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第360話 ティティ、ロルフに別れを告げる

 ティティはロルフと連れ立って、受付カウンターに近づく。

「いらっしゃいませ! 何か御用ですか?」

 ピンク色の髪の可愛い系のおねえさん、パムさん、今日は依頼受付のカウンター担当なんだね。

 うん。営業スマイルでも癒されるね。

「はい!私、近いうちに別の街へと移ろうと思うのですが、やり残したことがありまして、私の代わりにそれをやってもらおうと、同僚の冒険者を連れて来たんです。できれば指名依頼をしたいんですが、できますか?」

「そちらの方にですね! ランクはEランク以上でしょうか?」

 パムさん、できるね。年齢や見かけで判断せずに、ちゃんと尋ねてくれる。

「いえ。まだ冒険者になったばかりなので、Fランクです」

 ロルフが正直に答える。

「Fランクですか?」

 お姉さんが少し眉を寄せる。

「やっぱり、Fランクだと指名依頼はできませんか? なら、指名依頼ではなくて、依頼を率先してこのロルフに斡旋してもらえればと思います」

「いえ! 依頼内容を吟味して、ロルフさんに見合う依頼なら指名依頼可能です」

 パムさんが、表情を戻し、明るく教えてくれる。

「そうなんですか?」

「ええ、近頃規則に注釈で、内容によってはFランクの方でも指名できると加わりまして」

「そうなんですね。助かります」

 うーん。冒険者ギルド柔軟になったな。それとも上からの圧力か。

 ま、深くは突っ込むまい。

「でも、指名依頼をかけると、ティティさんの金銭の負担は増えますが、よろしいのでしょうか?」

「かまいません。その分ロルフはしっかりとやってくれるだろうと思うので」

 ちらりと彼に視線をむけると、頷いてくれる。

「ならば、大丈夫ですね! あ、内容によってはダメな場合もありますよ?」

「わかってます」

「では、依頼内容をお知らせください!」

「はい」

 そう元気よく返事をすると、依頼内容を切り出した。

 依頼は大きく2つ。

 1つはスローター商会に頼んである玩具を5日後に引き取りに行き、それをコンブレハム孤児院に届けること。

 2つ目は、その玩具で子供たちが遊んでいるところを1日見学し、その様子を手紙に(したた)め、冒険者ギルドに私宛に預けること。である。

「はい。この内容なら、ロルフ様に依頼して問題ないですね。ロルフ様、この指名依頼受けますか?」

「はい」

「よかった。ありがとう、ロルフ。これで安心してこの街を旅立てるよ」

「いや、こちらこそ指名依頼してくれて助かる。評価が上がるからな」

 そうなのだ。冒険者ギルドを通すことで、ロルフの評価もあがるし、私も信頼できる子に孤児院でのおチビたちの様子も知れて大助かりなのだ。ウインウインである。

 パムお姉さんが書類を作ってる間に、鞄から紙とペンを取り出して、ロルフに差し出す。

「手紙を書く時に、これを使ってくれ。余ったら、好きに使っていい」

「いいのか?」

「ああ、それと、もし私に連絡とりたくなったら、それを使って手紙をくれ。冒険者ギルドでも商業ギルドでも、両方に登録してるから、どちらのギルドに頼んでも私のところに届けてくれる」

 助けが必要になったらなんて、やぼなことは言わない。

 でもさ、1人で立ってるのは辛い時もあるからね。そんな時に、ふと逃げ場があると心が楽だから。

 チビな私でも、それくらいの支えはできる。

 そんな思いを込めて、まっすぐにロルフを見つめる。

「がんばれ」

「ああ」

 その後、パムお姉さんに手続きをしてもらい、ロルフと別れた。

「またね!」

「ああ、また」

 そう、別れは軽いほうがいいよね!

 さあ、これでこの街でやることは終わった!




次でプルシコバ編最終話になります。

長いお話にお付き合い、本当にありがとうございます。

もう少しお付き合いくださいませ。

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