第374話 ティティ、うらやむ
「ワイス」
相棒のピンチと見て取ったのか、精霊の仲間の亀さんこと、ワイスにノアは近寄ると抱き上げる。
ワイスも抵抗もせずに、すんなり抱き上げられて、ノアの胸に顔をうずめている。
元魔王さまの目が、余程怖かったらしい。
「スヴァ、あんまりいじめてやるなよ」
「そんなことはしない。ただ、席次を正しく教えただけである」
「それがこえーんだよ」
まったくこの元魔王さまは。いつも第一席だったから。遠慮がないんだから。
そして、ノアの相棒の亀は、ワイスって言うんだな。
覚えたぞ。
<さて、顔合わせも終わったから、説明を続けるぞえ>
「あ、お願いします」
すいません。つい話がそれてしまって。
<うむ。まずはお主の弟の状態からじゃ。お主の弟は精霊の祝福のせいで普通の人間よりも視える力、感知能力が強かったのじゃ。兄弟の中でも、特にお主になついていたのはそのせいもある。其方の中にある聖力に引かれてじゃろう」
「はあ。そうなんですね」
そうとしか言いようがない。
その頃はオリジナルのティティルナがノアと暮らしていたのだから、俯瞰的に理解するだけだ。
「その感知能力を聖素まで視えるようにした。妾の力だでな」
「えっ」
なにそれ。羨ましい。ねえね、それが視えなくてすっげえ困ってたからさ。
「お主の弟の場合、聖素の取り込みが減って困ることはないが、今はその小さき身体に取り込みすぎて負担がかかり、命を削る。その為、余分な聖素を排出して調整できるように訓練させた」
「うわあ! まじっすか!」
「うむ。必要な聖素だけ取り込み、聖力循環させられるまでになっておる」
それまんま、私がやりたいこと。いや、できてるんだけど、無意識だからね。それを意識的にやれるようにずっと頑張ってたのよ。私は。
「ってことは、今のノアはヒースやブリアよりも聖力循環においては優秀ってこと?」
いや、一概にそうとも言えないか。
ノアはきっと魔力は使えない。聖力の道だけが身体にあるのだろう。
ヒースやブリアは元々は魔力の通り道に聖力を通そうとしているのだから、困難さは上だろう。
はあ、でも年齢的に難しい事をやってるよなあ。ノアは、流石我が弟だ。優秀すぎる!
<クククッ。お主はほんに面白いのう>
あ、思考駄々洩れだから。笑われちゃった。
<そうは言っても先程も言った通り、まだ一人では難しい。だからこそ補助がいる。其方の弟の祝福は強いからの。これからも訓練は続けるように申しつけてある>
「うん! ノアがんばる!」
ノアが元気よく返事をする。
可愛い。
<その補佐がそこにいるワイスじゃ。ワイスが身体に余分に溜まりそうになる聖素を、お主の弟と息を合わせて排出する。それで身体の不調はなくなる筈じゃ>
「ではそれで身体の調子はよくなり、丈夫にもなりますか?」
<その筈じゃ>
「ありがとうございます!」
うわー。もうふいに倒れたりしなくなるんだな。
気兼ねなく跳んだり跳ねたりできるようになるってことだな。
「ノアよかったな」
「うん!」
はああああ。これで一安心だね!
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