第394話 ティティ、東の友と別れる
翌早朝。
ティティたちは急ぐ旅でもないので、ここでもう一泊して行くとの建前の元に、のんびり起きてもよかったのではあるが、ルミエールたち視察団は、ここに留まる理由もないので、東の領に向けて、早々に出発するので、それに合わせて早起きをした。
眠いよう。
<別れの儀ぞ。しゃきっとせよ>
眠い目をこすっていたら、スヴァから活が入った。
<わかってるよ。また会えるとしても、けじめだからな>
<うむ>
スヴァ、頭張ってたからか、そういうところは厳しいよね。
ブリアは先に支度を終えて、朝食を食べている。
ノアの支度も手伝いつつ、ティティは一階へと降りる。
ルミエール、ヒース、ブリアはもう朝食を終えて、お茶をしていた。
そこにノアの手を引きつつ、近づいて行く。
「ルミエール様、大変お世話になりました。ブルコワ様にはよろしくお伝えください」
お礼は大切である。況してや言葉はタダなので、なおさらだ。存分にしなくてはならない。
「そう思うのなら、御使い様の課題が終わったら、直接自分で言いにきなさい」
相変わらずなルミエール節である。
最後まで変わらずである。
「かしこまりました」
カチンとくるが、行こうと思ってるから、ここは素直に頷いておく。
「ティティ、気を付けてね。そして本当にありがとう」
ブリアがティティを抱きしめながら、小声で呟く。
きっと聖力循環のことだろう。
「はい。頑張ってください!」
ティティができるのは、ここまでだ。
後はどのように応用し、それをものにしていくか。
それはヒースやブリアを含めた、魔法士たちにかかっている。
「ノアもお姉ちゃんの言う事をよく聞いて元気でね」
「うん!」
ノアはよく寝たからか、元気いっぱいだ。
ワイスはノアの背中のリュックの中でまだ寝こけている。
ちなみにスヴァは足元に、ニーネは腕に巻きついている。
うん、皆定位置だねっ。
ライアンとブライトは一歩下がって、後ろに控えている。
私たちが部屋を出たタイミングで、廊下に出てきたよ。
気配察知スキル持ちかと思ったよ。
その2人は特に感慨もないようで、挨拶もあっさりだったね。
「小さなレディ! とうとうお別れの時が来てしまった! ああ、なんという悲しみか! しかしこの別れは再び会う為の、喜びの前の一時期の悲しみ! 私はのちの喜びを楽しみに耐え忍ぼう!」
うんうん。ヒースも安定のヒース節だね。
「ヒースさん、本当にお世話になりました! そして何より一緒に旅が出来て、楽しかったです! ご家族の皆さまにもくれぐれもよろしくです!」
ヒースがいるだけで、暗くなりがちな雰囲気から浮上することが何度もあった。
彼の底抜けの明るさと、そして軽さに感謝をしたい!
<それ、騎士として魔法士としてどうなのだ?>
私は人間としてのヒースを大いに評価したいの!
だから、それについてはノーコメント!
<それが答えのような気がするが>
スヴァ、言うようになったね。
ヒースはノアのほうを向くと、脇の下に手を入れて、高く持ち上げた。
「ノアよ! 姉上をよくお守りするのだぞ! そして自身も大切にな! 楽しい旅を!」
「あい! ヒーシュさまもおげんきで! またあいたいです!」
「うむ! また会おうぞ!」
それからひと際高く、ノアを持ち上げた。
「きゃー!」
ノアが楽しそうな声をあげる。
ああ、今の私にはそれはしてやれないからなあ。
もしかしてノアは、初めて高い高いをされたかもしれない。
あのくそ親父がするわけないからな。
良い思い出が出来た。
ヒースに感謝!
そして3人の旅路に幸あれ!
3人は馬に乗ると、再会を約束し、旅立って行った。
さーて。朝ごはん食べたら、4人で会議だ。
もう少し旅に向けて話を詰めないとね。
別れもあり、出会いもあり、だから旅は楽しいとも言えますね。
ルミエール、ヒース、ブリア、また会う日まで。




