第380話 ティティ、奮い立つ
ティティはそこでふうっと息をはき、亀を胸に抱いているノアを見る。
「ねえね? へーき?」
ノアが唇をへの字にして、不安そうにしている。
いかん! 私は一人じゃない。それにこの弟を守らなきゃならないんだ。数年で死んでる場合じゃない!
「大丈夫! ねえねは、強いからね!」
「ほんとう?」
「ほんとうだとも!」
死ねない! 可愛いノアを一人にできない!
親に捨てられ、姉に先立たれたら、ノアの心が壊れてしまう。
それに! ティテイルナが戻ってきたいって思った時に、タイムオーバーで死んでるって、それじゃああんまりかわいそうすぎるっしょ!
「私! やります! 自分の為ですし!」
「はあ。もっと食い下がらなくてよいのか? 別の方法もあるかもしれぬぞ?」
スヴァが、御使いを睨みながら言う。
「もっと簡単な方法があるなら、そちらを先に国守さまは言ってくれてるはずだよ。国守さまはいじわるなんてしないからね。きっと俺にとって一番いい方法を国守さまは教えてくれてる。なら、それをするしかない」
国守は一瞬目を見開いたが、満足そうに頷く。
<そなたは、そなたじゃの>
「ああ、そうだろうな」
なに、また2人意気投合。もうすごい仲良しなんだから。
<心を決めたならば、まずは天の溶光を入れる器を手に入れねばな>
「器ですか?」
<うむ。普通の容器では溜めておけぬからの>
「なるほどー。魂を補強できるほどの素材ですものねっ。それはどんなものでどこにいけば手に入りますか?」
くそお! まずは入れ物からかー。先は遠いなあ。
<天の溶光を保存できる器、それは人魚の卵のカラじゃ。手に入れたならば、それを人魚の涙で補強してもらえ。さすれば、器として耐えられようよ>
「ええっ! ちょ! ハードル超高くないですか! 私、人魚なんて見たことないし! 人魚の卵のカラってすげーレア素材じゃないですかあ」
人魚の肉って食べると不老不死になれるって噂だぞ!?
人魚ってだけでも難しいのに、その上、卵のカラって! 卵ってないだけいいのか!?
いやいや、どちらにしてもいきなりハードすぎるっしょ?!
<なに、それほど心配するでない。人魚が常時いる場所はわかっておる>
「そうなんですか! もう、それを先に言ってくださいよ、国守さまあ。もう脅かして。その場所教えてくれるんですよね?」
そこまで言って教えてくれないなんていじわる国守さまは言わないよね?
<もちろんだとも>
「ありがとうございます!」
国守さまってやっぱり優しいなあ。
<ふふふ。だが、そこにたどり着けるかはお主の気質と運しだいかの>
「ええ?! どういうことですか?」
<人魚との接触できる地は教えられるが、あれらの住む地に行けるかは其方次第ということじゃ>
「うーん。わかりません」
気質も運も、自分ではどうにもできません。
今更気質は代えられないし、運なんてねえ、それこそその時、その場での流れだもんなあ。
でもやらないという選択肢はない。
死活問題だしね。
「チャレンジあるのみですね」
<そうじゃな。妾は信じておるぞ。そなたならやりきれるとな>
その信頼に答えられるといいなあ。
「ちなみに御使い様たちの泉は何か所、行く必要がありますか?」
心構えとして知っておきたい。
<それを先に言ってしまってはおもしろくなかろう?>
あ、教えてくれないんだ。
まあ、でも数十か所って言われたら、ちょっと心が折れるから知らない方がいいのかな。
天の溶光のたまり具合を見ればいいしね。
<そうじゃ。めでたくたまった暁には、其方も其方の相棒たる生意気なそこな元魔王の魂も、救われるじゃろう>
「えっ! 私だけでなく、スヴァの魂も、もれなく補強されるんですか! やったあ!」
スヴァの魂も半分になってるから、後から聞こうと思ってたんだよね。
スヴァは倒れたことはないけど、スヴァだって魂半分なんだから、不安定な筈だからね!
「人をおまけみたいにいうな」
黙って聞いていたスヴァが、すごい嫌そうな顔をする。
「おまけでもいいじゃん。天の溶光集めで、2人、長生きできるんだからさ」
おお! なんかヤル気出て来た!
「ノアも手伝ってな!」
「うん!」
ああ、明るい未来が見えてきた!
ってかさ、人魚って卵生なの!?
そこが一番気になる!!
人魚って卵生なのか? 私も気になります(笑)
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