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第352話 ティティ、譲れないところは主張する

 ティティは自分の考えに没頭する。

 そうだ!

「私としては遊びの中で、文字を自然と覚えて欲しいので、カケラ合わせを完成させると、1つの文章が出来上がるようにしたら、余計楽しいかもしれません。やり方ですが、例えば、カケラの1つ1つの端に1文字ずつ文字をいれて、絵が完成すると一つの文章が出来上がるとか。うーん。1つだけじゃつまらないので、シークレットな文章がもう一つ出てくるようにしたいですね。どうしたらいいか」

 いかにおチビたちに、遊びを通して自然に文字を覚えてもらうか。

 悩みどころだ。

 ん? なんか私ばかり話してる?

 やけに静かだ。考えに集中しすぎた? 皆呆れたか?

 それとも今ひらめいたままに、呟いたものがNGだったか?

 みんなどう思ってるんだろうと、下げていた目線をあげると、スローター兄弟のぎらぎらした目がティティを凝視していた。

「ひい!」

 思わず、口から悲鳴がもれた。

「な、なんですか?! 何かまずかったです?」

「とんでもない! 素晴らしい!」

「ティティちゃん、君は天才か?!」

 スローター兄弟が一斉に話始める。

「カケラの中に問いを隠す! 1つの玩具で、多方面な遊び、いえ、学びができる! 素晴らしい! 素晴らしすぎます!」

 ブライト兄よ! 立ち上がらんでいいから! 落ち着いてくれ!

「それに加え! ターゲットごとに絵の方向性を考えて変える! そうですね! 平民の子供や商人の子供、貴族のお子様ではまったく好みが異なるでしょう!」

 ブライトも腕をそんなにふらなくていいからっ!

「富裕層の平民、商人、貴族にターゲットを絞った方がよいかもしれません!」

「兄さん、そうですね! 単価は安くないですから」

 あ! この兄弟、なんてことを言ってくれちゃってるかな!

 ブライト! ちょっと前に私に言ったことと違うじゃないか!

 私は平民の子供、特に学べない子供たちにこそ、これらの玩具を回したいの!

 そして識字率を上げるのだ。

 そうすれば、少しでも貧乏から脱出できる率があがる筈で。

「困ります! 私としては平民、それもできれば貧困層に、これで遊んでもらいたいんです!」

「ですが、果たして子供にこれらを買う余裕のある平民がどれだけいるか」

「そこを何とか平民には低コストで提供できるようにしてほしいです! 低コストのものは私が最初につくった色付きじゃないものでいいと思いますからっ」

「しかし」

 ブライト兄が渋い顔をする。

 そりゃ、儲けが多い方に力入れたいよね。でもそこは譲れないよ。

「富裕層向けのもので儲けを出して、平民向けのものをカバーしてください。私は子供に生きていく為の手段を一つでも多く持ってもらいたいんです! これらの玩具を通して!」

 はあはあ。喉乾いた。思わず力説しちゃったよ。

 少し冷めた紅茶を一気に飲む。

「どうでしょうか?」

「ティティ様の崇高な考え、わたくしとても感動いたしました!」

 ふるふると震えたブライト兄が、ずいっと身を乗り出してくる。

「わかりました! わたくしティティ様の考えに沿えるように力をつくしましょう! しかし本当に素晴らしい! 冒険者などやめて、うちで商人として働きませんか!?」

 ブライト兄にずずずいっと迫られて、思わず顔を引く。

「いや! たまたま思いついただけで。もう打ち止めですから」

 やめて、ライアンまで顔を輝かせないで。

「ティティさんは、それほどまでに平民を救いたいのだな」

 おっ! ライアンわかってくれる? そう、私はそこが一番重要なのよ。

「そう。私の希望はそこです。これらの玩具を通して、識字率が少しでも上がるきっかけになればと思います」

 最初は小さな単語だけだけど、それがいくつも覚えれば、やがて文章も読めるようになる。

「私はお腹を空かせた子供が一人でも減ればと思います」

 ひもじいのはすごいつらい。

「私の取り分を少なくしてもかまいませんから、私の意向が反映されるようにお願いします」

 取り分要らないってのはなしって身に染みてるからね。

 自分の言い分を通す為に、減らすのはいいだろう。

「わかりました。ティティちゃんの気持ちをできるだけ尊重できるように兄と決めるよ。さっきはつい興奮して、利益中心で考えてしまったよ。ごめんね。」

「ううん。大丈夫。ブライトありがとう」

 ブライトも商人の息子だもんね。仕方ないよ。

「ええ、わたくしどもも末永くティティ様と縁を結びたいので、お気持ちに沿うように致します」

 ブライト兄よ。うんうん、よろしくね。

「あ、後、お願いがあるですが」

「なんでしょうか?」

「平民向けの新しいカケラあわせが完成したら、5つ、コンブレハム孤児院にプレゼントして欲しいです」

「ああ、最初のものもコンブレハム孤児院にプレゼントされてましたね」

「はい。縁あって、交流ができたので。あそこの子供たちの癒しになればと。費用は私が出しますから」

「いいえ。費用は結構です。これは売れます。これの取り扱いを独占できるだけで、わたくしどもとしては儲けがありますから」

「そうですか? それではお言葉に甘えて」

 ブライト兄よ。頼むぞ。前との違いがどのくらいあるのかなあ。

 楽しみだねえ。この街を発つ前に出来上がるかしら?

 難しいだろうなあ。



いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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