表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
413/496

第411話 ティティ、無常を思う

 歩け。歩くんだ! 頑張れティティ!

 そう念じつつ、亀の歩みで、ブライトの背中から下ろされたノアの元へと行く。

「ノア」

「ねえね!」

 声をかけると、嬉しそうに腰にしがみついてきた。

「うお!」

 倒れそうになるのをなんとか堪える。

「ねえね? だいじょうぶ?」

「うん。でも、ちょっと足がしびれてるから、回復するまでワイスと遊んでてくれるかな?」

「わかった!」

 ノアはリュックからワイスを出すと、お散歩をさせ始める。

 ふーい。転ばなくてよかった。

 ノアったら、素直なんだから。

 いや、実家にいたら、聞き訳がよくなるのかもしれんな。

 私も結構忍耐強いと思うし。

<そうか?>

 全然影響を受けた様子もないスヴァが呟く。

 なんで平気なんだよ!

<さあ>

 くっ。まあいい。

 それから少し歩くと、ティティの足が、やっと少し復活した。

「はあ。やれやれだ」

 しかし、思ったより早く着いたから、まだまだ明るい。

 改めて元宿屋の建物を、見上げる。

 数年経っているからか、なんとか立っているものの、使ってないんだろうなあって感じで寂れていた。

 建物って人が住まないと、急激に劣化するっていうからなあ。

 ましてここはアルステの森の中だ。森に飲み込まれるの、早そうだな。

 前に来た時は、結構、人、入ってたぽいけどなあ。

 入り口を封鎖された元宿屋見つめ、世の無常を思ったりして。

「ティティちゃん、ここに来てどうしようっていうの? 見ての通り、宿屋は野宿にも使えないよ。がっつり入り口閉まってるからね」

 確かに魔物が入り込まないようにか、頑健に閉鎖されている。

 にしてもブライトよ。もう少し浸らせてくれてもいいのではないかな。

<お主は、そういった感情よりも、食い気なのではないか?>

 くっ! 確かにそうだけれども!

 口では勝てなさそうなので、頭を切り替える。

「ふふ。私が用があるのは裏手なのさ。ノア、一緒に行く?」

「あい!」

 ノアはワイスをリュックに入れると、ティティの隣に来る。

 そのノアの手を引き、建物の裏手に回る。

 そこには結構な広さの裏庭がある。

 いや、大人の腰までくらいの高さまでの草がぼうぼうに生えているから、元庭かな。

 もう、森に飲み込まれかけている。

 そこで腕にいるニーネに話しかける。

「ニーネ。しばらくここにいるから、お散歩しておいで」

<わかったのー。いってくるのー>

 ニーネは嬉しそうに林の中に入っていく。

「ノア、ワイスをもう一回出してあげな」

「うん」

 ノアもリュックの中からワイスを出して、元裏庭に放つ。

 ワイスはふんふんと匂いを嗅ぎながら、ゆっくりと移動する。

 うん。よい餌が食べられるといいね。

「それで、裏庭に何があるんですか?」

 ライアンとともに、後ろについて来ていた、ブライトが尋ねる。

「ふふ。実はね、前に来た時に、名物料理に使うメインの野菜、林に採りに行くのが大変だから、裏の庭で育てているって聞いてんだよねえ」

 もちろんティティじゃないよ。ジオル(前世)の時ね。

 そのジオル時代に見た時には、今いるここ、庭っていうよりもう畑だったね。

「だからね。ここを放棄しても、野菜は自生してるんじゃないかなって思ってさ」

 ティティは草むらに入って、目当てのぶつを探し始める。

 すると、狙い通り!お目当ての野菜があった。

「やった! やっぱりあった!」

 ティティは、その緑の野菜を高々と掲げる。

 ちょっとでこぼこした丸いフォルムの鮮やかな緑色の野菜、ポブロンだ。

「へえ。よくありましたね。人間が食べる野菜って、結構魔物も食べるっていうのに」

「うん。この野菜はちょっと苦みがあるからね。それに獣はいやがる匂いもあるしね」

 そう。だから、茂っている可能性は高いかなって思ったんだよね。

「よし! 私とノアとそれとブライトはここで、野菜を収穫!」

「あい!」

「わかりました」

 うむ。

「それじゃ、ライ!」

「はい」

「ライは何か狩って来て! 名物料理もどきつくるのに、肉が必要だから、できれば臭みのない獣がいいな」

「わかりました」

 ライアンはそう返事をすると、すぐに林に消えていった。

<貴族に命令するなんてな>

 いいの。美味しいものを食べるには、仕方ない事もある!

 さあ! 今誰も食べないなんてもったいないから、収穫できるものは収穫するぞ!

ティティ、どろぼうではありませんw

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ