第433話 ティティ、条件聞いても動じない。今は奥の手があるから
「これらを、売りたいのよ」
「うえ!?」
驚いて、変な声が出た。
「は? いいんですか!? 生まれた後の卵のカラはともかく、孵化しなかった卵も売ってもいいんですか?! 産んだ人魚さんたちは怒らないんですか? 自分たちが苦しい思いして、産んだものですよね?」
心情的にいいの?!
「生まれて来れなかったのは、今回生まれるべき時期ではなかったということよ。生まれるべき時を持ったものは、困難に打ち勝って生まれるから。ここには、もう魂はないの。だからいいの。皆納得してるわ」
「はあ。ドライですね」
「私たちは種として生き残るために、ぶっちゃけ、お金がいるのよ」
あ、言っちゃったよ。
「ぶっちゃけましたね」
「だって、私たち人魚は、女しかいないでしょ? 外に男を探しに行くのに、お金が必要なのよ。できるだけ多くね。魅力的な女でいる為には、努力とお金が必要なのよ」
「はあ。なるほどお」
確かに、男は見目に惑わされるものが多いな。
元男だから、わかる。
「お主は女児でも、男女関係なく、惑わされるがな」
スヴァ、するどい指摘。合ってます。そこは素直に頷いておこう。
「ノアも! ノアも、きれいなひとすき!」
ノアが、手を挙げて主張する。
「そっか! ねえねと一緒だね」
「うん!」
ノア嬉しそうだ。今はまだいいが、しっかりと情緒面の教育をしなければな。
たらしではなく、紳士になって欲しい。
「お主にできるのか?」
うーん。自信なし。
スヴァよろしく。
「やれやれ」
「話の続き、いいかしら?」
「すいません」
カリア待ってくれたらしい。いい人、いや、いい人魚だ。
「本当にこれらを売る事に、抵抗はないんですね?」
「ええ。見ての通り、かなり溜まっているから、スパンと売ってしまいたいのよ」
「でも、なぜ私たちに? ご自分たちで売ればいいのでは?」
美人さんが売った方が、良い値がつくのではないか?
私なら、そう。
「お主、いつか女で失敗するな」
「ないよ! 私は今、女の子なんだから!」
それは自信を持って言えるぞ。
「直接売ったら、危険があるじゃない。ただでさえ、美人なのに、人魚関係の素材を販売なんてしたら、身バレの確率が、格段に跳ね上がるでしょ?」
「あー。そうっすねえ」
脱線するティティをスルーして、話を進めたカリアに同意する。
確かにそうかも。
人魚素材を売る、髪の長い美女。
うーん。確かに危険か。
「だからね、貴女に旨く売りさばいて欲しいのよ。国守さまの愛し子で、かつ行動を見て、貴女なら信用できるかなと」
「なるほどです。状況、理解しました」
護石像を掃除してただけで、そんな信頼してもらってよいのだろうか。
国守さまの紹介ってのが、大きいんだね、きっと。
人魚の卵のカラ。
案外簡単に手に入った、いや、入る予定だけど、どう売りさばけばよいのか。
私にはその辺のノウハウがないよ。
なんてね。
ふふ、少し前の私だったら、途方に暮れたかもしれないけど、今は心強い味方がいるからねっ。
人魚のカリアさんからのこの依頼、クリアできるとも!
ブライト! 君は時の時の為に、私たちについて来たのだな!
うざっと思ってすまんな!
ブライトに丸投げ予定デス。
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