第408話 ティティ、ブライトを凝視する
翌日の早朝。
「よーし! では出発~!」
「あーい!」
ノアの可愛らしいお返事とともに、ティティたち一行は人魚の里を目指し、ヨハネ村を出発した。
馬は2頭。
人員の配分は、ライアンの馬にティティ、スヴァ、ニーネ。
ブライトの馬にノアとワイスである。
ちなみにニーネはティティの腕、ワイスはノアのリュックに入っての移動だ。
ニーネはともかく、ワイスは馬を歩かせている間に、コロンと落ちたら大変だからだ。
人数もコンパクトになっていいね。
馬に揺られながら、つらつらとこれからのことを考える。
今回の最終目的は人魚の卵のカラを入手することだ。
カラというのが重要。卵ではない。
運よく、人魚に会えたとして、そう、ここを強調して交渉しなくてはいけない。
決して君たちの仲間を生け捕りにしようなんて考えてないということを、全面にプッシュする必要がある。
卵生であることは、突っ込んではいけない。
すっごい気になるけれどもや。
しかし人魚って、一回の出産でどのくらい卵を産み落とすのだろうか。
胎生だと数はかなり少ないだろうが、卵生であると少し多めなのだろうか。
でも人魚もかなり人に近いし、一度の出産で1つの卵しか産まないかもしれない。
だとしたら、卵のカラでも超貴重だよね。それに残っているのかなあ。
卵生の生物って生まれると、卵のカラを食べてしまうものもいる。
ブライトに聞いても、人魚については不明な部分も多いらしい。
国守さまがカラを指定してきてるんだから、きっと生まれてすぐの稚魚の栄養としての摂取はないんだと信じたい。
人魚の卵のカラの入手する為に、まずは人魚に会う必要がある。
そして国守さまに示されたのは、人魚に接触できる場所、ディッセントヒルだ。
当面の目的地は、このディッセントヒル。
うむ。目的は大事だが、そこに行く前の道のりも楽しまないとね。
ディファール街道通るの久しぶりだな。
どんな風に変ってんのかな。
お店はなくなってるって言ってたけど、生き残ってる食事処もあるかもしれない。
一軒でいいから残っていて欲しい。
そしたら、そこで名物料理を堪能するのだ。
「くふ」
思わず顔が緩む。
<お主はぶれぬのう>
ティティの前にちょこりと座ったスヴァが心話で呟く。
なにをいうか。
大事なことだよ!
はあ。前にこの街道を通った時に食べた美味しものを思い浮かべて、ティティの口から笑い声がもれた。
「むふふ」
「さっきからなんですか? その不気味な笑い声は」
隣を並走するブライトがすかさず突っ込んで来る。
「うん。ブライトがああいってたけど、もしかしたら、食事処が残ってるかもって思って。ほら、ディファール街道って、国守さまが降臨された丘に続く道だってことで、結構整備されてたじゃない。だからさ、もしかしてって。また名物料理食べられるかもって思ったら、顔が緩んじゃって」
「ノアも! ノアもたのしみ」
うんうん。いつ街道通ったのっていう突っ込み入れず、素直に楽しみな部分だけ乗っかってくるノアがいいね!」
「だよねー」
「あー。残念なお知らせです、ティティちゃん。私が昨日言った情報は正確です。この街道沿いの食事処は完全になくなってます。私がこの目で確認してますから」
なんだとう!?
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