第438話 ティティ、やはり、くにもりさまだと思う
「さあ、カリア」
国守さまが、促す。
国守さまに逆らうことはできないのだろう。
「こちらに」
そう告げたカリアの手の平に、いつの間にか2つの玉があった。
いつ出したんだ!?
1つは金、もう1つは銀色だ。
「はあ。すごい綺麗」
「ちれー」
倉庫に積んであったものとは、段違いの輝きである。
「これは人魚として生まれたものの卵のカラよ。人魚として孵化するのは、本当にまれなの。その卵のうち、特に力のある人魚が生まれたカラが、この2つ」
「うわ。それオークションに出したら、すごい値が付きそうですね」
ブライトが、顔を少し上げた状態で呟く。
「いや、これは売らないよ?」
「そうなの!? どうして!?」
「そっか。ブライトとライには、まだ話してなかったね」
ここに来た本当の目的。
うーん。どこまで話そう。
国守さまの前だしなあ。
長々と話してられないし、スヴァのことは誤魔化しつつ、かいつまんで話すか。
「実はね、今世の私、ノアと同様に虚弱に生まれてしまって、このままだと長く生きられないんだよね。あはは」
かるーく話そうと思ってたのに、それを聞いた途端、ブライトとライが真顔になる。
そして、ノアがティティの袖をひっぱる。
「ねえね? しんじゃうの?」
ノアの目から涙が、溢れんばかりになっている。
「いや? すぐには死なないよ?」
「すぐじゃないけど、しんじゃう? ふえ! ふえええええん!」
ノア、何気に頭の回転が速いな!
そして自分の時は泣かなかったのに、なぜに今は泣く!?
それにこの話、ノア、初めてじゃないでしょ!?
「大丈夫! そうならない為に、国守さまが力を貸してくれるし、その為に、人魚の卵のカラ、もらい受けに来たんだから!」
「ティティちゃん、それは、どういうこと?」
ブライトがずいっと迫ってきて、怖い。
「今、説明するから! 少し離れて! えっとね、私の魂はどうやらエネルギー不足のようで、それを補充する為に、今からもらう人魚の卵のカラを加工して、その入れ物に、御使いさまからの慈悲、天の溶光って言う、聖エネルギーを集めれば、長生きできるらしいの」
ふう! なんとか一気に、うまく説明できたね!
「集めるって、アマノリアさまが一気にその溶光っていうの? 与えてくださる事はできないってこと?」
「少し違う。天の溶光はね、なんというか、一人の御使い様だけのものじゃ、ダメらしいんだよね。他の御使いさまからも、集めて回らなくてはならないらしくって」
「えっ! 御使いさまは、基本、国におひとりさましか、いらっしゃらないですよね? てことは、ティティちゃん、これからの旅は、他の国まで足を伸ばすってこと?」
「そうなるね。ブライトはどうする? 一緒に来る?」
まさか、他国まで行くとは思ってなかったのだろう、ブライトの顔色が変わった。
悪いといえば、ライアンの顔色も悪い。
「ライ? どうした? やっぱ、他国まで、旅するのは無理かな? 無理することないからね」
言ってて気づいたよ。ライアンは公爵家の出身だもんね。他国にむやみに出れないのかも。
それに国内を旅するのと、国外を旅するのとは、困難さが違う。
私だって、不安は大いにある。
でも、そうしないと生き残れないなら、私に否やはない。
「いえ、ティティさんが国外に行かれるなら、私もお供します」
ライアンは、ティティの言葉に、即座に首を振る。
「そう? すごい顔色悪いけど、無理してない?」
「いえ。ただ、ティティさんの魂が不安定なのは、前世の死に方に関係があるのかと」
ビンゴ!
けど、ライアンには関係ないとこでだけどね。
「あー。それはわからないけど、気にしなくていいからな? だって、それを言ったら、普通と違う死に方した人は、全部来世では長生きできないって、理屈になっちゃうからね。そんなことないでしょ?」
苦し紛れに、国守さまの脇に控えているゴールデンシープに、顔を向けてみる。
いつの間に来たのか? さっきまでいなかったよね? でも、いてくれてよかった!
ゴールデンシープは私の問いに、大きく頷いてくれた。
「ほら、国守さまの僕である、ゴールデンシープが、同意してくれてるから、たまたまって思っておけばいいんじゃない?」
「そう、ですか」
あ、少し顔色が戻ったね。
うーん。こうなると、スヴァのこと、余計に話しにくいね。
ライアンの心が、もう少し柔らかくなったらだね、話をするのは。
まったく繊細なんだからっ!
ティティは苦手なものは後回し、そして説明ベタです。
さて、残り、後1話で、ディッセントヒル編終了となります。




