第435話 ティティ、ブライトを注視する
「いやあ。ここが人魚の村ですかあ」
カリアに転移されてきた途端、事情が瞬時に飲み込んだのか、ブライトが目を輝かせて、辺りをきょろきょろと見回す。
あ、金の計算、し始めてるな。
頭の回転がいいのも、困りものだよ。
これは最初に釘を刺しておかないとまずいな。
「ブライト、勝手に動き回らないでね。それと人魚たちに危害を加えたら、国守さまの愛し子である私が許さないからね」
くう。自分で愛し子っていうの、超恥ずかしい。
だけど、表情は崩さないぞ。
人魚たちの安全が、かかってるからね。
ブライトを見上げながら、じっと我慢する。
ちなみに今いる場所は、倉庫の外である。
いきなり、人魚の卵のカラを、見せる訳にはいかないからね。
「わかりました」
ブライトってば、胡散臭い笑顔浮かべて返事をしても、全然説得力ないぞ。
うまくやればいいだろうくらいに、思ってるような気がする。
やっぱ、人魚の卵のカラの販売の話を詰めた後に、誓約してもらうのが吉だな。
さて、もう一人はと。
転移した瞬間は、警戒全開だったが、私の様子を見て、そして、その横に立つカリアを見て、察したらしい。
ブライトとのやり取りを、静かに眺めていたよ。
「また心配かけたかな。ライもここの事は秘密ね」
「はい。貴女に誓います」
うーん。こっちはこっちで重いよ。
100パー服従しますって、感じだ。
ちなみに従魔たち、ワイスとニーネは、マイペースでお昼寝中でした。
気配で察してるのかもしれないね。
うーん。2匹とも大物である。
ワイスはノアのリュックに、ニーネは私の肩掛けカバンに回収した後、ブライトたちに倉庫の中を見てもらってから、カリアの家に帰って、互いの紹介の後、改めて話をした。
「わかりました。兄さんに連絡して、販売計画を立ててもらいましょう。おまかせください」
力強い言葉だけど、ブライト、なぜそんなに悔しそうなの?
お家の商会が儲かるんだから、いいことだよね?
「人魚の卵のカラや、結晶化した卵の効能は、どういったものでしょうか?」
頭を一つ振って切り替えたのか、早速質問を始めるブライト。
「最初に言っておくけど、巷に出回っている噂のように、人魚の肉に不死の効能はないわよ。況してや、卵のカラにもね」
「そうですか」
ブライトのがっかり感が、すごい。
「では人魚の肉には、不老の効能はあるんですか?」
「ぶふっ!」
厚顔無恥のブライトが、目を見開くほどの質問を、ライアンが落とした。
ライアンたまに考えなしのところがあるから、こわいなー。
ただ、私も気になってた。不死には、なりたくないけどね。
生まれ変わるから、人間、おもしろいんじゃないかっ。
でも、死ぬ時まで年取らないのは、ちょっといいかなって思う。
<お主はその幼い姿のままのほうがよいのか。珍妙な>
ブライトとライアンがいるからか、お口チャックで、心話に切り替えてくるスヴァ。
違うよ!
不老になるなら、もう少し育ってからに決まってるだろ!
「ないわよ」
内側でやりとりしている間に、カリアが怒りもせずに、あっさり答える。
「ないんですか?」
思わず、オウム返しに、聞き返してしまう。
「ないわよ。不老や不死みたいな、そんな神の領分に踏み込む身体、してないから」
「あ、なるほど、そうですよねー」
そう言われると、納得。
ブライトも、納得したように、頷いている。
これで、人魚の肉を狙う気持ちがあったかもだけど、きっぱり諦めてくれただろう。
<不老不死か。人間の夢の1つか。我は一刻も、早く死を望んでいたがな>
あー。元魔王様は生きているのが、苦しみの一部だったからな。
<スヴァ、それは前世の話だろ? 今世では、なるべく長生きして、楽しく生きような>
<うむ>
その為に、こうして人魚の卵のカラを求めて、ここに来てるんだからな。
そこんとこ、忘れるなよな。
スヴァ、楽しく生きてほしいですね。
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