第441話 ティティ、ひゃあってして、ひれふす
<御使いに味方するのは甚だ遺憾だが、今回はそうだな>
「うわあああ! 国守さま、すいませんでした! 私の考えが足りませんでしたああ!」
ティティはその場でひれ伏した。
自身が悪いと思ったなら、素直に謝る。これ重要。
「わかってくれたか? ティティルナよ。我が愛し子よ。我がそなたの誠意と努力に報いなかったことがあるか?」
うーん。どうだったかな。
あったような、なかったような。
<そこはないと言っておけ。たとえ、うそでもな>
だめだめ、スヴァ。うそは、だめだよ。だって、国守さまはいっぱつで見破っちゃうでしょうが。
今だって、私の心の中を見て、お話進めてるんだよ?
うそはだめっしょ。
「ほほほ。おぬしはよい意味でも悪い意味でも正直者ぞ。そしてもの覚えが今ひとつなのは、かわらぬの」
わあ、国守さま、全然怒ってらっしゃらない。寛大だなあ。
<物覚えが今ひとつか? いや、2つ3つではないか?>
はいそこ! うるさいよ。
「ほほ。おぬしといつまでも、話をしていたいが、妾も忙しい身である。そろそろ話をすすめるぞ?」
「はい! お願いします!」
そ、そうだよな! てか、私、国守さまに文句を言ってた!?
うわあ。まじいよ。私ちょっと気がゆるゆるだった!
国守さまは、神の御使いさま。節度と礼儀をちゃんとしないと。
ティティはぴっと背筋を伸ばした。
<いつまで、その態度が続くやら。どうせ、ころっと今の心持ちなんて忘れるだろう>
スヴァもだまって!
「ほほほ。ほんにおぬしは愉快じゃの」
きっと私とスヴァのやりとりを、言っているんだろう。
けど、ここには私とスヴァのほかに、ブライトやライもいるからな。
スヴァが人間と意思の疎通ができるとは言ってないしなあ。
スヴァのことは極力普通の魔物だと思ってもらいたいし。
主人である私以外と意思の疎通ができる魔物。
それは魔物上級、あるいは魔族と捉えられる可能性がある。
それは避けたい。
スヴァは危険がないと思ってもらわねば。
その事情を国守さまはお見通しなのだろう。
スヴァとのやりとりは心の中にとどめておいてくれるようだ。
<ふん。御使いもそのほうが都合がよいのだろうて>
もう。スヴァ、そんなにひねくれた見方しないの!
「さて、話を進めるぞ。妾もそなたが無事に人魚たちの里にたどり着き、きちんと交渉できたのは評価しておる。したがって、次の目的地である妾の泉のある近くまで、妾が送ってやろう」
「え! 本当ですか!」
「うむ。妾はうそはつかぬ」
<肝心なことを、言わぬ場合があるがな>
スヴァの忠言はスルーだ!
だって、現地まで送ってくれるんだよ?
私たちだけでそこまで行くの大変かもしれないし、第一、何より費用が節約できるのがいいじゃないか!
すごいサービスじゃない!?
さらに考えれば、移動の時間を短縮できて、そのうえ危険も回避できるんだよ!?
多少の問題があったとしても、些細なことだよ!
<その多少の問題がのちに大事になるやもしれぬぞ>
いいの! 目の前の楽な手段に私はのるぞ!
後のことは、後で!考えるのだ。
<おぬしは>
スヴァが処置なしと首を振っている。
「それで。泉はどこにあるのですか?」
早く! 早く! 教えてほしいよ!
「目的の場所はホープトーチ。そこに妾の泉はある」
「ホープトーチ!」
って、どこよ?
すっと出てこないなあ。
メジャーなところじゃないのかも。
私が知らないだけか?
ジオルが行ったことのない場所なのかも。
「そこに行けば、おぬしの求めているものがある」
泉の水が天の溶光だもんね! そうですよね!
よっしゃ!
<私はすぐに思い出せないけど、スヴァはホープトーチってところ知ってるか?>
きっと、物知りスヴァなら知ってるに違いない!
だから、珍しく心話で、話しかけてみるよ!
早くどういったところか知りたいからな!
わくわく顔を、隣にお座りするスヴァに向ける。
行く理由は何にせよ、行ったことのないとこに行くのは、ちょっと楽しみだよな。
そう思ったのに、スヴァはなぜか苦々しげな顔をしてる。
なぜに?
<ホープトーチか>
スヴァのこんな顔珍しい。
魔物の顔だから、そんなに表情は変わらないが、雰囲気でわかる。
なんだ? スヴァはやはり知ってる場所らしい。
でもそんな顔するってことは、そんな大変なところなの?
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