第362話 ティティ、諦めきれず、抵抗を試みる
皆様、お久しぶりでございます。
大変長らくお待たせいたしました!
覚えてくれてるといいな、そして読んでくれるともっといいなあと思ってます。
またしばらくの間、お付き合いよろいたしますいたします!
そして大分間が開いてしまいましたので、ここまでのあらすじを書きたいと思います。
ただ本当にざっくりなので、お話を思い出していただくのに、お役に立つのかってレベルです(汗)
読み飛ばしてもらっても、もちろん大丈夫です。
ではではどうぞ~。
親に捨てられたショックで、現世の人格と前世の17歳の少年、ジオルの人格と、スヴィッチしてしまった7歳の少女ティティルナ。更にその傍らにはジオルと死をともにした、魔王がちんまい黒い魔物姿で復活していた。戸惑いつつも、生き残るため、東の辺境領にて生活の基盤を整えるティティルナ。色々なハプニングに見舞われつつも、なんとか生活できるようになったティティルナだったが、そこで気になったのは、自分が死の介添えを頼んでしまった少年ライアンが、今どうしているのかだ。それを確かめる為、彼が住む魔王領に隣接する西の辺境領へとティティルナは旅立つ。
そしてやはり多少のハプニングに見舞われつつも、西の辺境領でライアン少年に再会。その彼は未だにジオルの死を引きずって罪悪感に苛まれたままだった。
その姿にやむを得ず、ティティルナがジオルの生まれ変わりであると明かす。
そのことによってライアン少年はなんとか立ち直り、ティティルナは安心して西の辺境領を旅立つのだった。
ただ、そこで思わぬ同行者がついてくることになり、ティティルナは頭を悩ませることになるのだった。
「短い滞在だったけど、濃かったなあ」
ぽくぽくと馬の背に揺られ、ティティは呟いた。
駆け足の滞在だったけれど、やるべきこと、成すべきことは終えた。
さあ、いざ新たな旅路へ赴かん。
ティティたちの門出を祝うように、空は真っ青で気持ちよい秋晴れである。
ただいま向かっているアーリデアルトの森での実りに期待ができそうだ。
ノアも首を長くして姉の到着を待っていることだろう。
新たな知己となった孤児院のおチビたち、ロルフ、そしてこの地の領主であるヘクタ様、また会える日を楽しみにしてます。
そう後顧の憂いは全くない。
旅立つにあたり懸念事項もない!晴れ晴れと出発できる筈だったのに。
「むう」
ティティはまだ納得していないのを示すように唇を尖らせた。
なぜだ、なぜこんなことになった。
この地、プルシコバ領に来たのは確かに彼、ライアン=マクドーニ少年の様子を見に来るのが、ティティの目的であった。
その目的も果たされ、やれやれこれで心置きなく、旅を満喫できるぞーと思っていた。
が、何を考えてか、このライアン少年、いや今はライアン青年になってるか、の強い希望により共に旅をすることになってしまった。
ライアンに旅の同行を希望された時、優秀な騎士であり、国の英雄であるライアンである、この地を離れるのに辺境伯が早々許可を出す訳がなかろうと高をくくっていたのに。
その予測は見事に外れ、スムーズに許可が下りてしまった。
公爵家の息子であり、英雄であり、行動の自由の権利が認められているのが大きい。
加え、魔王が討伐されて7年、魔物の動きも落ち着いており、危機的な状況でないのが一番の理由のようであった。
西の領主様が許可を出してしまったならば、仕方がないか。ライアン青年の同行については渋々了承していたところである。
しかし。しかーし。
まさかもう一人ついてくることになろうとは。
なぜに?!
おいおい、なぜおまえがついてくんだよ!と叫びたい。
その気持ちおわかりいただけるか。
「まーだ。ぶつくさ言ってんすか~。意外としつこいんだから~、ティティちゃんは~」
隣に並んで馬を歩かせている、この軽っ軽っな青年、そうブライト=スローターをティティは苦虫を嚙み潰したような顔で睨んだ。
「しつこくない! だって! なんで! ブライトがついてくんだよ!?」
思わず叫んだ私、悪くないだろう。
「ははあ。それは出発する前にじっくり話したでしょう? それで皆さんも納得した筈ですよ?」
「私は納得してないわ!」
「そこはね、大人の意見を取り入れて、多数決でね。アハハ」
「あははじゃないわ! おまっ。それで安定職業の騎士をやめていいのか?! よく考えろ! 今からでも遅くないぞ! まだ間に合う。ヘクタさまに謝って、復帰させてもらえ!」
思わず口調がジオル時代に戻ってしまったのは仕方ないだろう。
「だいじょうーぶ。よくよく考えての決断だから。騎士でやっていくのに、ちょっと行き詰りを感じてたんだよねえ。ほら、僕、商家の出でしょ? 今回の視察団でティティちゃん専属コーディネーターを務めさせてもらって、改めて商売はおもしろいって感じちゃったんですよ~。これは責任をとってもらわないとって思いまして」
誰が私専属のコーディネーターだ!
「責任って、ブライトさんをコーディネーターに据えたのはヘクタ様でしょ?! ヘクタ様が責任を取るべきでは?! それに商売したいっていうなら、実家ですればいいでしょ!?」
「兄貴の下でやるのはいやです!」
「あー」
そうね。お兄様とは張り合ってたもんね。
がしかし!
「だからって、なんで私について来るってなる!?」
「商売がおもしろいって再認識させられたのが、ティティちゃんが作り出す色々なものってのもありますが、なにより」
そこでブライトがぎゅっと拳を握る。
「これから先々でティティちゃんがぽろぽろ垂れ流す商品を、ティティちゃんとライアンさまに任せていたら、まだ見ぬ商売人が喜んでぼったくり、騙して、高笑いするのを想像すると許せないんです! 私が! そこをしっかりとぎゅっと阻止して、私が! いえ、ティティちゃんを儲けさせねばっと思った次第です!」
あーなんか最後に本音がちらっともれていたぞ。
だがここでそうですかとすんなり認めるのも悔しい。
「わ、私だって、今回ブライトさんのやりとりをみて、学んだから、早々には騙されないぞ」
多分ね。
「そりゃ、ティティちゃんは頭は悪くないですし、騙されないかもしれないですが、めんどくさと思ったら、損してもいいかって思ってしまうでしょ?」
ぐっ。見抜かれてる。
「えっと? そんなことないよ?」
じっとみつめるブライトの視線が痛い。
思わず目を逸らし、救いを求めるようにティティを乗せている青年を仰ぎ見る。
「それに、ほらライもいるしさ!」
ライ、ここでガツンと言ってやってくれ!
「いや、ティティさん、私を商いについては頼りにしないでほしい。学んでいくつもりではあるが、正直力不足である。ブライト殿がついてきてくれるなら心強い」
ああ、なんてことを! この正直者!
気ままな旅が、余計しにくくなるではないか!
<諦めろ。それにあ奴がついてくれば、宿の手配や通行料などその他もろもろ心得ているから、助かろうよ>
ティティの前にちょこりと座るスヴ心話を使って加勢してくる。
負けるか。
<私でもわかるもん!>
<7年前の知識だろうが>
<ぐっ。まあそうだけど! だけど!>
くそ! スヴァの裏切者め!
どこか、どこかに逃げ道はないか?!
身体を捻り、後方に馬を歩かせているヒースとブリアに救いを求める。
「ヒース! ブリア! なんとか言ってやって! ほら、同じ騎士として領主に忠誠を誓った騎士としてあるまじき行為だろう?」
頼む。今からでも遅くはないよ! 今からなら引き返せるさ! ブライトを説得してくれ!
その願いを目に込めて、2人を見つめる。
「先にも言ったが、ブライト殿が決めたこと、私にはとやかくいう事はできない。小さなレディに2人の騎士。よいのではないか?」
「ええ。ブライト殿が同行していただければ、すごい安心だわ」
「そうだな! 私たちがずっと小さなレディについていてあげることができぬからな!」
「ぐう」
くそっ。みんなしてなんだよ!
最後の望みをかけて、前方を行くルミエールに声をかける。
「ルミエール、やっぱ領主の息子としては、頼りになる騎士がやめるのは痛いよな?」
ルミエールはこちらをちらりと見て、口を開いた。
「世の中を学び途中の2人には、ブライト殿が必要でしょう。もう決まったことです。ぐずっているのは貴女だけですよ。いい加減諦めなさい」
なにそれ。わがまま言わないの。もう子供なんだからってなんで私が諫められてんの。
納得いかーん。そして何気にルミエール、ライを被保護者扱いしてるよ。
あー。もう。
要はもの知らずの2人で旅は不安だから、同行は決定事項。
変更は認めないらしい。
「私だって前世の記憶があるのにさ」
ぼそりと最後のあがきで言ってみる。
「それは7年前の記憶であり、ブランクがあります。それに今は7歳のそれも女の子です」
「ぐっ」
「それに、今後弟のノアを連れての旅になるのでしょう。しっかりした大人が居たほうが言いに決まっています」
「がはっ」
ダメ押しされたー。
しかしルミエール、世間に疎そうなライに任せるのはやっぱ不安だったか。
むーん。
はあ。仕方ないのか。
確かにノアもいるし。
安心を買うと思うしかないか。
でもなあ。ブライト、お金に厳しそうなんだよなあ。無駄遣いできなさそう。私には無駄遣いじゃないんだけど!
<いいのではないか? お主は無駄なものに拘る気質があるからな>
スヴァに言われたくないよ!
「わかりました。ブライト、楽しく! 旅をしましょうね」
たはあ。
旅の同行者が2人追加。
これ以上は認めないからね!
連載再開初話、少し長めになりました。
これからしばらくは毎日更新したいと思っております。
読んでもらえたら、うれしいです!
どうぞよろしくお願いいたします!




