第40話 大収穫っ
「ティティ」
「うお!」
突然近くで声をかけられ、ティティは飛び上がった。
夢中でプチメアの花を採っていた為、すぐそばまでスヴァが来たことにまるで気づかなかった。
周囲無警戒、絶対だめ。気を付けよう。
スヴァはそれを気にすることなく、口にくわえていたものを、ティティの足元に置いた。
「おっ!すげえ!」
ジャイアントラビットだ。一角兎と比べてウエイトもサイズもかなりある。そしてその体重を乗せた蹴りは大の大人でも吹っ飛ばすほどの威力がある。要注意な兎である。ただ狩ってしまえば、額に光る魔石もさることながら、肉も大変美味で、金銭的にも味的にも、とても美味しい魔物でもある。
スヴァは尻尾こそ振っていないが、胸を心持持ち張っているように見える。
一角兎を狩ってきた時には見られなかった姿だ。
うん。こういう時はうんと褒めてやらないとな。
「すごいな! こんな短期間に採って来てくれたのか!」
スヴァの胸が更に前に出た。
うんうん。可愛い奴め。
「おっと、血抜きしとかないとな」
美味しく食べる為には手早く済まさないと。
ティティはデルコの店から手に入れた解体用のナイフを取り出すと、一角兎の首をスパッと切り足を丈夫そうな蔓で縛り、木に逆さに吊るした。
「そうだ。スヴァが前にとって来た一角兎、亜空間に入れっぱなしだったな。こっちも血抜きしとこう」
うむ。肉が二乗。よき。
「今日の夕食に食べられるか?」
スヴァがそれらを見つつ、尋ねる。
野宿するなら、食べてもいいが、新鮮だし、売った方が面倒がない。
けれど、スヴァは食べたそうにしている。
そうか。この世に戻って、自分で狩った獲物だ。食べたいよな。
それは大事にしないといけない。
「そうだな。血抜きが終わったら、解体して、どこかで焼いてもらって、宿で食おう! きっとうまいぞ!」
「うむ!」
スヴァが嬉しそうである。
うんうん。どうやら正解だったようだ。
「ティティよ。お主のほうが一段落したようなら、ついて来てくれ。色々と見つけた」
「おお! あらかた取り終わったから、大丈夫だ」
「少し歩くぞ」
「もちろんいいぞ!」
プチメヤの花だけでも十分なのに、この上何を見つけてくれたのか。
誠に頼もしい相棒である。
それから結局2人は昼食も取らずに、せっせと採集と狩りを続けてしまった。
今はその帰り道。
沢山の収穫で、テンションアゲアゲだが、のんびりもしてられない。
今は秋。日が暮れるのが早まっている。
暗くならないうちに、森を抜けねば危険である。
それに、今日は受けた依頼の期限最終日である。
この後、冒険者ギルドにも行かなければならないのだ。
ティティは、アケカズラをかじりながら、少し早歩きで下る。
「ほらよ」
スヴァにも殻を割って、投げてやる。
綺麗に口でキャッチして、口をもぐもぐさせる姿は可愛い。
本人に言ったら、すごい渋い顔をされそうである。
と、思ったら、スヴァが何か見つけたように駆け出して行く。
それについて、ティティもついて行く。
すると、そこにはミツルギ草が生えていた。
大きさも十分である。これも傷薬になる薬草だ。無視するにはもったいない。
スヴァは知識も探知能力も抜群で、請け負った依頼のキヨセルラ草とイミデア草もすぐに見つけてくれたのだ。本当に有用な相棒である。
ただ、惜しむらくは、採集袋をあまり用意していなかった。
昨日作った袋だけでは足りなかったため、とりあえず亜空間に放り込むしかなかった。また作らなければならない。いや、もう袋を買った方が早いか。いやいや、作ったほうが安上がりだろう。今日の夜にでもまた作ろう。
それでも嬉しい誤算である。
今日採取したものを売れば、懐はまた温かくなる。
買いたい物てんこもりのティティとしては、にまにまである。
「さて、冒険者ギルドに行って、屋台で兎の肉を焼いてもらって、祝杯だな!」
そう前を歩くスヴァの背中に投げると、ふるりと一回尻尾が動いた。
くっ!可愛いじゃないか。
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