第361話 ティティ、スムーズに出発する?
プルシコバ編最終回です。
ロルフへの最後のお別れもして。
ブライトを通して出来上がった玩具を、ロルフに渡すようにスローター商会に連絡もして。
弟のノアや国守さまへのお土産も買って。
私の用事は完了して出発を待つのみになった。
ほどなくして、ルミエールとこの領の魔法士たちのハッカサユリ草の研究も一段落して。
西の領地プルシコバの視察も無事終了。
ヘクタ様への挨拶も終えて、さあ出発というところで、その問題が発覚した。
「な、なんで、ブライトもついてくるの?!」
そうなぜか、ライアンに加え、ブライトも旅支度をして、ティティたちを待っていたのだ。
「それはですね。私もここで長年働いてきましたが、どうも生活に物足りなさを感じていたんですよ。パズール様のお手伝いをして、とても有意義に過ごさせていただいたのですが、それでもまだ足りない。そんな時に、ティティちゃん、貴女に会ったのです!」
ブライトはヒースのように大げさに、胸に手を当て訴える。
「物を作るアイデアをぼろぼろと出してくれるティティちゃん! 貴女についていけば、色々なアイデアをこれからも聞き、それを商品化できる機会がたくさんある筈です! やはり私は商人の血が流れているのです! かといって、兄の下では働きたくない。もっと自由にやりたいのです! だから、ヘクタ様に了承を得て、ティティちゃんについていくことに決めました!」
「決めましたって! いやいや、私は商品を湧き出す壺なんてもってないよ! 悪い事はいわない、ヘクタ様に言って、騎士としてまた雇ってもらいなよ!」
困るよ! こんな筈じゃなかったって、恨まれたらやだよ!
「大丈夫です! 私がティティちゃんのダダ洩れのアイデアをもらさずに、商品へと結びつけますから!それでなくても、貴女との旅は、色々と起こりそうで面白そうな予感がビンビンするんです!」
<当たらずとも遠からずだな。商人の勘か>
スヴァ! うるさいよ!
言われてみれば確かに、転生してから国守さまとのかかわりは深くなってるから、色々な体験しそうではあるけど。
いや! 今回だけだよ!
前世の時だって、そんなに国守さまと会えたりしなかったんだから!
<それでも、魔王討伐に参加したりと波乱に満ちた人生だったのではないか?>
スヴァ、もう黙って!
「ブライトさん! 騎士として安定した収入があるんですから、それを捨てるなんてもったいないですよ!」
ティティはなんとか説得を試みる。
大事なことだからもう一度言おう! 後で恨まれるのはいやだ!
「私は、安定よりも変化に富んだ生活を望みます!」
なにそれ。不安になる予言やめて。
「小さなレディ、よいのではないか? 私としてもブライト殿が同行してもらえるなら安心できる」
「そうね。きっと色々な手配など、問題なく行ってもらえるだろうから。格段に安全な旅になるわ」
なぜブリアとヒース、ブライトの味方する!
「私とライだって、ちゃんとできますよ!」
あ、やめて、そのなんともいえないような顔は。
「私もよいと思います。何より本人の希望です。こちらから押し付けた訳ではないのですから、こんな筈ではなかったと思っても、それは本人の自業自得なのですから。精々活用しておやりなさい」
「ルミエール様まで!」
これじゃ認めない訳には行かないじゃないか。
「ライは、ブライトさんが付いて来てもいいの?!」
一縷の望みをかけて、ライアンに振ってみる。
いやだというんだ! 英雄様のNOなら、ブライトも諦めるだろう!
「ティティさんが許すなら、私は構わない」
今までの話聞いてた!?
私、頑張ってNOと言ってたよね!?
通じてないんかい!
はあ。もういいよ。四面楚歌じゃ認めるしかない。
「わかりました。ついてきてもいいです」
「ありがとう。存分に役になってみせるよ」
ブライトはほくほく顔である。
しっかり、馬の用意を済ませてるから、だめでもついて来る気満々だったね。
ライアンに、ブライト。なぜか旅の同行者が2人増えた。
テルミニーネを加えたら2人と1匹か。
アーリデアルトの森で東の辺境チームとはお別れだから、ノアと2人、それにスヴァとテルミニーネと、身軽な旅になるだろうと密かに楽しみにしていたのに。
新たに2人が加わったことで、ちっとも変わらない気がしてきた。
どうしてこうなった。
見上げた先の空はどこまでも青い。
私の気楽な旅はいづこに!
くう!
皆さま、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
ティティルナの旅はまだ続きます。
少しお時間いただき、次章、頑張って練り上げます。
その時には、またお読みいただけると嬉しいです(*^^*)
そして誤字報告ありがとうございます。
助かりました!
ではではできるだけ早く戻って来たいと思います!




