第350話 ティティ、プロの仕事を見た
そんなやり取りをしている間に、冒険者ギルドに到着した。
例のごとく、冒険者ギルドの少し手前で馬車を降りる。
今日は前日の気付きに従い、私もローブを着ている。
ローブの下は商家のお嬢様風の服装だ。
この後、スローター商会に行くからね。
着替えなくていいようにとっぷりしたローブで服を隠してるよっ。
うーん。なんですぐ思いつかなかったのか。
ま、気づいたからよしとしよう。
ティティは気を取り直して、ライアンとブライトを引き連れて冒険者ギルドに向かった。
扉を開けたティティは、ざっと中に目を走らせる。
「やっぱ、いないかあ」
会えるのを期待して、少し早い時間に来たんだけど。
もし会えれば、手間が省けると思ったけど、そううまくいかないか。
ロルフに頼みたいことがあるんだよなあ。
「どうかした?」
ブライトがティティの様子を見て尋ねる。
「いえ。大丈夫です」
今日は無理そうだから、ノアや国守さまへのお土産買う時に、ロルフを探せばいいや。
視察も終わってるみたいだし、私の自由時間たくさんある筈っ。
「まずはライの登録をすませてしまいましょう」
そう言いつつ、ティティはライアンを連れて、受付カウンターに向かう。
ブライトは入り口入ってすぐの壁際に待機だ。
ぞろぞろ行っても邪魔だからね。
「こんにちは! お姉さん!」
ピンク色のショートヘアが似合ってますね。
可愛いは癒しである。
「いらっしゃいませ、私はパムと申します。よろしくお願いしますね」
おっ。先に自己紹介してくれた。ふふ。いいね!お姉さん!グッドだよ!
「私は、ティティと言います。こちらこそよろしくお願いします!今日は連れの新規の登録に来ました!」
端的にはきはきと要件を告げる。これ大事。
「かしこまりました。後ろにいらっしゃる方ですか?」
「はい」
そう返事をして、ティティは横に少しずれる。
それに合わせてライアンが前へと一歩出る。
「ライ、ただのライで登録頼む」
「は、はい。ライ様ですね」
ローブから覗く、端正な顔のライに少しポッとなっているパムお姉さん。
わかるよ! その気持ち!
ライかっこいいもんなー。
悔しくなんかないよっ。
しかし、ライ。自己紹介がおかしいよ。
ただのって修飾語はいらないでしょ?
よっぽど気に入ったのか?
ただのライ。
ライアンが登録している間、別件を済ませてしまおうと、隣の窓口にいるお兄さんに声をかける。
「あの、今よろしいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
うん。美人さんじゃないけど、柔和で優しそうな感じのお兄さんだ。
いいねっ。
「初めまして! 私はティティルナっていいます!ティティって呼んでください!」
今度は先手で自己紹介っと。そしてにこっと全開の笑顔を振りまく。
何度も言うけど、好印象を持ってもらうのは大事だからねっ。
「ご丁寧に自己紹介ありがとうございます。私はトムスと言います。御用をお伺いします」
「はい。先日受けた依頼達成の報告をしたいんですけど」
そう言いつつ、依頼報告書を2枚差し出す。
「かしこまりました。少しお待ちください」
お兄さんは書類をざっと見て、頷く。
領主やお貴族ルミエールからの指名依頼を、私みたいなおチビが受けてたのに、お兄さん眉一つ動かさない。
自然体なままだ。お兄さん、プロだね。
「はい。間違いありませんね。報酬はどうしますか? 現金で持ち帰りますか?」
「いえ、口座にお願いします」
だって大金だもんよ。ここは口座に入れてもらうよ。
「それではカードをお願いします」
その言葉にティティが冒険者ギルドカードを渡す。
お兄さん、スムーズだねっ。
仕事できるねっ。
それだけで惚れちゃいそうだよ。
そこで横から声がかかった。
「ティティさん」
その声に見上げると、ライアンがこちらを見降ろしていた。
「終わった?」
「はい」
返事とともに、ライアンが銅色の冒険者ギルドカードをかかげてみせる。
「私も用事すんだよ。じゃ、次に行こうか」
「ええ」
よし。次はブライトんちの商会だ!
面倒ごとはちゃっちゃとすませよう。
350話まで来ました!
区切りのお話は何気ないお話の回になりました(笑)
そしてそして、皆さまここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
皆さまがお読みいただいてるとPVを見て、実感して、励みになっております。
どうかこれからもお付き合いいただければ、嬉しいです!




