第430話 ティティ、人魚と話し合いにのぞむ
皆が座ったところで、ここに連れてきてくれた人魚のお姉さんが、口を開いた。
「私はエースカリア、カリアと呼んでちょうだい。一応、この里の代表をしてるわ」
やっぱ、そうか。若いのに、すげえな。
「見た目に騙されるなよ。お主よりも遥かに長く生きておるぞ」
そりゃ、私よりも生きてるでしょうよ。
私はまだ7年しか生き取らんのだからな。
「言い方が悪かったか。100年以上は生きておるだろう」
スヴァが、律義に言いなおしてくれる。
わかってるよ。スヴァが言いたかったこと。
小さいところで、突っ込んですまんな。
おっと、こちらも自己紹介しないとな。
「私はティティ、隣にいるのが弟のノア、そしてこの黒いのがスヴァで、私の相棒です」
「あらあら、今はスヴァなのね。可愛くなってしまったのね」
カリアがくすくす笑う。
年齢のことはスルーだ。
女性は結構気にするというが、いいのか?
まあ、お姉さんがいいならいいけど。
それよか、気になるところを聞こう。
「スヴァは、カリアさんに会ったことがあるのか?」
なんか知ってるみたいだから。
「知らぬ」
はい。ばっさりでした。
「そうね。会ったことないわ。アマノリア様から聞いたのよ。前の貴方からしたら、私なんて下っ端もいいところだからね」
なるほどー。国守さまから、前情報で聞いていたと。
「国守さまが、自力で人魚の里を探せ的なことを言うから、まさか招いてくれるとは思っていませんでしたよ」
なんだよ。ディッセントヒルに到着すれば、そのまま人魚の里へと導かれるなら、そう言ってくれればいいのになあ。
「ふふ。貴女たちがこの里に入れるか否か、それは私たちにゆだねてくださったから、遠回しにおっしゃったのでしょう」
「そうなんですか」
そっか。
人魚さんたちが私たちを認めてくれなかったら、今も里への道を探して、丘をうろうろしていた可能性がある訳か。
「あの、私たちを招いてくれた決め手は、なんだったんでしょう?」
やっぱ、気になるよね。すっげえ、気になる。だから聞いちゃうよ。
「ヨハネ村からここに来る道すがらの行動を見て、村に入れても大丈夫かなって思ったのよ」
「えっ? 見てたんですか?」
どうやって? 周り、誰もいなかったよね?
「ええ。私たちには色々なところに目を置いてるのよ。そうね。一番わかりやすいのは、護石像を通して、最後は丘の石柱を通してね」
「あれは、魔道具だったんですね」
遠隔操作で使えるなんて人魚すごいな。
「ふふ。私たちが昔、乱獲されて数を減らした時に、アマノリア様がこの里をつくり、保護してくれたの。そして外の様子が見れるように、魔道具をくれたのよ。そして使い勝手がよさそうだから、護石像にそっと忍ばせたりしてね」
なるほど。石柱や護石像自体が魔道具なわけじゃないのか。
そうか。石柱はともかく、護石像は人が作ったものだろうからね。しかし掃除しても全然気がつかんかったなあ。
にしても。
「国守さま、やさしー」
「違う。人魚が全滅すると、不具合が発生するからだろうよ」
スヴァが、ずばりと訂正する。
うわあ。スヴァの見解が、シビアだなあ。
いいの。私は国守さまの慈悲だと思っておくから。
「行動を見てたのは、わかりました。でも私たち、特に変わったことはしてなかったですが。決め手はなんですか?」
「あら、監視したことを、怒らないのね?」
「トイレとか見られてたら、恥ずかしいですが、それ以外だったら、別に見られて困ることはないですから。ずっとでもないし」
それにジオル時代から、きっと国守さまには、結構視られていたと思うんだよね。
今更だ。
「ふふ。おおらかなのね。気に入ったわ」
「おおらかで、すませられるか。もう少し気にしてもらいたいものだ」
スヴァが、渋い顔で、苦言を呈す。
「貴方が、その役をすればいいじゃないの。相棒なのでしょ?」
カリアにそう言われて、気に入らなかったのか、スヴァはそっぽをむく。
これ以上へそをまげないうちに、話を戻そう。
「それで、決め手はなんだったのですか?」
「護石像やディッセントヒルの掃除をしてくれたでしょう。それよ」
「は?」
わからない。掃除しただけで、どうして入れていいとなったのか。
掃除って、そんな価値あるのか?
いや、私には重要だけれども!
ティティって、結構受け入れが早いデスね。その分スヴァがピリピリしちゃうw
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