第412話 ティティ、夕食の準備をする
「ぷちっと、ぷちっと、ぷちっとな~」
ティティたちは、ライアンが獲物をゲットして戻って来るまで、せっせと収穫した。
それほど広い庭でもなかったし、他の野草と紛れるフォルムでもないので、今生ってるものの収穫はあっさり終了。他にも食べられそうな野菜があったので、それも収穫。ここはもう放棄された畑だからねっ。決して泥棒じゃないよ!
多分。おそらく。
<誰が咎めるのと言うのだ。その咎める人間がいないのだろう。だから、お主がここで野菜を採っているのではないのか?>
<そっか。そうだよね。えへへ>
つい小心者だから、変な心配しちゃったよ。
私たちが採んなければ、これからの野菜は魔物に食われるだけだしね。それなら私が、いや私たちが美味しくいただこう。
そんなことをつらつら考えているうちに、ライアンも戻って来た。
森は日が暮れるのも早い。
早々にニーネを呼び戻し、ワイスを回収して、一行は元宿屋を後にした。
本日野宿をする場所はもう少し先にあるそうだから、そこまで移動する。
ライアン、さっきのような走りはよしてね。
そうして無事到着すると、暗くなる前にと、野宿の用意を始めた。
今いるところは、アルステの森で野宿するならここ!という場所である。
かなり開けたところで、人工的に木を切って開いたところだとわかる。
ブライトとライアンは薪を集めた後、テントを立て始めた。
うーん。元騎士2人、慣れているのか、組み立てが早い。
ティティはといえば、先程採って来たポブロンと、ライアンが採って来たタヌーク、もうすでに血抜きし、処理済みの肉を前に、腕捲りをする。
「ふふ。料理道具は用意してある」
道具がなくて、ワンパターンの食事になるなんて、まっぴらだ。
お金がないならともかく、今は余裕がある。その為、予め道具を用意していたのである。
<お主の食にかける情熱には恐れ入る>
皮肉なのか本当に感心しただけなのかはわからないが、スヴァの言は今はスルーだ。
料理に集中!
「まずはポブロンのへたを切り落としてと。ノア?」
隣にお手伝いをする!と意気込んで待機していたノアを呼ぶ。
「あい!」
「中にある、種を取っていってくれる?」
ノアにはまだ刃物は危ないので、ティティが切ったポブロン中に入っている種を取り除いてもらう。
「あい!」
「ん。よいお返事だね。じゃあ、次々に渡すからね」
そうして種を取ってもらったポブロンを千切りにする。
次はタヌークの肉だ。
少しもったいないが、これをこまぎりにし、更に細かくしてミンチにする。
その為に叩く、叩く、叩く!
「ねえね? だいじょうぶ?」
無事ミンチにした肉を前に、ティティの肩は大きく揺れていた。
「ふー。大丈夫」
ここまでくればこっちのものだ。
このミンチにするまでが大変なんだよね。
後はフライパンでこのミンチ肉と千切り野菜をいためて、味付けて終わりっと。
本当はもっと違う野菜も入ってたような気もするけど、今日はシンプルにこの2種だけ使う。
ただ、この味付けが問題だ。
実はこの緑の野菜、かなり苦みがある。大人はその苦みがくせになるうまさと感じるのであるが、いかんせん、子供はこの苦みがダメな子が多い。
宿の味付けはシンプルな塩と何かハーブを入れてあったようだが、ノアにはちょっとつらい味つけかもしれない。
ティティは少し考えて、大人組2人と、子供組の2人と、味付けを変える。
大人組は元宿屋風味のさっぱり塩味、子供は砂糖を入れた甘じょっぱい味付けにしよう。
<スヴァはどうする?>
<我はお主と同じに願う>
<了解>
スヴァはどちらでも行けそうだけど、元来苦みは毒系として感知されやすいからな。子供組味付けにしよう。スヴァも含め、私たちちっこい奴は、特に苦みは苦手かもしれない。
お腹もすいて来たし、ブライトが用意してくれた焚火の上で、調理する。
さて、これだけでは足りないので、西の領から持って来た、柔らかいパンと一緒に食べれば、名物もどきの完成だ!
本当は野菜と肉炒めをパンに挟んで食べるのだが、売り物のように零れないようなパンの切り方もできないし、専用の器もないからなっ。
一緒に口に入れて食べるようにするしかない。
「できたよー!」
興味津々で見ていたブライトとノア、静かに待っていたライアンと、スヴァの前にそれぞれワンプレートを置いて行く。「
そして自分の前にも。
「さ、熱いうちに食べよう!」
いただきます!
なぜか大人になると苦みがおいしいと感じますよね。不思議です。




