第401話 ティティ、ぷちり、しゃくっとする
雑貨屋で色々仕入れたティティは、ほくほくだった。
うん。この前は祭りでうきうきだったけど、お店はあまり見て回れなかったから、すごい嬉しいかなっと。
そこでつんつんと上着の袖をひっぱられる。
「ん?」
「ねえね。おなかがくーってなったの」
隣を歩くノアがお腹をさすりながら、せつなく訴えてくる。
「がはっ」
なにこの可愛い仕草は!
おねえちゃん、何でも買ってあげちゃうよ!
「うんうん! そうだね! なにか食べようか?」
「ん!」
ノアがにぱっと笑う。
うん! ごちそうさまです!
<チョロすぎるな>
ノア限定で、私は超チョろになる!
「ノアは何が食べたいかな?」
「あまいの!」
「そっか! あまいのか!」
ヨハネ村で甘いものは比較的手に入れやすい。
しかし、ノアが食べたことがないものを食べさせたい。
できれば、私も食べたことがないもの希望!
そう思いつつ、短い村のメイン通りをノアと手を繋ぎつつ、歩いていると見つけました。
季節限定甘味ありますの看板が!
それに引かれて、店に入る。
「いらっしゃいませー」
はい。棒読み。笑顔もなし。
無表情な店員のおねえさん。
でも、ブツがおいしければ、それは構わないよ!
よろしくね。
「あの、看板見て入ったですけど、お願いできますか?」
「あー。かしこまりましたー。4つでいいですかー」
「いえ、従魔にもあげたいので5つで」
スヴァの専用皿を差し出しながら、注文する。
「了解っす」
っす? 返事としていいのか?
首を傾げながらも、店員を見送る。
あ、ワイスはまだお昼寝中だから。今回はスルーで。
実際食事しなくてもよさげだしね。どうなんだろうね。
「確認しないで頼んじゃいましたけど、よかったですか? ブライトさんにライ?」
「あー。僕はダイジョブです」
「私も問題ない。騎士は食べ物に文句を言ってはいけない」
「いや、遠征とかじゃないから、別に好みを言ってもいいんだよ、ライ」
まったく、ストイックなんだから。
おいおい、わがままにしていかないとだな。
<それ、教育として、あってるのか?>
私的には合ってる。若者は、もっと自分勝手でよいのだ!
「ねえね。たのしみねー」
「うんうん」
そして待つ事しばし。
小鉢に、よそわれてきたそれ。
うーん。スイーツにはみえない。
皿の真ん中に茶色の細長い麺?が巻かれてちょこりとある。見た目地味すぎるっ。
「これ、本当に甘味ですか?」
思わず店員さんに聞いちゃったよ。
「あー。そうですよ。見た目は控えめですけど、触感がとてもいいし、食べると美味しいですよ」
「ちなみに、この茶色のものはなんですか?」
「一応植物なんですけど、しゃきしゃきぷちぷちして、それが蜂蜜入りのシロップと合っておいしいんですよ」
「ほほう」
前来た時はなかったなあ。季節限定だっていうから、これがとれるのが、ほんの一時なのだろう。
「ねえね。たべてい?」
「うん。食べようか」
スヴァの前にもおいてやる。
それから胸の前で手を組んで
「「いただきます」」
っと。
それから、フォークで茶色い細長いものを救う。
うーん。全然うまそうに見えない。
それでもチャレンジだ。おそるおそる口にいれる。
とたん、歯でかむとぷちり。
なんか気持ちいい。そしてしみ込んだ蜂蜜主体のシロップがじわりと口に広がる。
もう一度嚙むと、今度はしゃっきりとした触感。
ぷちり、しゃく。ぷちり、しゃく。
「おもしろーい」
ノアがまさにティティが思っていたことを表現してくれた。
甘さ控えめ。でも触感が楽しい。
これくせになるっ。
あっという間になくなってしまった。
「もう少し食べたいなあ」
名残惜しい。
「絶妙な量ですね」
大人2人もあっという間に平らげたらしい。
「ライ? どうだった?」
「初めて味わう感覚でした」
「楽しかった?」
「楽しい? わかりません」
うーむ。食を楽しむのが初めてだからな。最初は戸惑いがあるか?
「これからは旅先で初めて食べるものも多いだろうから、それを楽しみにしてるとよいよ。食事はお腹を満たすばかりじゃないからねっ」
「はい」
かったいなあ。
「さて、小腹も膨れたし、もう少し食料を調達しましょう!」
あ、これ名前なんていうスイーツなんだろう?
ま、おいしければ、名前なんていっか。
スイーツ、あえて名前なし(笑)。




