第400話 ティティ、雑貨店の主人と懐かしむ
なんと400話まで、来てしまいました~。
皆様、ここまでお付き合いありがとうございます(ぺこり)。
記念の400話ですが、何気ない日常です。
「こんにちは!」
「ちわあ」
ティティはノアと2人、挨拶をしながら、勝手知ったる雑貨店に入る。
なぜ馴染なのかというと、この店はジオル時代、少しお世話になったからである。
記憶にあるより、少し老けた主人、オリジンが顔を出す。
「いらっしゃい。何が欲しいのかな?」
「はい。この子が使えるような、小さめの箒ってありますか?」
「ノアです! ありますか?」
ノアは真似しつつ、首を傾げる。
くっ! 天然は威力がある。
店主もその攻撃をくらって、目じりを盛大に下げている。
そうだろう。そうだろう。うちの弟はマジで可愛いからな!
「ああ、あるよ。こちらに来て、好きなのを選ぶといいよ」
「おお!」
なんと、オリジンが指示した先には、柄の長さや穂の荒いもの、細かいもの、材質の違うもの。そのほかの掃除道具も多々ある。小さい村なのに、驚きの品ぞろえである。
「すごい品揃えですね」
後ろから棚を覗き込んだブライトが、感心したように呟く。
「そうでしょう」
店主オリジンが、少し胸を張って言う。
「もう10年くらい前でしょうか。まだ10代前半の少年が尋ねて来てねえ」
店主が懐かしむように語る。
「あれこれと注文を付けて、これらの掃除道具を作れと言って来たんですよ。最初は断ってたんですが、森の中にある御使いさまの祠を綺麗にするための道具だから、どうしても欲しいって言ってね」
「ほほう」
ブライトが、ティティを見降ろす。
ティティは、さっと目を逸らした。
「私も断り切れなくて、その少年とあーだこーだと言いながら、作ったんですよ」
「へ、へえ。そうなんですね」
そ、そんなことあったかな。
「彼が去った後も、こうしたらいいんじゃないかとか、子供に使いやすいものとか、なんか私も凝ってしまってね。そうしているうちに、これだけ増えてしまったんですよ。女房には怒られちまいましたけどね。けど、それほど材料費がかかるものでもないから、今でも作り続けているんですよ」
私が、原因らしい。すまん、女房どの。
「あの少年は、もうすっかりいい青年になってるだろうなあ。今頃どこに、旅をしているのか」
ここにいます。そしてあなたの作品をありがたく買おうと思ってますよ、とは言えない。
そしてジオルはもう亡くなってます、とも言えない。
「またこの村に来て、私の作ったものを見て欲しいと思ってるんですよ」
主人はそう締めくくった。
その願いは主人の願う形ではないかもしれないけど、叶ってるよ。
すごいよ。私の望んだものが、あるんだから。
主人と色々試行錯誤した日々が懐かしい。
ライ! つらそうな顔しないでいいんだよ!
楽しい思い出なんだから。
「その少年に感謝ですね! 私はそのおかげで、弟が使いやすい道具が買えるんですから!」
「そうだね! 存分に見ていっておくれ!」
主人は嬉しそうに頷いた。
うん。自分に感謝ってなんか変な感じだけど、望みのものが手に入ったんだからよし! だよね!
「ここでも、ぽろりをしてましたか」
ブライト、何か呟いた? 聞こえないよ?
ちらりとジオルの足跡を書いてみましたw
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