第379話 ティティ、愕然とする
<今から魂の補強の方法を、そなたに授ける>
「お願いします!」
ティティは、がばりと頭を下げる。
「しまちゅ! ノア、ねえねとずーっと、いっしょにいたいの!」
ノアも必死にお願いしてくれる。
可愛すぎる。
<元よりそのつもりよ。頭をあげて、しっかり聞け>
国守さまはいつの間にか、いつもの牛バージョンに戻り、大樹の下に腰を下ろした。
脇では2匹の羊が草を食べている。ゴールデンシープとシルバーシープ、マイペースである。
<妾の力ですぐに治してやりたいが、それは天上の理に反する。われらは直接下界に干渉する事は基本せぬ。だが、可能性の道を示してやることはできる>
「ふん。都合のいい理屈だ」
スヴァ! だまって! 教えてもらえなくなったら、どうするの?!
「ふん」
スヴァはそっぽをむく。
もう。仲良くなったり、減らず口叩いたり、自由すぎるよ!
今は黙っておくように!
「国守さま、スヴァはほっといて、続きをお願いします」
国守さまはスヴァを視線で撫でると、口を開いた。
<魂の補強する、天の溶光を集めよ>
「天の溶光? なんですか、それ? 魂を補強するっていうから聖素のようなもので、それのもっと強力なものですか?」
<言い得て妙。聖素は自然が生み出すもの。それでは魂は補えぬ。天の御使いである妾たちの泉を回り、その水を集めるのじゃ>
「国守さまの泉?ですか?」
<泉といえど、形は様々である。単に泉と呼んでいるにすぎぬ>
「へっ? どういうことですか」
泉と呼ぶけど、泉じゃない?
わからない。また禅問答じみてるよ。
<うむ。そして、妾だけのものでは足りぬ>
「へ? どういうことですか?」
ますますわからないよう。誰か助けてえええ。
「御使いは一人ではない。国ごとに一人二人いるだろう」
スヴァが、面倒くさそうに補足説明してくれる。
「えっ!? ええー!!」
御使いさまって一つの国に一人じゃないの?
「であるな」
「なにそれ~!! 初耳なんですけど!?」
「であろうな。この国の平民なら知らぬが当然よ」
はあ。流石元魔王様、物知りだわ。
助かります。
「はっ!てことは、私、国を跨いで旅してまわらなきゃいけないってこと?!」
<うむ。天の溶光を集めるは、御使いに認められると同義、それによりお主は生きのびられる>
国守さまがアルカイックスマイルを浮かべる。
なに。その胡散臭い顔。まさにザ、御使いの笑みって感じ。牛の顔だけど。
「なるほどな。ただでは、生き延びさせんということか」
スヴァが一層いやそうな顔をする。
<それだけ、魂の補強は、困難だということじゃ>
「どういうこと?」
「御使いのいう天の溶光とやらは、その泉に辿り着くのにそれを管理する御使いの許可がいる。ただで許可がおりる筈もなし。まして、その天の溶光をもらうのもな」
<しかり、しかり。流石よのう。ホホホ>
国守さまがさも満足そうに頷いている。
「ええええええええ~!!」
なにそれ。なんかすげー大変そうなんすけど!
でもそれしないと私、後数年で死んじゃうでしょ?!
ハードモードすぎないっ!?
ティティの苦労は尽きない(笑)
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