第414話 ティティ、もう一つの楽しみに思いをはせる
夕食後。焚火を囲みつつ、
「この先、本当ずっと宿屋はないの?」
一縷の望みをかけてブライトに聞いてみる。勘違いとかない? ねっ?
「ですね。だいたい集落もないところに、宿屋があるほうが珍しいですから」
「ですかあ~」
そうだよね。そうだと思った。ここに着く途中も、人に会わなかったし。今もこの野宿用の広場には私たちだけだし!
とほう。こんな深い森の中。魔物に襲われる危険がある場所にも拘らず、なぜ宿屋があったかというと、ひとえに国守さまのご威光あってのことだったのである。
そう、国守さまが降り立ったという丘を見たさに、足しげく通う信者?観光客がいたからである。
それも魔物が活性化して、生命の危機が感じられる時期だったから、救いを求めてディッセントヒル訪問への拍車がかかったのかもしれない。
魔王が討伐されて7年経ち、魔物もめっきりと減り、イーズリー街道を安心して通れる今、観光に来る人が少なくなってしまったのもうなずける。
けど、安心して観に来れるようになったんだから、逆に増えてもいいと思う。
私的には!
‥‥‥まあ確かに、見ごたえは、全然ないけれども。
「はあ。現金だよね。人間ってのはよ」
「なに悟ったようなことを言ってんですか。まあ、そう言いたい気持ちもわかりますけどね」
ブライトもティティの苦笑の意味を読み取って、自分も苦笑している。
「まあいい。私のもう一つの楽しみは残っている筈!」
「もう一つの楽しみ?」
「そう! 護石像めぐりだ!」
ふふ! この楽しみは邪魔はさせんぞ!
「ごせきぞうめぐり? ねえね? なあにそれ?」
ティティの横にちょこりと座り、ノアが首を傾げる。
「ふふ。よくぞきいてくれました! 国守さまが降り立ったという丘まで続く、この街道にそってある道しるべ、アーンド魔物を牽制する意味合いでつくられた。ゴールデンシープとシルバーシープの像のことさ!」
「しーぷしゃまのぞう? きたみちにはみなかったよ?」
「うん。ディッセントヒルにもう少し近づくと、見れると思うよ」
そう、この街道の全域にはないのだ。ディッセントヒルに近い道沿いにしかない。予算がなかったのか。全部作り上げる前に廃れてしまったのかは不明だ。
「そうなんだ。しーぷしゃまのぞう、みるのたのしみ」
ノアがにこにこ笑う。
うん。疑いなき笑み、ありがとう。ノア。
まあ、街道沿い全域に像があったら、嬉しいけど、描くのに時間がかかりそうだから、ディッセントヒル周辺だけでよかったのかもね!
そうジオル時代、絵を描くのも得意だったから、1つ1つスケッチして、コレクションとして持っていたのさ!
今世でももちろん全部描くぞ!
<他にもくだらないものを集めていた感じだな>
<ちょっ! スヴァ! くだらなくないよ!>
失礼な。たとえ他人に価値がなくても、私には大いに価値があったものなんだから。
ほら、シリーズものって全部集めたくならない?
<ならぬな。集めてそれで何をするというのだ>
くっ! コレクターの気持ちのわからない奴め!
いいんだ! 私は満足なんだからっ!
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