第424話 ティティ、目的地をみつめる
それから、特に問題もなく、順調に護石像の掃除&スケッチを進めて、最終出口、もとい目的地であるディッセントヒルのすぐ手前まで、ティティたちは進んで来た。
ディッセントヒルへ、国守さま降臨跡地への通じる分かれ道の入り口には、ゴールデンシープとシルバーシープの護石像が、道を挟んで鎮座している。
その姿はまるで丘へと導くように雄々しく堂々とした姿の2匹であった。
やっぱ、最後は締めなきゃねって感じなんかな。
よし。ひとまず締めだ、掃除とスケッチ、気合を入れるぞ!
「ふう」
一息つきつつ、スケッチを眺めて、1つ頷くと、ティティは地面から立ち上がった。
「終わった!」
<護石像、すべて描き終えたのか?>
<いや、実はまだ、海へ続く道の方にも、何体かあるんだけど、片道としては終わったと>
<なんだ。つまりはまだ全部描き終えてないと言うことか。やれやれ>
いいんだよ。気分的に、一仕事終えた気分なんだから!
まだシリーズものこれしかないけど、これからもスケッチのコレクションを増やしていきたい。できれば、シリーズものを。単品も気に入ったのは、スケッチするけどね。
「ふふふ」
「何、不気味に笑ってんすか? スケッチ終わったなら、さっさと進みましょうよ」
ブライトが達成感の余韻に浸っているティティに、冷や水を浴びせる。
「ちょっとブライト、君、遠慮が無くなってきたね」
「そりゃあ、これから長い事一緒に旅するんですから、遠慮してたら、はげちゃいますよ」
ブライト、君、そんなに神経細くなさそうだけどね。
まあ、いい。今は機嫌いいからね。
「ねえね。おえかきしゅうりょうおめでと」
隣で見守っていてくれたノアが祝福してくれる。
「ありがとう」
ああ、やっぱ兄弟だよねっ。
可愛い!
「はいはい、早く行きますよ」
ぬう。
ほんと扱いが雑になってきたよねっ、ブライトめっ。
とにもかくにも、ディッセントヒルだ!
ディファール街道の本道から逸れて枝道を辿り、やって来たのは最初の目的地であるディッセントヒル。そのすそ野に向かいながら、馬の背に揺られつつ、目的の丘を俯瞰する。
「うーん。確かに見ごたえはないかも」
丘の頂上は少し平たくなっていて、そこに細長い石が数本立っているだけ。
「しかしなんでこの丘の周りだけ、ぽかりと空いてるのかねえ」
丘の周りは囲む様に草が生えているのみ。
丘の周辺以外は木々が密集しているのに。
それに不思議と魔物もいない。
「さて。それこそ御使いさまの思し召しなんじゃないすか」
ブライト何も考えてないでしょ。すげえてきとーに言った感じ、まるわかりだかんね。
少しまずいと思ったのか、ブライトが補足する。
「今はともかく、魔王がまだ健在で、魔物が跋扈していて、この街道が結構使われていた時も、この丘の近くに宿とかなかったんですよね」
あったのは、丘に登る為の料金を払うための料金所くらいしかなかった。
今はそれもない。お金をかけて人を置いても、採算が取れないのだろう。
「この丘、遠くからでもわかるように、御使い様が降臨されたという肩書がなければ、何の変哲もないただの丘っすからねえ。少し手前の宿で一泊してその後、丘をちょちょっと登ったら、次の宿場町まで抜けちゃったほうが安全だし、旨いものも食べられますから、あえてここに宿は建てなかったんすかねえ」
「何もないって、ちょっとはあるんじゃない?」
なんかメタメタに言われてると、ちょっと弁護したくなるのが不思議だ。
自分でもなんもねえと思っていたくせに。
「まあ、丘の中心に何本かの長方形の石が円形に並んでますね」
「ほら、想像してよ。きっとあの真ん中に、国守さまが降臨したんだよ」
大きな白い翼を生やした、超美人な国守さま。
間違ってもウシではない。
いや、私は牛系好きだよ? でもねえ。なんか格好つかないというか。
「想像力を目一杯働かせても、精々滞在期間は10分くらいじゃないすっか」
うーん。反論できない。
寄り道しつつ、やっと目的地に到着ですねw
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