかるわ」
「そうですよね。家族みたいなものですよね」
<だまされるな。人魚はいざとなったら、自分が最優先だ>
それは人間も一緒では?
<いや、こやつらは自分が助かる為には、仲間も売るぞ>
「ええっ!?」
「あら、そこの黒いお方から、何か悪口を聞いたのかしら? その方のお話は話半分できいておいてくれてよくてよ?」
ふふふと笑うカリア。
うーん。なんかスヴァの言ったことは真実なのかも。
でも、そういった場面にならなければ、きっと仲間を大事にするはず。
<おぬしは甘いの。人魚が仲間を大事にするのは種の保存、本能からだ。人魚らもまた神の意向が働いているからな>
なるほど、人魚にも働きを求められるいると。
実際に指示があるのか。はたまた、本能にすり込まれているのか。
それは何かはわからないが。
はあ。生きとし生けるものはみな役割があるのか。
<いや、人間には一部の者しか、ないのではないか?>
なんですと?
<でなければ、これほど、この世界に害をまきちらす存在を許すはずもない>
うう。返すことばもありません。
さて、心配や未練は尽きないけれど。美人さんと離れるはいつでもつらいからね!
でも、そろそろ出発しなきゃね。
挨拶はきちんとしておこう。
「カリア、短い間だったけど、会えてよかったよ!」
ありきたりな言葉だけど、気持ちはてんこもりのせておく。
だって、本当だから!
美人さんに会うのは、至上の喜び!
「うふふ。心のこもった気持ちありがとう。ティティの純粋な気持ちが心地がいいわ」
あー。そっか。きっと他人からの賛歌の言葉なんて、これだけの妖艶な美人さんだ、それこそたらふくきいてきただろう。けれど、それは下心ありありの男どものゲスな賞賛が多かったのかも。
元男子としては、そわそわしちゃう。
今の私は女子だからね! 下心はないよ!
だから、きっとカリアもにこにこなんだね。
これはちょこっと、スルー発動だね。
「そんなティティに、これをあげるわ」
近づいてきたカリアの手には、いつの間にか小ぶりな袋が一つ。
気になっていたんだけど、スルーしてたんだよね。
てか、ここはまだ国守さまが連れてきた空間だ。どこから出した?
カリアも空間魔法使えるのか?
はっ! お礼! お礼! プレゼントもらったんだから、お礼言わないと!
「ありがとう! これは?」
私が持つと、両腕で抱えるほどの大きさだ。
「ふふ。内緒。困った時にそれを開けてみて。きっと役立つから」
内緒と言って、口に人差し指を当てたカリア、いろっぽーい。
すげー、癒やされた。
「ティティも気をつけてね、特に、メ・ン・タ・ルに」
なに、最後の一言!
「カリア、それって」
と、訪ねようとした時、
「準備はできたようじゃの。待ちくたびれたぞ」
との台詞とともに、沈黙していた国守さまが口を開いた。
私がぐだぐだしてる間、待っててくれたんだなあ。
優しい。
<いや、面倒だからと、我や小僧たちにまかせたのだろうよ>
スヴァがずばっとっ辛口なことを言う。
いや、そんな説明いらないから。
優しい国守さまと思わせてくれよう。
「さて、さくっとお主らを送ったら、妾は森に帰る。我が愛し子よ。天の溶光を手に入れた後は、報告は不要。そのまま次の旅に向かうがよい。先にお主たちが話し合っていた通りにな」
私とスヴァのやりとりも聞こえている筈なのに、国守さまはそれには触れずに、さくさくと進める。
スヴァの読み通りか。でも、話が進まないもんね。私もスルーッと。
「よいのですか?」
「うむ。己の為に、先へと進め」
と言うことは、この国での新たな課題はないってことかな。よかった。
私の命の綱の、天の溶光に集中していいってことか。
<ふん。本当にそうか、わからぬな>
スヴァが、ぼそりと漏らす。
ちょっと。国守さまの優しさにケチをつけないでよ。
私はありがたく、気持ちを頂くよ。
「わかりました。ありがとうございます!」
お礼、大事! そしてお礼はノープライスだ!
「では行くぞ」
「えっ! もうですか?」
「妾は忙しいのじゃ。ではな」
その声とともに、ふっと身体が浮くのを感じた。
あわわわわ! 国守さま急すぎです!
ノア! ノアはどこ!
きょろりと見渡せば、ブライトの驚いた顔が見える。
それを最後に目の前が真っ白になった。
うわあああ。
心の準備くらいさせてよー!!
ノア、ワイスは大丈夫かあ! ライは!! スヴァはまあ大丈夫だろうけど!!
はい。やっと、ホープトーチに向けて出発しました。
長かった(笑)
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