第36話 雑貨屋はやはり楽しい
「こんにちはー! ステラさん! また買いに来ました!」
ティティは勢いのまま、雑貨店に入って行く。
「あら。いらっしゃい。今日は何をお求めかしら?」
「はい! 今日は歯ブラシと刺繍糸とハンカチかハンカチを作る布が欲しいです」
「はいはい。ではまず歯ブラシね。こっちよ」
そう言って連れて行かれたところの棚に歯ブラシがあった。
まず目に着いたのは、簡素なつくり安物歯ブラシ。これはお呼びではない。
「あった!」
そうお目当ての馬の毛の歯ブラシだ。
「馬の毛の歯ブラシいくらですか?」
「銀貨1枚と大銅貨5枚よ」
うーん。高い。長持ちはするけど、どうしようか。
歯ブラシを前に悩んでいると、ステラが棚から一本の歯ブラシを見せた。
「こちらはどうかしら? 大銅貨5枚よ」
「これは?」
ブラシの部分が、少し黄色がかった色をしている。
「ラモーネっていう魔物の毛を使ってるの。触ってみて。馬の毛と同じくらい柔らかで、今人気あるのよ」
「本当だ」
そう言われて触ってみると確かに柔らかくて、しなやかである。
うん。これ使ってみてもいいかも。
「ステラさん、これ2本ください!」
「はいはい。かしこまりました。それじゃ、次はハンカチと刺繍糸だったわね」
ステラはすぐに目的の棚へと連れて行ってくれる。
「綿のハンカチ、絹のハンカチ、後は魔物の糸を使ったハンカチとあるわ。ハンカチを作る布が欲しいなら、隣の棚ね。刺繍糸はこっちの棚にあるから、好きに見てね」
「わかりました」
ステラは店の奥のカウンターに戻っていく。
どうしようか。冒険者としての採集がメインだ。そちらの方がお金になるから。こちらは天気が悪い時とかの内職だから、最初からそれほど買う必要もないか。なら出来合いのハンカチを買おう。
棚の前でそう心に決める。
「うん、ハンカチは3枚づつ買おう」
お金も節約しないとね。
さて、次は刺繍糸だ。
ティティはいそいそと糸を選ぶ。
何色にするか。花系と動物系を刺繍するかで、色選びが分かれる。
この体になって運針はまだ心もとない。となると、まずは花系かな。
となると、緑と、茶色と、赤と、黄色、ピンクあたりか。
それでも色の濃淡もある。
ティティはウームと悩む。
<おい。あまり時間かけると日が暮れるぞ>
スヴァがあくびをしつつ、心話でせっつく。
「少しくらい悩ませてくれ。これは重要なセレクトなんだからな」
配色次第で結構値段が変わったりする。
<まあ、今日これから用事がないんだったら、構わないけどな>
「うん。今日は、これで宿に戻るつもりだから時間的には問題ないよ」
<ならいい。じっくり選べ>
「了解」
それからしばらく悩んで、ティティはいくつかの刺繍糸を選んだ。
その後店の中を色々見て回って、楽しんだティティは満足して店を後にした。
外に出ると、すでに日が傾いていた。
「ありゃ、もう少し早く宿に向かう予定だったんだが」
<あれだけ店内をうろついておいて、何をいうか>
スヴァがあきれたように、ティティを見上げた。
「ははは。ま、まあ。今日の予定は全部終了したから、よしだ。さあ、宿へ帰るぞ」
ティティはごまかすように笑うと歩き出した。
今日も一日楽しかったぜ。
本日は七夕ですねv
今日は3話投稿できたらなと思います。




