第390話 ティティ、まずはご飯を希望する
「あ~、ティティちゃん、やあーっと帰ってきてくれたんだねえ」
情けない声を挙げながら、宿で迎えてくれたのは、ルミエールととともに、森の入り口付近で早々に弾かれたブライトである。
「森の結界は健在なんだねえ。僕、初めて体験したよ」
あ、ばか。そんなこというと、余計に不機嫌になるだろうが。
「帰りましたか」
ごごごごっと音が鳴るようなオーラを滲ませながら、短く告げるのはルミエールである。
「はは。ただいま帰りました」
この2人、弾かれるのは当然て、自覚していてもおかしくないのになあ。
ブライトは商人気質からの打算が大いにある。
ルミエールは領地への利益第一を見透かされての選別である。
「いやあ。せめて祠があるっていうところまで?進めたら、レアな薬草だけでもゲッドできたのになあ。残念、残念」
そう口では言いつつも、全然残念そうに見えないブライト。
口を軽快に動かしつつも、3部屋ある両隣から椅子を持ちこんで、話し合いの席をせっせと作っている。
早速、話を聞きたいってか。しかしせんぞ!
「悪いんだけど、すごいお腹空いているので、早めの夕食を先に取ってから、話をするってことにしません?」
ノアが両手でお腹を押さえているのを見過ごせないし、自分としても一息ついてからにしたい。
朝早くから夕方まで、結構みったしのスケジュールだったから少しご飯を食べつつ、ゆっくりしたいよね。
「え~。早く聞きたいのになあ」
ブライトは待っているだけだったから、まったく疲れてないだろうが、こっちの身にもなって欲しい。
国守さまに会えるのは楽しいが、やはり気疲れはする。
それに聖力循環の訓練もしたしね。
だから譲らないよ。
「話はきっと長くなるし、一先ず休憩してからにしたいわ」
「できれば、そうして欲しい。そうすれば、心置きなくじっくり話せるだろう」
おおっ。ブリアとヒースも、援護をしてくれる。
うん。2人も聖力訓練疲れたろうしね。
でも、達成感があるからか、2人の顔は明るい。
「なんかすごいいい顔してるよね? まさか、2人も国守さまに拝謁できたとか!?」
ブライトが身を乗り出して尋ねる。
「いや、残念ながら、お会いできたのは、小さなレディだけだよ」
「ライアンさまもだめでしたかあ」
あ、ルミエール少し不機嫌オーラが減ったかな。
うんうん。みんな仲良く弾かれたから、よしとしてね。
それより、ご飯だよっ!
はい、お宿に帰ってきました。
そして話し合いより、ご飯がさきです。子供の寝る時間は早いしね。ノアちゃんが優先です。




