第372話 ティティ、弟について聞く
<次は、お主の弟のことじゃな>
ティティはそこで背筋を伸ばし、ごくりと唾をのみこむ。
これはしっかり聞かないと。ノアが長生きできるかどうかだ。
国守さまに預けたのだ。大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。
<弟をほめてやるがよい。無事に試練を乗り超えられたぞよ>
「それってつまり」
<ああ、このまま10代を乗り越えられれば、生きながられるだろう>
「本当ですか?!」
<うむ>
国守さまの言葉を聞いて、横にいるノアを改めて見下ろすと、ぎゅっと抱きしめた。
「やったな! ノア! えらいぞ!」
「ん! ん!」
ノアは幸せそうに顔をほにゃりと緩ませた。
よかったなあ。
「こんな可愛いノアが早死にするなんて、あっていい訳ないもんな! うんうん! 本当よかったよ!」
ノアの様子を見ていて、大丈夫だと思ったけど、改めて言われて、安堵の波がどっと押し寄せた。
「お主、言葉が大分乱れておるぞ。地が出ておる」
「だってしょうがないだろう! 嬉しいと細かいところまで気がまわらねえよ!」
<ほほほ。よきかな。よきかな>
国守さまの満足そうな声が頭に響いた。
いけない。お礼をいわないと!
「すみません! つい嬉しくてお礼が遅れてしまいました! 国守さま! ノアをありがとうございました」
<よい。お主ともども、ノアにも今後色々願う事もあろう。憂いは絶っておかねばな>
あー。やっぱり、そういうこと?
ノアの体調が悪いと私を存分にこき使えないと。
ふ、望むところだ。
どちらにしろ。国守さまに願われれば、断らないんだから。
<ふふ。お主はお主のままよの。器が変わっても、性別が変わっても>
「あー、覗かれちゃいました? まあ、そうですね」
<よきよき。さて、もう少し弟の身体のことを、説明をしておくかの>
「あ、はい。お願いします」
<うむ。まずはお主の弟は単体では、身体の調整がきかぬ>
「うえ!?」
いきなりショッキングな内容だ。
<考えてもみるがよい。お主の弟はまだ幼い。ひな鳥のようなものだ。そんなひな鳥が自分で体内にある聖素をコントロールできると思うか?>
「無理っすね」
ティティでも無理だし。
それができていれば、聖素がわかり、ヒースやブリアにもっとわかりやすく聖力循環を教えられた筈である。
<しかり。その為、まずは補助するものを選んだ」
ノアの身体の中のエネルギー調整にはどうやら補助する者が必要らしい。
<そしてそのものと馴染ませた>
「馴染ませる?」
<混ぜあわせるということではないぞ? つまりは仲良くさせたのだ>
「な、なるほど」
混ぜ合わせるって、国守さま、たまに怖い事さらっと言うから。油断できない。
<ずっと行動を共にするようになるからな。相性がよくなければならぬ>
「そうっすね」
なるほど。私のスヴァみたいなものだろう。
「それで、そのノアの相棒っていうのはどこにいるのですか?」
それまでおとなしく黙って話を聞いていたノアが口をはさむ。
「えっとね。すこしおさんぽしてくるって。どこだろ?」
「おいおい。離れても大丈夫なのか?」
<少しの間であれば問題ない。それにここでは妾もいるしの>
「そうなんですね。安心しました」
しかし、あまりふらふらと歩かれると、こちらとしても気が気でない。
とはいえ、今までいなくても、なんとかなっていたから、国守さまのいう通り、べったりといなくても大丈夫なんだろう。
<ああ、どうやら来たようじゃの>
そういう国守さまが視線を向けた先に、つられたようにティティも目を向ける。
うん。ふらふらされても大丈夫だね。
先程の心配はまったく不要であると、ティティは頷いた。
注目をあびたそれ。
ティティも知っている。
それですかあ。
さて、ノアの相棒はなんでしょうか?
明日までおまちくださいませv




