第434話 ティティ、先が見えてきてほっとする
「わかりました! 貴女たち人魚さんの安全を確保しつつ、人魚さんの卵のカラの販売をしましょう!」
「そんなに簡単に、引き受けていいのか?」
スヴァがティティを見上げて、尋ねる。
「大丈夫でしょ。私たちの旅の仲間に、心強い商人がいるじゃないの!」
「だが、これらがどのような効能や効果があるのか、お主は知らぬだろう。引き受けたはいいが、ろくな価値がなかったらどうする」
スヴァもブライトを思ったようだが、それでも、更に懸念を伝えてくる。
「そっか。私、すっかり人魚の素材って、何でも高く売れると思ってたよ」
そうじゃない場合も、あるのかな?
引き受けたはいいが、大した額にならなかったなんてのもありか。
やはりもっと細かく聞いてから、引き受けたほうがよかったのか。
でも、断るって選択肢、私たちになくない?
ほら、人魚の卵のカラをもらわなくちゃならないんだから。
あ、売ってもらえばいいのか!
とすると、安いほうがいいのか?
ぐるぐると考えていたティティに、カリアが情報をくれた。
「その点なら心配ないわよ。例えば、これ」
素材の山から一つ取りあげたのは、小さな綺麗な真ん丸なもの。
「これなんか、そのままアクセサリーの素材として使ったら、結構売れるし、粉にしておしろいに混ぜれば、肌が活性化されて皺が無くなって、お肌がぴちぴちになるわよ?」
「ええ!? それはアクセサリーに使うより、美容関連で、使ったほうがいいのでは?!」
そのほうが高く売れそう! 特にお貴族様の女性に!
「そうね。それに孵化しなかったもので、結構大きな卵、薬としても効果は抜群よ?」
「たとえばどのような?」
聞くのが恐いような。
「そうね、ものによっては欠損を治したり、大病の薬としても使えるかも」
「うわあ!! 結構やばい効果ばかりなんですけど! スヴァ! 何も心配なかったみたいだよ!」
「うむ」
「ふふ。でもね、そこまでのものは、滅多にないわ。ほとんどは、ポーションの効果を、多少底上げするくらいのものがほとんどね」
「それだけでも、すげーすっ。これは売る時には、十分注意しないと!」
「怖気づいちゃった?」
カリアが、少し意地が悪そうな顔をする。
「いいえ! 目一杯、協力させてもらいます! てか、私の仲間が、主体で、売る算段するんですけどね」
「仲間って、丘で待ってる人かしら?」
「はい、ブライトと言って、軽そうな感じの男のほうです」
ブライトの紹介が、我ながらひどいな。でも、的を得ているだろう。
「あー。あの人ね。商人ぽいわね。でも、本当に信用できるの? 卵や卵のカラだけでなく、私たちも素材として売られたら、本末転倒よ?」
「大丈夫です。彼は信頼のおける商人です。私が頼めば秘密は守ってくれますし、人魚に手出し無用との言いつけも守ってくれるでしょう」
「本当?」
「ええ。国守さまの名に誓ってもらいますから」
「それは信用しているといえるのか?」
スヴァが、鋭い突っ込みを入れて来る。
だが、私は重ねて言うぞ。
「言えるでしょう?」
「疑問形か」
ふふ。絶対はなーい、からね。
「国守様の名に誓ってもらっても、特に制約はない。普通ならばね。でも、ブライトは私が国守さまの愛し子だと知っている。それが、きっと枷になる筈」
「なるほどね」
カリアが、納得したように頷いた。
「ええ。できれば、その誓いの時に、国守さまか、僕のシープのどちらかがちらりとなんかやってくれると、より誓約が深まるですが、それは望みすぎかもしれませんね」
「そこまで考えてくれてるなら、彼を中に入れてあげてもいいかしら」
カリアが、納得したように頷く。
「あ、できれば、ライ、もう一人の男と、従魔もお願いします」
ライアン、従魔がいるとはいえ、ボッチで取り残したら、かわいそうだからさ。
さあ、これで人魚さんたちの困りごとは、解決したってことでいいのかな?
人魚の卵のカラをくれるかな?
できれば、極上のものが欲しいなあ。てか、一番きれいなのが、欲しい!!
あ、綺麗なのじゃなくて、性能がいい奴のほうがいいのかな?
ティティ、気をぬくとぶすりとあるかもしれないよ。ないかな。
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